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2022年8月5日更新

[沖縄]本当はこわい夏型結露②―事例と対策(設計・施工などの注意点編)

高温多湿な外気とクーラーで冷えた部屋の空気など、温度差と湿気によって発生する夏型結露やカビ。前回に続いて県内で被害事例などを調査している建築士の下地洋平さんと松田まり子さんに話を聞きながら、被害事例や設計・施工時における注意点を紹介する。

 本当はこわい夏型結露②―事例と対策(設計・施工などの注意点編) 

工期にゆとりで材料乾かす

原因不明ならカビ再発も

前回、クーラーで冷えた面に暑く湿った空気が当たることで結露が発生し、カビにつながることなどを紹介した。だが、「他にも多様な原因が考えられる」と下地さんは話す。

例えば事例1では、給気口の隙間から壁の中に外気が浸入。給気口周りの石こうボードにはカビが発生していたほか、水分を含んで、手ではがせるくらい軟化していた。

そこで給気口部分の隙間をふさぎ解決を図った。現在は経過観察中だという。「説明書通りに施工しても、発生するケースがある。業界全体で調査・研究が必要」と下地さん。

事例2では、外壁を通り抜けてきた水蒸気が、壁内の防湿フィルムで結露。さらに、そこからもれた外気が、湿気を通しにくい壁紙の裏側で結露し、カビが発生していた。

下地さんは防湿フィルムを撤去。壁紙は湿気を通しやすいものに交換した。「室内環境の調整は必要になるが、壁内に水蒸気をとどまらせないことで、壁内での結露発生を抑えられるはず」と、経過を見ている。「暮らし方にもよるが、県外向けの壁構成や結露対策を沖縄でそのまま採用した場合、同じような被害が出る可能性がある」と話す。

また、「原因が解決しない限り、壁紙などを張り替えても、結露やカビが再発することがある。そこが結露やカビのこわいところ」と加える。実際、壁紙を張り替えた10カ月後にカビが再発生したケースもあるという。

○事例1
手ではがせるほど軟化した石こうボードと壁紙


給気口付近の石こうボードは軟化していたが、離れた場所は軟化していなかった
 
給気口を取り外した様子。コンクリートと石こうボードの間にある隙間に外気が入り込んだと推測される
 
隙間をコーキングでふさぎ、壁内に外気が入らないようにした

○事例2
壁紙をめくった様子。壁紙の裏面や下地材にもカビが生えていた
 
下地材をはがした様子。防湿フィルムの中(室外側)が結露していることから、室外からの水蒸気が壁内でとどまったと推測される


解決策は家それぞれ

「結露やカビを防ぐためのポイント・注意点は大きく三つに分けられる」と下地さん。

一つ目は、設計によるもので、例えば、建材の選び方や、壁や床の構成の仕方、間取りなどだ。松田さんは「施主にエアコンの使い方などを詳しくヒアリングしたり、丁寧な土地の調査なども大事。その結果が結露しにくい設計の糸口になることもある」と話す。

次に、施工によるもの。雨が降った後にコンクリートや木材を乾かすなど、建材が水分を含まないようにするのがポイントだ。「施工計画に乾燥期間を設けるなど、工期にゆとりを持たせることで被害が発生しにくくなるはず。その考え方を、設計者、施工者、施主が共通認識として持っておくことが必要」と下地さん。

最後は暮らし方によるもの。クーラーの使い方に気を配るほか、フィルター類の掃除なども欠かせないという。

ただし、立地や構造、暮らし方など、建物の状況は千差万別。下地さんと松田さんは「結露やカビはいくつもの要因が重なって発生するため、ある事例での解決策が、別の事例だと効果がないこともある」と注意を促す。

一方で「症状が表面まで出ていなければ、そこまで心配しなくても大丈夫。でも、定期的なメンテナンスや、天井裏・床下などのチェックはするように」と呼び掛けた。


教えてくれた人
下地洋平さん(株式会社クロトン)  松田まり子さん(松田まり子建築設計事務所)
下地洋平さん(株式会社クロトン) 松田まり子さん(松田まり子建築設計事務所)



結露やカビを防ぐためのポイント・注意点


設計によるもの

材料の選び方と使い方
・「湿気の通しやすさ(透湿性)」「吸湿性・放湿性(吸放湿 性)」も考慮して選ぶ。それらに応じて使いどころを変えた り、天井、壁、床などの内部構成を考える。

設備の設け方
・換気扇を設け過ぎない。空気を外に排出した分、窓、天井 裏、壁の中、床下などから、高温多湿な空気を引っ張ってきてしまう
・ペアガラスにしたり庇を設けるなど、窓からの日射しや熱 を遮ることで、エアコンの設定温度を下げ過ぎなくて済む

部屋の配置計画
・押し入れなどの閉じている部分や、浴室などの水回りは西側に配置。西日で暑くなるため、乾燥させやすい。
・押し入れの奥などではなく、出入りがラクな場所に点検口を設け、天井裏や床下などをチェックしやすくする
・凹凸を少なくし、空気だまりをつくらない
・室内の温度や湿度によっては、高窓から外気が入ってくることもある

事前調査
・設計者は住まい方などを詳しくヒアリング。施主もしっかり伝える
・霧が発生しやすい、水がたまりやすいなど、土地や環境を調べ、その場所に合わせた設計にする


施工によるもの

材料が含む水分
・防腐処理された木材など、建材が乾ききらないうちに現場に届くことがあ るので、しっかり乾燥させてから使う。塗料や接着剤なども含め、乾ききらないまま床を張ったりすると、水分を閉じ込めてしまうことになる
・コンクリートは、セメントに混ぜる水の割合を少なくする
・工事中に雨が降ったら、ヒーターなどでコンクリートや木材などを乾かす

施工計画
・梅雨や台風、急な雨なども考慮し、着工時期をずらしたり、工期の設定に余裕を持たせる。場合によっては延長も

施工方法
・吸気口やエアコンの配管など壁を貫通している部分は、外気が壁の中などに入らないよう注意する


施主の暮らし方によるもの

設備の使い方・メンテナンス
・クーラーの設定温度を下げ過ぎない
・吸気口のフィルターを掃除する。詰まっていると、吸気口からではなく、天井裏など別の場所から空気を引っ張ってきてしまう
・エアコンのフィルターを掃除する。詰まっていると、エアコン内だけが極端に冷え、結露してしまう
・家の周りの植栽をせんていする。草刈りをしたり生垣の下枝を整えることで、風通しがよくなり、湿気も抜けやすくなる
 

夏型結露の事例を募集

沖縄における夏型結露やカビの解決策や予防策を探るため、下地さんは事例を集めている。問い合わせは(株)クロトン・下地洋平まで(電話=098・877・9610、メール=croton@croton.jp)。


関連記事:本当はこわい夏型結露①ー特徴と対策(暮らしの知恵編)

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1909号・2022年8月5日紙面から掲載

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この記事のキュレーター

スタッフ
出嶋佳祐

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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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