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2022年7月22日更新
[沖縄]本当はこわい夏型結露①―特徴と対策(暮らしの知恵編)
高温多湿な沖縄では、夏場でも結露(夏型結露)やカビが発生しやすい。そこで夏型結露の特徴や対策を2回に分けて紹介する。今回は暮らしの中でできる対策・知恵。県内で被害事例などを調査している建築士の下地洋平さんと松田まり子さんは「温度差と湿気を抑えれば、結露やカビを抑えられる」と話す。
本当はこわい夏型結露—―特徴と対策(暮らしの知恵編)
温度差と湿気で夏にも結露
空気中の水蒸気が水に
結露とは、温度差と空気中の水蒸気によって起こる現象のこと。湿った空気が冷えることで、その空気中の水蒸気が凝縮し、水になるという仕組みだ。温度差が大きいほど結露しやすくなる。冷たい飲み物をグラスに入れると、表面に水滴がつくことを思い浮かべるとイメージしやすい。
建物の場合、結露は冬の印象を持つ人が多いかもしれない。だが、下地さんと松田さんは「夏に起こる夏型結露もあり、高温多湿の沖縄では県外に比べて発生しやすい」と話す。
クーラーが要因の一つ
夏型結露は一般的に、天井裏や壁の中の通気層、床下などの見えない部分で発生するとされる。要因はさまざまだが、クーラーがその一つ。例えば天井裏なら、①部屋と周囲の空間との間に温度差ができる②天井裏の暖かく湿った空気が、冷えた天井に裏側から触れる③天井裏に結露が起こる。
しかし、沖縄では「見える部分でも結露する」と下地さん。「クーラー使用時に窓を開けると、高温多湿な空気が入り、冷えた壁や天井などの表面でも結露が起こる。そのため、見える部分も見えない部分も、クーラーの風が当たる場所での発生事例が多い」と説明する。
ほかにも「雨や曇りの日が続いた後、冷気を蓄えたコンクリートに暖かい外気が触れて結露」「1階はクーラーを使用、2階は窓を開けた状態で、2階の床に結露」「共同住宅で、自分の部屋は窓を開け、隣の住人がクーラーを使っている時に、自分の部屋の壁に結露」などのケースもある。
カビやシロアリにつながる
結露が続くと「カビや、木材を腐らせる腐朽菌の発生、シロアリを呼ぶことなどにもつながる」と下地さん。松田さんは「海に囲まれた沖縄では、空気が塩分を含んでいることもあるため、結露の水と一緒にコンクリートに入り込み、中の鉄筋をさびさせる可能性もある」と加える。
また、結露しなくても、温度と湿度が高い状態で、ほこりやゴミ、酸素などが組み合わされば、カビが発生しやすい状況になるという。
クーラーによる結露の仕組み(天井の場合)
クーラーの冷気は部屋の空気だけでなく天井材そのものも冷やす。しかしその裏側の空気は暖かく湿ったまま。そのため天井裏の空気が天井材に触れると、空気が急激に冷やされ、含んでいた水分は凝縮し結露する。窓からの空気も室内に入った直後は暖かい状態なので、天井材との間に温度差ができ結露する。
特にクーラーの風が当たる部分は、より冷たくなるため温度差も大きく、結露が起きやすい。
夏型結露による被害の例
スイッチカバーの裏側に起こった結露。
金属製で温度が伝わりやすい分、結露しやすい
室内側の天井や壁にもうっすらとカビが生えている
クーラーの風が当たる天井の裏側に発生したカビ
教えてくれた人
下地洋平さん(株式会社クロトン) 松田まり子さん(松田まり子建築設計事務所)
暮らしの知恵で結露やカビを防ぐ
間違った湿気対策さまざまな影響をもたらす結露だが、「温度差と湿気を抑えれば、結露やカビの発生も抑えられる」と松田さん。一方で、「よかれと思ってやっている湿気対策が、実は間違っていることもある」と話す。
例えばお風呂に入った後、浴室の扉を開け放しておくのはNG。浴室を早く乾かせるので良いと思われがちだが、「水蒸気をたっぷり含んだ湯気が室内に広がり、クーラーで冷えた壁などにぶつかると結露してしまう」
実際、浴室前の廊下で計測したところ、入浴前後で温度は変わらないが湿度は高くなっていたという。「温度と違って湿度は体で感じにくいもの。入浴後は浴室の扉を閉め、換気扇や窓から湯気を排出するなど、浴室の湿気は浴室で完結させて」
扇風機使い温度差小さく
コロナ禍のため、クーラーをつけながら、換気のために窓を開けている人も多い。しかしこれが、結露やカビの一因になっている可能性もある。「その場合、クーラーと扇風機の併用がおすすめ。クーラーの設定温度をあまり下げなくて済むので外気との温度差を小さくできる上、空気をかき混ぜることでカビなども軽減させられる」と説明する。
そのほか、カラッと晴れた日にカーテンを干したり、クローゼットの戸を開け放すなど対策方法はさまざま。松田さんは「ポイントは極端に冷えた空間をつくらないことと、湿気をためないこと。自分のライフスタイルに合う形で対策を」と呼び掛けた。
入浴後、浴室の戸を閉める
入浴後に浴室の扉を開けておくと、暖かくて湿った空気が家中に広がる。クーラーで壁や天井などが冷えていると結露してしまうので、浴室の扉は閉め、換気扇や浴室の窓から湿った空気を外に出す。
また、空気は湿度の高いところから低いところへ移動する。扉の隙間から家の中へ広がらないよう、浴室の換気扇は入浴中からつけておく。
クーラーと扇風機を併用する
扇風機の風が当たると体感温度が下がるため、クーラーの設定温度を下げ過ぎないで済む。
扇風機や天井ファンで空気をかき混ぜると、水蒸気も拡散されるため、高湿度であってもカビなどを軽減させる効果がある。使うエネルギーも抑えられる。
室外と室内の温度が近くなってから換気
朝までエアコンを使っている場合、朝起きてエアコンを消し、すぐに窓を開けて換気するのはNG。外の気温と部屋の気温が近くなってから窓を開ける。雨の日に窓を開け放すのも、大量の湿気が室内に入ってくるのでよくない。開ける場合は扇風機を使って空気をかき混ぜる。
家具やカーテンを干す
ソファや布団、カーテンといったファブリック製品は、湿気を吸い込んでくれる。しかし、放出が難しいため、カラッと晴れた日に外に干す。珪藻(けいそう)土や炭など吸湿性のある建材なども、可能なら干してたまった水分を放出させる。
エアコンの設定温度は露点温度を目安に
現在の空気が何度になれば結露するのかを示すのが露点温度。スマートフォンのアプリやインターネットで確認できるので、エアコンの設定温度を露点温度以下にはしないなどの目安にする。
晴れた日に食器棚の扉を全開
クローゼットや押し入れ、キッチンのシンク下、食器棚などは空気が滞留しやすい。空気の滞留はカビの原因にもなるので、カラッと晴れた日に、窓とともにそれらの扉を開ける。
料理中は換気扇を回す
煮物など水蒸気がたくさん出る料理を作るときは、換気扇を回す。効率良く排出するためにも、フィルターの掃除も忘れずに。
その他
・風の通り道を遮らないよう家具を配置し、 空気が滞留しにくくする。
・雨の日など室内干しをする際は、除湿器 や扇風機を使いながら狭い空間で乾かす。
・吸い込んだ水分の量が目に見えるなど、 交換時期が分かる除湿剤を使う。
関連記事:本当はこわい夏型結露②―事例と対策(設計・施工などの注意点編)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1907号・2022年7月22日紙面から掲載
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この記事のキュレーター
- スタッフ
- 出嶋佳祐
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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。