沖縄建築賞
2021年10月29日更新
【第7回沖縄建築賞】奨励賞 一般建築部門/「アトリエm」(那覇市)/亀崎義仁氏(42)/カメアトリエ
沖縄県内の優秀な建築物・建築士を表彰する「沖縄建築賞」(主催/同実行委員会)。全16作品(住宅部門9件、一般部門7件)の中から、第7回の入賞作品が決定した。奨励賞には一般建築部門で、亀崎義仁氏設計の「アトリエm」(那覇市)が選ばれた。
アトリエmは、コンクリートブロックの躯体と檜の屋根(トラス)からなる「トラストブロック造」
奨励賞 一般建築部門
「アトリエm」(那覇市)
CBの箱に檜の屋根「トラストブロック」
良質な建築 効率的に
「トラストブロック」とは、カメアトリエの亀崎義仁さんが考案したセミオーダー建築商品だ。檜のトラス(部材を三角形につなぎ合わせた構造形式)の屋根を、防水コンクリートブロック(CB)の躯体に乗せているのが特徴。「アトリエm」はその3棟目。子ども向けの造形教室と、夫妻のアトリエとして建築された。
トラスもCBも工場で成形したものを現場に持ち込むため、工期が短く廃材も少ない。「職人不足や資材高騰をにらみ、効率よく建築を成立させることをしっかり考えている」と評された。
檜は、耐久性に優れた奈良県吉野地方の高品質材を使っている。審査員は「吉野地方の林業や木材産業は、材料の素晴らしさに比べて需要が減ってきている。木材の少ない沖縄と吉野の事情を合体した画期的な建築システム」と高く評価された。
組み立て加工までされた檜のトラスを、現場で施工。「内装大工でも2~3時間で施工できる」
木屋根が印象的な「アトリエm」の室内。完成から5年たっているが、まだ木の香りがする
設計者/亀崎義仁氏(42)
カメアトリエ
アトリエmは美術による豊かな学びを、カメアトリエは良質な建築を合理的に生産するシステムを、それぞれ社会へ提供したい!と展開。アトリエmが完成して5年、止まり木のような場所として親しまれています。
審査講評・細矢仁氏 奨励賞
新たな建築生産の手法
「アトリエm」は設計者が開発した「トラストブロック」というシステム住宅建築をアトリエとして成立させたもので、基本構成は補強コンクリートブロック造を下部構造とし、吉野檜のプレハブトラス架構を現場で上に乗せる、というもの。
昨今の職人不足や建築資材の高騰といった背景がこのシステム開発の背景にあるのは明らかで、その地で手に入りやすい普及品をベースに、プレハブ化した木トラスをセットするアイデアは、沖縄のみならず条件がフィットする地域で普遍的に応用できる懐の深さを備えていると思われた。その懐の深さは恐らく家づくりに悩むクライアントの役に立つだけでなく、伝統や地場産業を保護するスキームを成立させながら建築生産の新しい方向性を照らし出している。(第6回沖縄建築賞 一般部門正賞受賞者)
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1869号・2021年10月29日紙面から掲載