特集・企画
2021年9月24日更新
[沖縄]特集・不動産の日①|リノベで収益化|素朴な日常を店舗に
秋は不動産取引が活発になることや、二十三の語呂合わせから、9月23日は「不動産の日」。今号では休眠不動産(空き家)をリノベーションして収益化につなげた事例などを紹介する。
※9月23日は全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)が制定した不動産の日。不動産活用・取引をテーマに特集を展開します。
素朴な日常を店舗に
子が巣立った実家 家庭的な飲食店に kitchen KENOHI(那覇市)クロトン設計リノベ前。広々としたリビング・ダイニング。正面奥の窓に面してキッチンがある
リノベ後。「kitchen KENOHI」の店内。床や、左手のサッシなどは改装前のものを生かした。日常を表す「ケの日」を由来とした店名の通り、アットホームなたたずまいで飾らない食事を提供する(今はテイクアウトのみ)
空き室の掃除が大変
那覇市首里石嶺町の住宅街にある湖城さん宅。そこに併設する形で、嫁の紀子さんが営む「kitchen KENOHI」もある。湖城さん宅の一部を改装し、飲食店としてコンバージョン(既存建物を用途変更し、再利用すること)したものだ。
40年前、平屋を購入した湖城さん。家族構成の変化などで、隣に2階建てを建てるなど増改築を繰り返してきた。
しかし、子どもたちが独立すると空き室ができ、平屋のリビングもあまり使わない状態になった。湖城さんは「使わなくても管理は必要。掃除しなきゃと思うと、逆に負担だった」と持て余していた。
そこで、家族で相談し、「沖縄野菜を使った食事を出すお店を開きたい」という思いを持っていた紀子さんが平屋部分を活用して飲食店を開くことに。「日常」をコンセプトとした、アットホームな店舗にするのに、実家はピッタリだった。
家族みんなの収益に
相談を受けたクロトン設計の玉城盛太さんはまず、2室を減築。「第一種低層住居専用地域の店舗兼住宅は、店舗部分を50平方㍍以下にしなければならないため」と説明する。
だが、減築部分を解体すると数十万円の費用がかかる。そこで玉城さんは天井に開口を設けて外部化することで、躯体を残しつつ減築した。
店舗内は壁をはがし、下地のコンクリートブロックを塗装。床は家族総出で磨いて蜜ろうを塗った。サッシもそのままで、平屋で使っていたイスやテーブルも店で再利用している。既存のものを生かすことで、コストを抑えつつ、アットホームな空間が実現した。
また、別室では湖城さんの娘がネイルサロンを経営。2階建て部分の空き部屋は、紀子さんの夫がテレワークに使う。湖城さんは「家族が集まりやすくなった」とにっこり笑う。実家の空き部屋の上手な活用が、家族の収益と絆につながっているようだ。
リノベ前
リノベ後。個室を外部化したテラス。躯体を残すことで解体費を節約でき、店への風除けにも役立つ
実家の使わない部屋をリノベーション
★あるもの生かした家庭的な空間
床やサッシ、家具など、既存のものを生かすことでアットホームな雰囲気を演出。改装費も、全てに手を入れるフルリノベの3分の2程度になった。実家なのでテナント料も不要
★減築しつつも解体せず
天井に開口を設けるなど外部化することで、躯体を解体することなく2部屋分を減築。コスト削減につながった
関連記事:[沖縄]特集・不動産の日②|リノベで収益化|「ワクワク感」に投資
[沖縄]特集・不動産の日③|リノベで収益化|「個」空間で間口広げ
編集/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1864号・2021年9月24日紙面から掲載
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- 出嶋佳祐
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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。