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2025年9月12日更新
賃貸アパート修繕 より計画的に|知っておきたい!補修・改修のキホン⑱
今ある家に住み続けるには定期的なメンテナンスが欠かせないが、何から手をつけていいか分からない人も多いのでは? 外装を中心に建物全般の補修改修を手がけるタイズリフォームの赤嶺雄一郎さんにポイントを解説してもらう。今回は賃貸アパート(賃貸マンション)の長期修繕計画について。分譲マンションとは異なり、修繕工事などの意思決定は賃貸オーナーが判断する。建物の長寿命化のためには正しい知識と実践が必須だ。

文・赤嶺雄一郎 (株)タイズリフォーム代表取締役
賃貸アパート修繕 より計画的に
前回(2025年8月8日号)は「分譲マンションの大規模修繕工事」や「長期修繕計画」などについてお話いたしましたが、今回は賃貸アパート(賃貸マンション)について。同じ共同住宅であるものの、賃貸アパートは大規模修繕工事などが実施されていない、または相当遅れて実施される事例が多く見られます。どういった理由があるのでしょうか。沖縄 共同住宅が約6割
総務省統計局が実施した「2023年の住宅・土地統計調査」によると、共同住宅が全体に占める割合の全国平均は44.9%でしたが、沖縄県は60.9%。東京都に次いで全国2位となり、共同住宅率の高い地域であるといえます。
共同住宅は「分譲マンション」と「賃貸アパート」に大別されますが、全国的にみて「70%以上が賃貸アパート」。オーナーは法人所有が15%、個人所有が85%と、圧倒的に個人所有が多いことも特徴です。
管理形態については、全体の55%が不動産会社に入居者契約と賃貸管理を全て委託しているケース。残り45%はオーナーの自己管理か入居者募集など一部業務を委託するケースとなっています。
賃貸と分譲では大きな差
分譲マンションでは修繕計画の策定や積立金の算出、施工業者の選定などを管理組合が行いますが、賃貸アパートの場合、これらの業務を「原則オーナー自らが実施しなければなりません」=表1。

賃貸アパートは基本的に「仮住まい」でしかなく、入居者は建物が奇麗になるとはいえ、数カ月にも及ぶ工事に不満を持つことも多いです。一方、分譲マンションは区分所有者の総意で修繕工事を行い、快適な「終の棲家」を目指します。この居住者の意識の差も、修繕計画や工事実施の有無などに影響を及ぼすかもしれません。
修繕 遅れがちな賃貸
08年に(公財)日本賃貸住宅管理協会が行った「民間賃貸住宅市場の実態調査」によると、賃貸住宅オーナーの47%が修繕費を積み立てていると回答しています=表2。

これまで県内で数多くの賃貸アパートの修繕工事に携わってきましたが、私が考える適正な修繕費を積み立てているオーナーは、資産家を除くと、少ないと感じています。近年はオーナーの高齢化が全国的にも進行し、60歳以上の方が全体の6割を超えています。
理想的に積み立てができない要因として、賃貸収入の大半を老後資金や返済に充てている場合や、小さな修繕、原状回復工事でもオーナー負担が増えている現実があります。
「100年住宅」目指す
築年数ととともに、建物そのものに加え、電気・水道・ガスなどライフライン設備も相応の劣化が進行。そのため、工事費が高額になってしまう場合が大半です。
私自身、自宅兼アパートのオーナーのため、賃借人とのやりとりやメンテナンスは全て行っています。建築士の父親が設計した建物に、建築士の私と弟が2、3階を増築。大規模修繕は1階部をこれまで3回、増築部を1回施したほか、鉄部などに防さび塗装も定期実施しています=写真1。「100年住宅」を目指し良好な状態で次世代に引き継いでいきます。


【教えてくれた人】
あかみね・ゆういちろう/(株)タイズリフォーム代表。1級建築士、マンション維持修繕技術者、既存住宅状況調査技術者、宅地建物取引士
(株)タイズリフォーム
電話=098・975・7815
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2071号・2025年09月12日紙面から掲載