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2023年9月8日更新

上り下りしやすく安全に|今ある家をバージョンアップ[35]

文・徳里政俊/リノベーション協議会沖縄支部 支部長、RENOBEES((株)アーキラボラフィット)代表取締役

case35「階段架け替えのポイント」

2階建て以上の建物の場合、上下階の移動には階段を使います。しかし、築年数が古い建物では蹴上(1段の高さ)が高いケースが多く見られます。年齢を重ねてくると急な階段は大変危険で、踏み外すと大けがをすることになります。リノベーションを機に階段を架け替える場合のポイントをお伝えします。
 

◆相談&課題
室内階段を架け替えようと思っています。どんな点に気をつければいいですか?


階段の法的基準

建築基準法第23条では、階段や踊り場の幅、蹴上の高さ、踏み面(足を乗せる面)の奥行きの寸法が細かく定められています。屋内階段と屋外階段、建物の用途などによって基準は違いますが、住宅の場合では「階段の幅は75センチ以上、蹴上は23センチ以下、踏み面は15センチ以上」とあります。この数値は最低限の数値ということになります。

既存住宅の階段を見てみると、蹴上は20センチ前後、踏み面は15センチくらいが多いようです。建築基準法の数値を満たしているので問題なく思えますが、実際にはとても急で危ないと感じてしまいます。
 
架け替え前の階段。蹴上が高い上、踏み面が狭く、急な階段だった
架け替え前の階段。蹴上が高い上、踏み面が狭く、急な階段だった
階段架け替え後。幅78センチ、蹴上15センチ、踏み面25センチに改修。段数は以前より2段増やした。階段全体の長さが延びた分、収納の奥行きを深くした
階段架け替え後。幅78センチ、蹴上15センチ、踏み面25センチに改修。段数は以前より2段増やした。階段全体の長さが延びた分、収納の奥行きを深くした
 
Before
回る部分を上から見た様子。平らな踊り場だった部分に段差を設けて全体の段数を増やすことで、蹴上の高さを低くした
回る部分を上から見た様子。平らな踊り場だった部分に段差を設けて全体の段数を増やすことで、蹴上の高さを低くした


上りやすさ求める計算式

階段は、急だと危険な一方、緩やかであるほどいいというものではありません。実は、建築基準法とは別に、上りやすい階段には計算式があります。それが「(蹴上×2)+踏み面=60センチ」で、蹴上の2倍に踏み面を足して、60センチに近ければ上りやすいというものです。

例えば蹴上が17センチで踏み面が25センチだったら「(17×2)+25=59センチ」となるので、上りやすい階段といえます。しかし、これはあくまで目安なので、子どもや高齢者にとっては違ったものになる場合もあります。

また、一直線に続く直階段より、途中で折り返す回り階段上写真などのほうが、万が一、転倒しても途中で止まることができます。ご自身や家族にとって、上りやすく下りやすい階段を考えてみましょう。


延ばした部分を活用

急な階段を緩やかにするには、蹴上を低くする必要があります。そのために、回り階段の回る部分で段数を増やしたり、階段の距離を延ばして全体の段数を増やしたりします。

しかし、段数が増えるということは、1階の階段前が狭くなったり、2階の階段ホールが窮屈になったりするのでスペースの使い方を工夫することも必要です。

例えば、階段近くにワークスペースを設ければ、階段を延ばした部分を利用して本棚を作れるし、配置によってはヌック(2~3帖ほどの小さなスペース)として楽しむこともできます。

階段を架け替え、老後も安心して生活できるよう上りやすく下りやすい階段にするのと同時に、家全体としても住みやすく楽しめるお家にしましょう。



執筆者
とくざと・まさとし
RENOBEES((株)アーキラボラフィット)代表取締役。豊富な経験を生かした提案が得意。リノベーション協議会沖縄支部長。電話=098・988・5128


■リノベーション協議会とは 消費者が安心して既存住宅を選べる市場をつくり、既存住宅の流通を活性化させることを目的とした団体。全国800社弱の企業などが参画している。
https://www.renovation.or.jp

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1966号・2023年9月8日紙面から掲載

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