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2026年1月9日更新

建物の修繕か、建て替えか 補修改修のプロ、耐震診断の重要性を強調「築45年以上、ピロティ形式は慎重に判断を」|知っておきたい!補修・改修のキホン㉒

今ある家に住み続けるには定期的なメンテナンスが欠かせないが、何から手をつけていいか分からない人も多いのでは? 外装を中心に建物全般の補修改修を手がけるタイズリフォームの赤嶺雄一郎さんにポイントを解説してもらう。今回は地震の力に耐える建物について。


文・赤嶺雄一郎 (株)タイズリフォーム代表取締役


修繕か建て替えか  耐震診断で判断を

2年前の元日に石川県能登地方で大地震が発生しました。能登地方は大都市や中堅都市が近隣にないため、行政サービスや医療機関などによる支援が受けにくく、その地理的条件が復興活動を遅らせる一因となっていると考えられます。

島しょ県である沖縄で大地震が発生した場合、地理的条件やインフラの脆弱(ぜいじゃく)性から能登地方以上に復興が遅れると言われています。さらに本島南方沖に巨大地震や大津波を引き起こすプレートの境目である「固着域」があり、この境目が一気に破壊されると東日本大震災のような「海溝型大地震」が発生すると言われています。


新耐震基準でも倒壊

1995年1月に発生した阪神・淡路大地震は内陸で発生した「直下型地震」です。震度7を記録したこの未曽有の大地震は犠牲者の死因の9割が建物の倒壊による圧死でした。当時私は建築を学ぶ学生でしたが、高速道路が倒壊している様子に強い衝撃を受けたことを鮮明に覚えています=写真1

阪神・淡路大震災では主として81年以前の「旧耐震基準(震度5程度の中規模地震を想定)」で造られた建物が多く被害を受けましたが、81年以降の「新耐震基準(震度6強~7程度の大地震を想定)」で造られた一部の建物でも倒壊が発生しました。

 
写真1 橋脚17基(計635㍍)が崩壊した阪神高速道路。被災から約1年6カ月後に耐震性に優れた免震ゴム支承を用いて復旧された
 

ピロティで大破 確認

新耐震基準で造られた建物の75%が軽微な損傷または無被害でしたが、15%が小・中規模の破壊、残り10%の建物、特に1階が駐車場で耐震壁が無く、柱だけの「ピロティ形式」で大破・崩壊の被害が多発しました。

大破とは柱や梁(はり)など主要な構造部分が大きく損傷し、そのままでは居住ができない状態を指します。沖縄はピロティ建築が非常に多く見られます。理由として①車社会で自動車の保有台数が多く限られた土地を有効活用するため、②「地震係数」が全国一低く、耐震壁を省くことが出来るから、などが挙げられます=図1
 
図1 下図のように、1階部がピロティの場合、壁は少なく開放的な空間となるが、1階の柱に地震の揺れやそれによる変形の力などが集中しやすくなる


地震係数 低い沖縄

地震係数とは地域ごとの地震リスク(過去の地震被害や活動状況)に応じて、建築基準法に基づき、建物の耐震設計で用いる地震力の大きさを調整する係数のことです。地震が多い地域は1.2や標準値の1.0、少ない地域は0.9〜0.7などと順に定められています。

係数の値が低いということは、設計上の地震力が比較的小さく想定されているということ。沖縄は最も低い「0.7」となっていますが、個人的には今後の地震リスクを考慮すると「標準値の『1.0』としても良いのでは?」と考えています。


旧耐震建物は慎重に

建物調査時に「地震がきても大丈夫か、修繕して延命させるか、建て替えをするか」の意見を求められることがあります。特に築45年以上経過している旧耐震建築物かつピロティ形式の建物の場合は、慎重な判断をされることをお勧めします=資料1、写真2
 
資料1 設計事務所に耐震診断を依頼した場合の業務の流れ。診断には2カ月程度を要する。さらに第三者による判定が必要な場合はさらに2カ月程度かかる(出典:NPO法人沖縄県建築設計サポートセンター  「耐震診断・耐震改修のすすめ」パンフレット)
 
写真2 築50年のアパートの天井内。雨水にさらされない部位にも関わらず、構造体の梁などに大量の爆裂が発生。鉄筋コンクリート内の塩分濃度試験や中性化試験などの専門調査には相応の費用を要するが、無償の目視調査でも一定レベルの現況把握はできる

沖縄県では耐震化促進支援事業を展開し、建築物の耐震および防災・減災対策を推進しています。調査には相応な費用を要しますが、補助金もあるようなので、興味のある方はお問い合わせしてみてはいかがでしょうか。



【教えてくれた人】
あかみね・ゆういちろう/(株)タイズリフォーム代表。1級建築士、マンション維持修繕技術者、既存住宅状況調査技術者、宅地建物取引士

(株)タイズリフォーム
電話=098・975・7815​



毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2088号・2026年01月09日紙面から掲載

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