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2025年11月14日更新
リフォーム工事で節税できる? 建物の補修改修を手掛ける会社社長が解説します|知っておきたい!補修・改修のキホン⑳
今ある家に住み続けるには定期的なメンテナンスが欠かせないが、何から手をつけていいか分からない人も多いのでは? 外装を中心に建物全般の補修改修を手がけるタイズリフォームの赤嶺雄一郎さんにポイントを解説してもらう。今回はリフォーム工事でできる節税対策について。

文・赤嶺雄一郎 (株)タイズリフォーム代表取締役
リフォーム工事で節税対策
建物を良好な状態で末永く使用するには、適切な時期に適切な工事を実施することが重要であることはこれまで何度となくお伝えしてきました。この適切な時期を逃してしまうと工事費が高額になるだけでなく、建物の解体を検討しなければならない場合もあります。建物診断後にそれらの事実を依頼者に伝えると、「ローンを利用してでも早めに工事をしておけば良かった…」との声を聞くこともあります。
ローン利用の利・不利
ローンを利用するメリットは、自己資金だけでは賄いきれない高額な工事費を確保し計画的に工事が進められることや、後に述べるリフォーム減税の対象となることなどが挙げられます。一方で、短期返済型のローンは毎月の返済額が高くなったり、既に住宅ローンがある場合は審査が厳しくなる、融資限度額が少なくなったりするため、注意が必要です。
確定申告で税金が控除
リフォーム工事の内容が一定の基準を満たし、かつ面積など家屋の要件を満たしていれば、確定申告することで所得税の控除が受けられます。また固定資産税の減額措置が受けられる場合もあります。ただし、いずれも所定の申告先に必要書類を期限内に申請する必要があります=表1。

相続税対策にも有効
2013年の税制改正で相続税の基礎控除額が大きく削減され、これまで課税対象でなかった方も相続税対策が必要になっています=表2。

そこで新たな節税対策として注目されているのがリフォーム工事です。生前にリフォーム工事を実施することで、課税対象となる現金資産を大きく減らすことができます。また一定の条件、例えば床面積の増加が無い、家屋と構造上一体となっていない内装や設備のリフォームであれば、固定資産税や相続税評価額は原則上がることはありません。もしそれ以外の大規模リフォームを実施した際でも、固定資産税評価額はリフォーム費用の約7割を加算した額しか増えないため、現金で相続するより節税効果が高くなります。
リフォーム資金の特例
身内であっても年間110万円を超える贈与には贈与税が発生しますが、住宅取得資金には特例が設けられています。父母や祖父母など直系尊属から子や孫に贈与された住宅取得資金には、一定額まで税金が掛かりません。リフォーム費用も対象に含まれます。この非課税枠は来年12月31日までの予定で将来的には引き下げられる見込みのため、早めの活用が望まれます=表3。

大規模修繕と税務区分
分譲マンションや賃貸アパートで実施される大規模修繕工事の費用に関する税務上の区分に、「修繕費」と「資本的支出」があります。修繕費とは建物や設備の原状回復や機能の維持を目的として支出される費用のこと。これらの工事は新たな価値を付加するものではないため単年度で経費として一括計上でき、結果として所得税や法人税の節税効果が高くなります。対して資本的支出とは建物の機能を向上させ、資産価値を高めることを目的とした支出で、耐震補強や高断熱窓取替工事などが該当します=表4。

多くは原状回復が目的で修繕費に区分されますが、一部にアップグレード工事があると資本的支出とみなされる場合があるので、注意が必要です。

【教えてくれた人】
あかみね・ゆういちろう/(株)タイズリフォーム代表。1級建築士、マンション維持修繕技術者、既存住宅状況調査技術者、宅地建物取引士
(株)タイズリフォーム
電話=098・975・7815
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2080号・2025年10月14日紙面から掲載









