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2025年1月10日更新
定期メンテで木造長持ち|知っておきたい!補修・改修のキホン⑩
今ある家に住み続けるには定期的なメンテナンスが欠かせない。が、何から手をつけていいか分からない人も多いのでは? 外装を中心に建物全般の補修改修を手掛けるタイズリフォームの赤嶺雄一郎さんに、ポイントを解説してもらう。今回は、県内で着工が増え続ける木造住宅のメンテナンスについて。
文・赤嶺雄一郎 ㈱タイズリフォーム代表取締役
定期メンテで木造長持ち
調湿・風合いに優れ
県が公表した構造別新設住宅着工戸数の推移によると、2015年度以降は木造の戸数が増加傾向にあり、21年度では1779戸(19.1%)まで増加しています。逆に鉄筋コンクリート構造の割合は8割を下回りました。ちなみに、本土の低層住宅の8割以上は木造です。
柱や骨組みなどの主要な構造部に、木材を使った建物を木造建築物と呼びます。工法には、柱に梁や筋交いを組み合わせた軸組工法や、木枠に構造用合板を張り付けて耐力壁を形成する枠組壁工法などがあります=図1。
■図1
木造のメリットは、鉄筋コンクリート造や鉄骨造に比べて建築費用が安い、調湿性に優れる、デザインの自由度が高い、木特有の風合いに優れる、などがあります。しっかりと施工すれば耐震性にも優れています。
デメリットは他構造に比べ耐久性が低い、防音や気密性が低い、火災に弱い、シロアリ被害に遭う可能性が高いなど。しかしこれらも使う材料や建築の仕様で大きく変わります。
屋根・壁は定期塗装
屋根材には、重厚な粘土系の日本瓦、日本瓦より軽量なセメント瓦、セメントと繊維で作られた軽量な化粧スレート屋根、アルミと亜鉛などの合金でメッキ処理されたガルバリウム鋼板屋根などがあります。近年はガルバリウム鋼板屋根やスレート屋根が主流となっています。日本瓦以外は劣化防止のため、塗装メンテナンスが必要です=写真1。
■写真1
ガルバリウム鋼板屋根塗装の様子。シーリング防水を先行実施し、仕上げは超高耐候の遮熱フッ素樹脂を採用。
外壁材にはサイディングボードと呼ばれる工場製品が用いられており、代表的なものはセメントと繊維で作られた窯業系、ガルバリウム鋼板やアルミなどで作られた金属系、塩化ビニル樹脂で作られた樹脂系、木で作られた木質系があります。このうち、最も使用されている外壁は窯業系です。
いずれの素材も吸水による膨張や金属のサビ、樹脂の紫外線劣化や木材の腐食防止のために定期的な塗装メンテナンスが必要です=表1。
床面防水 立地考え
ベランダなどの床面にはガラス繊維で補強されたFRP防水やウレタン塗膜防水、シート防水などがありますが、最も多いのはFRP防水です。FRP防水は硬い樹脂で固めてしまう工法のため、地震や熱による建物の動きに耐えられず破断してしまうことがあります=写真2。そのため、立地環境によっては下地の動きに追従するウレタン塗膜防水やシート防水などが採用されることもあります。塩ビシートを除く上記防水にも定期的な塗装メンテナンスが必要です。
■写真2
FRP防水の角部が破断して漏水に至った例。弾性に富むシーリング材で防水補修を実施した。
シーリングは新設
外壁や屋根の建材間のつなぎ目(目地)や隙間にはシーリングと呼ばれる防水材が充填されています。シーリングには建材の動きを吸収し建物内に雨水が浸入するのを防ぐ大切な役割がありますが、概ね10年もするとひび割れや剥がれが発生します。
外壁や屋根の塗装時には必ずメンテナンスすべき部位ですが、既設のシーリング材を剥がさずに上から新たなシーリング材をかぶせる増打ではなく、全て撤去して新設する打替で実施する必要があります=写真3。
■写真3
外壁シーリング材の撤去の様子。この後、サイディングボード専用のシーリング材で打替を行い、超高耐候のフッ素樹脂で塗装を行った。
木造住宅の法定耐用年数は22年。鉄筋コンクリート造が47年ですから短く感じると思いますが、これらは減価償却上の計算に使われるもので、この年数しか持たないということではありません。セルフチェックや適切なメンテナンスを定期的に実施することで、木造住宅も良好な状態で長らく維持することが可能となります。
【教えてくれた人】
あかみね・ゆういちろう/㈱タイズリフォーム代表。1級建築士、マンション維持修繕技術者、既存住宅状況調査技術者、宅地建物取引士
◆㈱タイズリフォーム
電話=098·975·7815
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2036号・2025年01月10日紙面から掲載