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2024年7月12日更新

台風で注意すべきは貫穴|知っておきたい!補修・改修のキホン④

今ある家に住み続けるには定期的なメンテナンスが欠かせない。が、何から手をつけていいか分からない人も多いのでは? 外装を中心に建物全般の補修改修を手掛けるタイズリフォームの赤嶺雄一郎さんに、ポイントを解説してもらう。4回目は、台風シーズンに備え、雨漏りの注意点と対応について。


文・赤嶺雄一郎 ㈱タイズリフォーム代表取締役
 

台風で注意すべきは貫穴

今年6月の降雨量は史上最多となりましたが、梅雨が過ぎれば次に来るのは「台風」です。

屋根や窓周りのシーリング劣化部などからの浸水は一般的に知られていますが、強烈な横風を伴う台風時に特に注意すべき箇所は「壁を貫通している穴」です。具体的には、エアコンスリーブ、各種吸気口、給排水管、防水コンセントや脱落した照明器具など=。これらの部位には原則シーリング防水が施されていますが、経年劣化によるひび割れ、剥離が発生していることがあります。また、当初からシーリングを打ち損じているケースもあり、穴が開いたような状況も=下写真。浸水した雨量によっては、深刻な漏水事故へ発展することがあります。


シーリングを打ち損じ、外壁に穴が空いたエアコンスリーブ。強烈な横風が吹く台風時は、雨が吹き込み漏水事故に発展することも

■散水試験

初見で漏水箇所が特定できない時や、防水範囲を確定するために行う。機材や人手はもちろん、足場が必要になったり時間がかかる場合は別料金が発生することも。初見時に必ず確認を

■確認部位と注視する箇所・項目
 外壁を貫通している穴や埋設配管など 
エアコンスリーブ スリーブ周りのシーリング、冷媒管周りのシーリングに切れや隙間が無いか
パイプフード、レンジフード フード周りのシーリングに切れや隙間が無いか
天井及び床下換気口 換気口本体の破損や周辺コンクリートにひび割れや隙間が無いか
給水管、給湯管、排水管 各種配管周りのシーリングに切れや隙間が無いか
防水コンセント、電気配管、照明器具 コンセントのぐらつきや配管周りに隙間が無いか、照明器具が脱落していないか









※どの項目も事前・事後の目視を基本とし、外部確認は降雨・雷鳴時および暴風雨等の悪天候下では絶対に行わないようにしてください。特に高所部位や電気系統部位の自己確認は大変危険ですので、天候を問わず業者へ依頼してください。また、確認の際は部材を無理に動かしたりしないようにしましょう。無理に動かすことで、さらに悪化させてしまう場合もあります。


外から塞ぐが鉄則
大雨や暴風時に窓を締め切って換気扇を使用した場合、外圧と内圧に大きく差が生じることで室内側に雨水が引き込まれるという現象が起きます。これにより通常の降雨では到達できないような部位に雨水が浸入することがあります。

原因が複雑に絡んだ漏水の場合、浸水部位の特定に相応の費用と時間を要することがありますが、原因が判明したら、防水機能のある材料を使って「外側から塞ぐ」ことが大切です。安易に内部から防水工事を行うと、別の部位から漏水を併発する場合があるからです。

また事前に浸水部位を想定できたとしても、それを立証するのは容易ではなく、高所であれば危険が伴う場合もあるため、早い段階で専門業者へ依頼することをお勧めします。依頼する際はメモで構いませんので、漏水の発生状況を記録しておきましょう。のちに業者とのやりとりでも必ず確認問答のある重要な情報となります。
 

被害広げることも
 
では、発生してしまった雨漏りにどのように対応すればよいか。業者へ依頼しても、すぐに対応できないことも予想されます。先ほどのメモを活用し、状況を伝えた上で診断・調査を早急に依頼しましょう。その場合でも複数の業者へ問い合わせることをお勧めします。

対応してもらうまでの間、雨漏りなら水受けを設置し、床や調度品にはビニールシートや市販のゴミ袋などを掛けておくことで、二次被害を最小限に抑えることができます。ただし、壁を伝う雨漏りの場合、ビニールなどで押えてしまうと被害範囲を広げる可能性があるので注意が必要です。


雨水が飛散しないよう、漏れた所を囲むようにビニールを固定し、1点に集めて受水し=赤部、家具や家電への被害を防ぐ


床に敷設する場合は滑りやすいため、漏水直下だけにして歩行通路を確保して

漏水が照明器具やスイッチ部分に及んでいる場合には、直接触れないようにしましょう。電気の絡む箇所は感電や火災リスクも伴うため大変危険です。専門業者に依頼し、すぐに来てもらえない時には、どのように対応すべきか相談しましょう。

漏水事故は、長期化すると日々の生活や心身にも悪影響を及ぼし、大切な建物の劣化を著しく進行させてしまいます。今回紹介した原因以外にも、屋内の壁や天井裏、床下に設置されたエアコン配水管の結露水が原因だった事例もあります。そのような状況を発生させない、または軽減するためにも、改めてセルフチェックと定期的な建物メンテナンスの実施を推奨いたします。



【教えてくれた人】
あかみね・ゆういちろう/㈱タイズリフォーム代表。1級建築士、マンション維持修繕技術者、既存住宅状況調査技術者、宅地建物取引士

◆㈱タイズリフォーム
電話=098·975·7815



毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2010号・2024年07月12日紙面から掲載

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