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2024年8月9日更新

見積もりは記載内容がすべて|知っておきたい!補修・改修のキホン⑤

今ある家に住み続けるには定期的なメンテナンスが欠かせない。が、何から手をつけていいか分からない人も多いのでは? 外装を中心に建物全般の補修改修を手掛けるタイズリフォームの赤嶺雄一郎さんに、ポイントを解説してもらう。5回目は、見積もりを取る際の注意点について。


文・赤嶺雄一郎 ㈱タイズリフォーム代表取締役


見積もりは記載内容がすべて

建物の補修や改修、予防保全などを目的とした工事を実施する上で、優良業者を選定するために、複数の業者から「相見積」を取得されるのが一般的かと思います。これは業者の提案内容や金額を比較検討するために必要なことですが、ここでも各社から提出される見積もり内容を検証する際に大きな役割を果たすのが、「セルフチェック」です。
 
工法・資材の詳細も

業者の提案内容にセルフチェックで気になっていた箇所への言及があるか、また工法や必要資材などの詳細表記があるかどうかを確認しましょう。親切な業者であれば、専門性の強い見積書の理解を促すために、提案書や補助資料などを添付してくれる場合もありますが、その場合でも双方の勘違いや、後の「言った・言わない」を防ぐためにメモを取っておくことをお勧めします。


■電線養生
以前は無償としていたが現在は有償。状況に応じて費用が変動する。安全確保・事故防止のためには必須。見積りに電線養生費用が入っているか、必ず確認を。

何度でも質問を

分からないことは業者に何度でも質問し、専門用語などは丁寧に説明してもらうようにしましょう。「工事は予算と見積もりに始まり、金額で終わる」という言葉があります。工事は見積書に記載されていることが全てなので、施主には実施内容を理解しようとする努力、業者には理解してもらう努力が必要なのです。

もちろん、工事期間中に見積もり以外の想定外工事が発生すれば、別途見積書を提出して協議することになります。必要な工事であれば実施する必要がありますが、追加工事が多いとすぐに予算オーバーとなります。そんな状況を発生させないためにも、初回見積書の精度や「その内容に双方が納得できているか」ということがとても重要になります。

有効期限に注意

見積書について、別の注意点として「有効期限」があります。これは提示された見積書の金額や仕様などにおいて、その期限内での受発注であれば、変更なく工事を実施できるというものですが、原則この期間を過ぎてしまった場合には「再見積もり」を行う必要があります。

通常は同一内容で更新されることが多いですが、建築資材や人件費の高騰、納期の変更などがあれば見積額が上昇することもあります。昨今激動する世界情勢や急激な経済動向の変化は世界中に及んでいるため、有効期間は短くなる傾向にあります。そのため、有効期間を1カ月程度としているケースも珍しくありません。

■那覇における補修資材の物価指数の推移(2022年〜現在)

2022年1月を基準とした物価指数の推移。わずか2年半で塗料が1.5倍、セメント材やガラス製品などを含む窯業・土石製品は1.25倍に上がっているのが分かる ※一般社団法人 建設物価調査会ホームページ参照。窯業・土石製品は陶磁器・セメント材(製品)やガラス製品などを含む

内容しっかり把握

価格変動とは別に、工事の価格が以前より高くなってしまう原因は他にもあります。工事中の感電事故防止対策として義務化されている電線防護管設置費用の有償化やアスベスト混入建材の事前調査&処分費の高騰、2024問題などに象徴される職人不足や規定労働時間の厳格化に伴う工事日数の増加、それに伴う人件費・仮設費用の増加など、要因はさまざまです。

これらの原因を考慮しない低価格での競争になってしまうと、どこかで必ずひずみが生じます。「以前出してもらった見積書と比べると高い、業者間の価格差が大きい」と思う前に、各業者から提出された見積書の内容をしっかり把握し、双方が納得して契約を行う必要があります。

いかがでしょうか、次回は見積書作成のベースとなる「修繕設計の重要性」についてお話しします。
 



【教えてくれた人】
あかみね・ゆういちろう/㈱タイズリフォーム代表。1級建築士、マンション維持修繕技術者、既存住宅状況調査技術者、宅地建物取引士

◆㈱タイズリフォーム
電話=098·975·7815

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2014号・2024年08月09日紙面から掲載

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