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2023年8月18日更新
修繕次第で寿命長く|インスペクションで解明 住まいのミステリー 第5話(番外編/この建物はあと何年もつ?)
文・下地鉄郎(インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)
第5話(番外編/この建物はあと何年もつ?)
修繕次第で寿命長く
依頼内容
築41年の鉄筋コンクリート造一戸建て。建築時からずっと住んでいるのだが、天井に水ジミがいくつか発生している。いろいろ調べてもらって、あと何年もつかを具体的に教えてほしい。
天井の水ジミ
屋上。防水がされておらず、コンクリートがむき出しになっている
平面図
永 遠にもつ建物
「家があと何年もつか知りたい」という、上の依頼のような相談をよく受けます。いろいろな意見を聞いて解体やリフォーム時期の目安にしたい、単純に安心したいなど理由はさまざまだと思います。
しかし、何年もつかを明確に答えるのはとても難しいのが実情。劣化具合を調べればある程度分かってはくるものの、明確な答えは今後の修繕工事の計画次第でもあるからです。逆に言えば、適切な修繕計画を実行すれば「何十年でももつ」と私は考えています。
現在、人間の寿命は100年がやっとですが、建物は適切なメンテナンスさえ続けていれば、それ以上もたせることができます。仮に古くて構造体がボロボロでも、コンクリート造であれ木造であれ補修や補強の方法はあるので、物理的には永遠にもつとも言えます。ただ実際には、コストや住人のライフサイクルもあるため、人間でいう寿命を全うせずに解体してしまう建物がほとんどです。
何 年もたせたいかが大切
今回の依頼は「将来的に建物を子に引き継ぐか売却するかを検討するため」に、あと何年もつかを知りたいというものでした。
調査をしてみると、配管にサビなどが見られたものの全体的に経年変化の範囲内。天井の水ジミは屋上防水がされていないのが直接的な原因でした。
調査後には、防水工事や配管工事の一般的な工法、費用、時期のほか、「あと何年もつか」に対しても、簡易的な修繕計画表=下=を基に「将来の修繕計画に応じた目安」を報告。今後の判断材料となるようお伝えしました。
例えば、屋上防水や外部の補修など(総額300万円ほど)をすれば20年、それに加えて室内の修繕やその後の定期修繕など(総額1000万円ほど)を行えば40年以上もつといった内容です。
建物の場合「何年もつか」ではなく「何年もたせたいか」という意識が大切。気の長い話ではありますが、予算や目的を考え、それに応じて将来の修繕計画もいくつか選択肢を持っておくことをおすすめします。
しもじ・てつろう/一級建築士、(株)クロトン代表取締役
電話=098・877・9610
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1963号・2023年8月18日紙面から掲載