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2023年9月15日更新

にじみ出る白い粉|インスペクションで解明 住まいのミステリー 第6話(玄関前タイル、駐車場コンクリート天井面)

文・下地鉄郎(インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)

住宅の劣化状態などを調査して報告する「インスペクション(建物診断)」。今回はタイルやコンクリート天井面からにじみ出る白い粉について、インスペクション沖縄の下地鉄郎さんが調べていく。
 

 第6話(玄関前タイル、駐車場コンクリート天井面)

にじみ出る白い粉

 依頼内容 
築40年になる鉄筋コンクリート造の2階建て住宅を購入予定です。手付金は支払っており購入はほぼ確実であるが、いくつか気になる点があり詳しく調べてほしい。特に建物表面から出ている白い粉のようなものが目立っているため、この原因や除去方法についても知りたい。


 現場の特徴 

・築40年の鉄筋コンクリート造
・玄関前のタイルや駐車場の天井面から白い粉が出ている
・駐車場の上の階にはバルコニーがある

 


①玄関前の階段や塀。タイル部分から白い粉がにじみ出ている


②駐車場の天井。全体的に白い粉が広がっている。一部にはつららのようになったものもある
 

 コ ンクリートの成分か

メールで送ってもらった建物の図面や写真を見ると、小さなヒビ割れや窓枠の水ジミなどはあるが室内への目立った雨漏りなどはないようだ。ただ、玄関前のタイルや駐車場のコンクリート天井面から白い粉のようなものが見られる。依頼者は「インターネットで調べて、コンクリートの成分がにじみ出ていることはなんとなく分かった。でも、購入後のリフォーム範囲の判断もしたいので、全体的に調査して、白い粉と劣化との関係なども教えてほしい」とのことだった。

 仮説 
白い粉はおそらく「白華(はっか)現象(エフロレッセンス)」だろう。これは、コンクリート内部のカルシウムが、水分と一緒に表面に溶け出して発生する現象だ。美観的によくないのと、クラック(小さなヒビ)などからの水分の浸入が主な原因なので建物の構造に関わる場合は耐久性に影響を及ぼす。


 白 華=水が浸入

現地調査では、玄関前タイルや駐車場天井など、白い粉が分布している範囲を記録しながら確認。どれも予想通り白華現象であることが分かった。タイル面やコンクリート面に白華が発生するということは、水分が浸透・浸入していることを示す。

タイル面をよく見ると、目地に、経年による微細なクラックが確認できる。ここから雨水などが浸透していったのだろう。そして、タイル下のコンクリートや目地材のカルシウム分と一緒に表面にしみ出て白華現象が起きたのだ。

続いて駐車場のコンクリート天井面。上の階にはバルコニーがある。依頼者は「過去にバルコニーから駐車場に雨漏りしたことがあり、前の住人が自分で防水塗装をしたらしい」と話す。

バルコニーにクラックは見られない。だが鋼製の排水ドレンがさびているようだ。そのさび部分や周囲のコンクリートとの隙間から雨水が浸入したことにより白華現象につながったようだ=断面イメージ図。

 

断面イメージ図




 鼻 水同様の初期症状

白華現象はよくあるものではあるが、建物の構造に関わっているかどうかで対応は変わる。

今回で言えば、構造に関わらない玄関タイル面は美観的な問題だけなので清掃程度で済む。一方、構造に関わる駐車場上のバルコニーについては、内部の鉄筋さびにつながり、ひいては建物の耐久性自体に影響していく。

白華現象はコンクリート劣化の初期症状の一つで、風邪の初期症状である「鼻水」に例えられることもある。構造に関わるのであれば、なるべく早い段階で水の浸入ルートを見つけて適切な防水処理などの必要がある。



 解決策・アドバイス 
◆玄関前のタイルの白華=写真①=は、酸性洗剤で落とすことができる。
◆駐車場のコンクリート天井面=写真②=は、バルコニーの排水ドレンを改修し、コンクリートの隙間を埋めるなどした上で、防水処理をする必要がある。
◆白華と似た現象で、木材や内装材に含まれたアクや石油成分がにじみ出ることがある。清掃で済ませることが多いが、建物の構造と関係している場合もあるので、原因が分からなければ、専門家に相談を。






しもじ・てつろう/一級建築士、(株)クロトン代表取締役
電話=098・877・9610


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1967号・2023年9月15日紙面から掲載

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