リノベ
2023年5月12日更新
間取りや建材選びで改善|今ある家をバージョンアップ[31]
文・森岡瑞穂/リノベーション協議会沖縄支部会員、(株)アートアンドクラフト
case31「湿気・カビ対策をデザインと両立させる」
高温多湿な沖縄で多いのが湿気による住まいのトラブル。立地によって環境は異なるので発生を想定するのは難しいですが、リノベーション対象の建物にすでに湿気の影響が見られる場合は要注意! 見た目をきれいにするだけでは、後から不具合が出たりカビが生えたりする可能性があります。
リノベを計画している物件の湿気とカビが気になる。対策はある?
リノベ前の事前調査は慎重に
まず、リノベ前の現地調査では、カビや水ぬれの跡、木材にゆがみ・波打ちなどがないかの確認から。特に窓まわりなど、外気との気温差が大きくなりがちな箇所は結露の影響が出やすいです。他にも、空気の流れが少ない収納や押し入れの中、外気に面した壁に接して家具を長く置いていた場所なども、湿気がたまりカビが生えていることがあります。
一方で、雨漏りや配管からの水漏れがカビや水ぬれの原因となっている可能性も。原因をよく調査・検討してから対処法を考えなければなりません。
コンクリートブロックとエキスパンドメタルを使った造作パーティションで仕切り、通気性を確保したウオークインクローゼット
調湿効果が期待できる木毛セメント板を、壁と天井に採用した事例
結露の影響なら内窓や断熱材
窓まわり、外壁に面する壁などでカビが見られる場合は、結露の影響の可能性大。窓まわりはサッシの交換やインナーサッシの設置で結露を軽減できます。壁や天井、梁(はり)などにカビが見られる場合は少し解体して中の状態を確認するのが良いでしょう。表面だけでなく内部までカビが生えていたり、断熱材が貼られていない箇所が見つかるなど、原因を推察できることがあります。原因が断熱材の不十分さによるものだと判断できれば、リノベ工事の際に断熱材の追加を検討しましょう。
また、一戸建て住宅、特に外人住宅やマンションの1階の場合、敷地条件や建物の建て方によっては地面から湿気が上がってきやすい場合もあります。地面からの湿気が気になる場合は、床材の施工前に防湿シートを敷くのも効果的。その他にも水分を遮断する塗料などを利用する場合もあります。
外壁に面する壁に発生したカビ
風通しと建材の調湿性
間取りを考える際、湿気対策だけでなく快適な空間にするためにも風通しを考えることはとても重要です。
長い時間を過ごす生活空間はもちろん、収納内へもできるだけ空気が流れるよう検討しましょう。つい物を詰め込みたくなりますが、天井や壁との間に隙間を作ったり、室内窓をつけたり、通気性のある素材で仕切ると、空間を広く見せる効果もあり一石二鳥です。
調湿性のある内装材は、高湿度の時に水分を含み、低湿度の時は水分を放出することで湿度調整の効果を期待できます。希望のデザインをかなえながら快適な空間に一役買う素材があります。例えば、珪(けい)藻(そう)土(ど)や漆(しっ)喰(くい)などの左官材、イ草やサイザル麻などの自然素材、木毛セメント板や羽目板といった木材など。その他、無(む)垢(く)フローリングにも調湿性はありますが、湿気を含んで反りや突き上げにつながった場合の影響が大きく、湿気が気になる部分の床材には不向きです。採用する場合は、樹種の選択にも注意が必要です。思い切って、湿度の影響の少ないタイルやビニール系の素材を採用してみてもいいでしょう。
ただし、いくら間取りや建材を工夫しても、全てのトラブルを解決できるわけではありません。家具を置く場所や室内の空気を循環させるなど、暮らしの中での工夫も大切です。
執筆者
もりおか・みずほ
自身の希望で(株)アートアンドクラフト大阪本社より沖縄事務所に赴任。沖縄で嫁入りし、リノベーションした住宅で暮らす。電話=098・975・8090
■リノベーション協議会とは 消費者が安心して既存住宅を選べる市場をつくり、既存住宅の流通を活性化させることを目的とした団体。全国800社弱の企業などが参画している。
https://www.renovation.or.jp
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1949号・2023年5月12日紙面から掲載