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2023年6月9日更新

持ち分贈与で名義の一部も贈与|今ある家をバージョンアップ[32]

文・鈴木良暢/リノベーション協議会沖縄支部会員、(株)TeachPlus

case32「親名義の建物のリノベーション」

リノベーションの相談を受ける時、意外と多いのが名義の問題。「よく分からない」というお客さまも多いのですが、住宅ローンを組む際に影響が出ることもあるため、事前に解決しておきたいことでもあります。その方法の一つとして「持ち分贈与」があります。
 

◆相談&課題
親名義の建物をリノベーションして住みたいが、自分(子)の名義ではないので自分で住宅ローンを組めない。どうしたらいい?


融資受けるには名義が必要

金融機関によりますが、住宅ローン審査の際、所有者名義でないと融資を受けられないケースがあります。親名義の土地や建物の場合、子が名義を持つためには、親族間で話し合いの上、贈与や相続などの検討も必要です。その中で一般的な解決策として「持ち分贈与」があります。

これは、簡単にいうと「贈与者が財産の一部を受贈者に贈ること」を意味します。お金であればイメージしやすいと思いますが、土地や建物も同じです。司法書士などに贈与契約書を作成してもらい、「親が2分の1、子が2分の1」といった具合に所有権を贈与することができます。

そうすることで子も名義を持つことができ、住宅ローンの融資を受けられるようになります。ただし、このとき、親の担保を提供することにもなるので、親も一緒に銀行に行って申し込む必要があります。




税金が大きくなることも

持ち分贈与のメリットとしてはほかにも、「親が生きているうちに子に財産を贈与することで、相続税の負担を軽減」「財産の一部を手放すことで管理の負担を軽減」などがあります。もちろん、受け取った財産は贈与税の対象となりますが、贈与税の非課税枠(年間110万円の基礎控除)を活用することで、税金を節約することもできます。

一方で、資産の状況(金額・数)や相続人の数などによっては、持ち分贈与をすることで相続税が大きくなったり、家族間でもめるきっかけになる可能性もあります。家庭によって状況は異なる上、税務・法的な規制等もありますので、税理士などの専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。


ほかの方法を含め専門家に相談を

親名義の建物を子の名義にする方法としては、持ち分贈与のほかにも「相続時精算課税制度」や「売買」などもあります。

相続時精算課税制度は、贈与時の贈与税を、相続時の相続税の一部としてまとめて納税できる制度。2500万円までなら贈与税を納めずに親から子へ財産を贈与できるのが特徴です。ただし親が亡くなったときに、その贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額を合計した金額から相続税額を計算し、相続税としてまとめて納税しなければいけません。持ち分贈与と同じように司法書士などに贈与契約書を作成してもらうことで名義を変えられますが、確定申告で申告する必要があります。

売買は、親が子に土地や建物を売却することで、名義を変えます。

これらについてもさまざまな条件があるため、どの方法を用いるかは専門家に相談してみるといいでしょう。

贈与や相続の話題はちゅうちょしてしまいがちですが、不動産の活用方法や名義などの話をきっかけに、家族会議をしてみてはいかがでしょうか? 親子でしっかり取り組み、有効な対策ができれば、「名義」や「住宅ローン」に関して問題解決できるはずです。



執筆者
すずき・よしのぶ
TeachPlus 営業企画部課長。不動産売買・リノベーション・資金計画・相続問題など幅広く対応している。電話=098・882・1001


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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1953号・2023年6月9日紙面から掲載

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