【沖縄】マンションの制約を楽しむ|今ある家をバージョンアップ[15]|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

リノベーション

リノベ

2021年7月16日更新

【沖縄】マンションの制約を楽しむ|今ある家をバージョンアップ[15]

マンションの一室をリノベーションする時に、住人が勝手に手を加えることができない「共用部分」。「変えられないから」と諦めるのではなく、うまく生かしてリノベーションを楽しむアイデアを紹介します。
文・森岡瑞穂(リノベーション協議会沖縄支部 会員)

case15
「大きな梁&サッシ」⇒「キッチンの天井&サンルーム」

◆相談&課題
リノベの際、柱や梁、サッシなどの手を加えられない共用部分はどうしたらいい?

◆リノベのプロが提案!
共用部分を生かしながら、存在感を抑えたり機能性をプラスする

共用部分は管理規約でチェック

建物全てが所有者のものである一戸建てと違い、マンションには、区分所有者(*)全員で共有する「共用部分」があります。そのため、各区分所有者はマンションごとに決められた管理規約を守らなくてはなりません。区分所有者それぞれが所有する「専有部分」のリノベーションであっても管理規約を順守する必要があります。

共用部分と専有部分の場所は、「区分所有法」で定められているほか、管理規約でも細かく区分けされています。梁(はり)や柱などの躯体は共用部分であると容易にイメージができるかもしれませんが、実は玄関ドアやサッシ、バルコニーも共用部分として定められていることがほとんどです。


これらの共用部分は区分所有者が勝手に改造・変更することができず、修繕や交換をしたい場合は個別に管理組合との調整が必要となります。
(*)区分所有者:分譲マンションの一住戸(専有部分)を所有している人


Before


壁付けだったキッチンを梁の下に移動させ対面型にしたことで、梁の存在が目立たない


Before


仕切りを取り払い、明るく開放的な空間に。中央奥には、既存のサッシを生かしたサンルームがある


大梁の存在感を抑える

建物を支える躯体であり、居室では存在感が出てしまう大梁。「取り払えないもの」とネガティブに捉えられがちですが、デザインとして生かすこともあります。

写真の住まいは以前、大梁が広い空間を仕切ってしまい、キッチンも暗い印象でした。そこでリノベではまず、壁付けだったキッチンを対面型にして大梁の真下に移動。梁下にダウンライトを仕込んだことも加わってキッチンの印象は明るくなり、天井から出た大梁の存在感も緩和されました。さらに大梁のキッチン側には収納棚を設けることで機能性も持たせました。


既存の窓+新設の窓でサンルーム

サイズを大きくしたり、取り換えたりできないサッシですが、ここでは専有部分側に大きな室内窓を新設。窓に挟まれた空間をサンルームにして、外部とLDKをゆるやかに仕切る「緩衝空間」としました。

サンルームと室内を窓で仕切ることで光と風を室内に取り込みやすい一方、二重に窓があることでカーテンや窓を開けていても外からの視線が届きにくくなります。さらにサンルームは観葉植物を育てたり、室内干しをしたり、読書をする憩いの場としても使えます。

制約をネガティブに捉えるのではなく、上手に向き合い、自由なアイデアで取り入れて生かすことで、二つとない自分らしい空間を実現できるのです。


執筆者
もりおか・みずほ
大阪の堺で育った関西人。立命館大学卒業後、Arts&Craftsへ入社。住宅系資格を有するが資格には頼らない仕事ぶりで、毎日奮闘中。沖縄で嫁入りし、地元精通ももう間近! リノベーションした自宅に住む。


◆Arts&Craftsの強み
1994年設立、日本におけるリノベーションの黎明(れいめい)期から活動。個人住宅のリノベから空室が目立つビルやアパートの再生コンサルティングまで手掛ける。沖縄事務所は老朽化したホテルを再生し運営もするSPICEMOTEL内。北中城村喜舎場1066  電話098-975-8090
https://www.a-crafts.co.jp/


リノベーション協議会とは 消費者が安心して既存住宅を選べる市場をつくり、既存住宅の流通を活性化させることを目的に、2009年7月に発足したリノベーション業界団体。全国1000社弱の企業等が参画し、優良なリノベーションの統一規格「適合リノベーション住宅(R住宅)」を定め、普及推進している。その年のリノベNo.1を表彰する「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」も年々注目が集まっている。https://www.renovation.or.jp

■6月までの記事はこちらから
 
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1854号・2021年7月16日紙面から掲載

この連載の記事

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2416

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る