上昇する沖縄の地価 相続税の工面に苦慮［相続計画始めよう！地主・家主の生前対策⑨］

上昇する沖縄の地価
相続税の工面に苦慮

家族がもめないための「幸せ相続計画」の普及・啓蒙をする全国幸せ相続計画ネットワーク。60を超える士業や企業が会員に名を連ねる。今回は9月15日に読谷村で開かれた特別講演会「軍用地相続 生前対策はじめの一歩」のダイジェスト最終回。弁護士の久保以明氏、税理士の野原雅彦氏、相続アドバイザーの亀島淳一氏による座談会などの様子を紹介する。

9月に開かれた特別講演会「軍用地相続 生前対策はじめの一歩」の第2部で行われた座談会兼質問コーナーの様子をご紹介します。

－相続税が上がっている？

野原　沖縄は代々の土地持ちが多いです。ただ土地を守りながら引き継いできただけなのに、時とともに沖縄の地価が上がっていて、いざ評価をするととんでもない額になっているケースも多く見られます（相続税も上がっている）。

－相続税が払えない事例も？

野原　傾向的に、うまくいかない事例は準備不足です。相続が発生してから10カ月以内に相続税を納めなければならないため、相続が起きてから慌てても遅く、本当は売りたくない財産を売ってしまうことにもなりかねません。

相続まで時間があればさまざまな対策も検討できます。

久保　もめた時に、現金がなく不動産だけ持っているケースが非常に多いです。お金と違って不動産は分けにくい。軍用地は分けやすい面もありますが、分筆して細分化すると価値が下がります。

軍用地以外に、実家やアパートなどを持っている場合も注意が必要です。例えば実家を長男が相続し、ほかのきょうだいにお金を渡す場合、そのお金がなく軍用地を売ってしまうというケースもあります。現金化しやすい軍用地は、時に買いたたかれながら失っていくのです。

－生前贈与の長短所は

野原　メリットは相続税対策。デメリットは税率の高さ。贈与税の税率は相続税より高いので、大きな財産を移す場合は向いていません。

また、いわゆる「名義預金」が相続時によくトラブルになります。税務調査によるトラブルの8割、9割を占めるのが「名義預金」です。贈与したつもりが贈与が成立しておらず、相続税対策として意味を成さなかったというケースも見られます。自己判断でやるのではなく専門家に相談することをお勧めします。

－認知症になる前の対策は？

久保　生前贈与にせよ何にせよ、体が弱ってきてからやるのは本当に良くありません。亡くなった後、相続人の間でトラブルになりやすいです。

亀島　相続という言葉にとらわれ過ぎず、財産を受け継いでから次の代に渡すまでの数十年の間、しっかり資産を管理して幸せに引き継ぐための準備をすることが大事です。

－家族信託とは？

久保　基本的には物を分けず、物から出てくる利益を分ける契約です。軍用地なら、名義は先に移して、お父さんが生きているうちはお父さんが地料をもらい、亡くなった後はきょうだいたちで地料を分けるというような契約をして、登記もきちんとします。アパートなどの収益物件にも当てはまります。アパートや軍用地などを持ってらっしゃる方には、役に立つ制度（契約）だと思います。

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2033号・2024年12月20日掲載