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2019年10月11日更新

家族の変化にも対応|(有)ロフト建築設計事務所

[お住まい拝見|1階はバリアフリー 2階は必要最小限]八重瀬町のK邸は、親の介護や子の独立を見据えた造りが特徴。1階は同居する母親のためバリアフリーで単純な動線に、2階は無駄を省き必要最小限の広さにした。上下階は吹き抜けでつながり、家中に光と風が巡る。

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LDKは最高5.7メートルある吹き抜けで開放感たっぷり。仏壇のある和室まで一体となる。2階廊下の手すりは収納を兼ねる。吹き抜けに張り出すように設けてデッドスペースを活用した


5メートル超 開放的な吹き抜け

Kさん宅
RC造/自由設計 家族5人

築40年余の家の建て替えを決めたKさんは、複数の建築士事務所によるコンペ形式で設計プランの提案をする団体に依頼。「吹き抜けを提案してくれた」建築士事務所のプランを選んだ。

Kさん宅は傾斜地にあり、側面道路より低い位置に建つ。以前の家は高い外塀や、空間が壁で細切れになっていたせいで暗かった。

「吹き抜けにすると2階の床面積は狭くなるけれど、明るさや風通しの良さを重視した。娘たちはやがて巣立つし、2階は必要最小限の広さでいい」と割り切った。



和室からLDKを見る。空間の縦ラインを強調する黄色い壁には、建て替え前の家の絵が飾られている。テレビ後ろの板張りの壁には、「家族写真をたくさん貼りたい」と夫人

1階のLDKは最高5.7メートルの吹き抜けと、南側の幅2.5メートルの掃き出し窓の効果で開放感たっぷり。LDKと、仏壇のある和室が一体となり人も集いやすい。「お盆に間に合うよう建ててもらった。集まった親戚は『広々していいね!』と言ってくれた」

夫人は「対面式のキッチンがうれしい。前はリビングから遠くて孤立していたけど、今はテレビを見ながら家事ができて楽しい」とにっこり。

母親の部屋はキッチンに隣接させ、間に扉を設けた。「いつでも母の様子が見られて安心」。介護を見据えて1階はバリアフリーで、母親の部屋からキッチン、洗面・脱衣所、浴室まで一直線に並ぶ。夫人は「家事動線も単純なので、使い勝手がいい」と喜ぶ。



キッチンから北に向かって洗面・脱衣所、浴室まで一直線に並ぶ。キッチンの南隣には母親の部屋があり、介護を見据えての動線。写真右側の掃き出し窓は物干し場に続く。夫人は「家事動線がコンパクトにまとまっているので、私も助かっている」と話す


手すり収納が「重宝」
2階はシンプル。個室は9畳と6畳の洋間のみ。9畳の洋間は二つに仕切ることもできるが、今は二人の娘が一つにして仲良く使っている。

2階の個室は必要最小限の広さにし、大きな収納は廊下に設けた。手すりを兼ねる収納は「たっぷり入り、出し入れもしやすいので重宝」と夫人。

2階のプライベートバルコニーも夫人のお気に入り。地形に合わせて傾斜した外壁が外からの視線をシャットアウトする。「椅子を出して、星空を楽しむのが至福のひと時」。

今の暮らしやすさはもちろん、将来の使い勝手まで熟慮されたKさん宅。リビングの壁が一部、板張りになっているのは「これから増えていくであろう家族の写真を貼りたい」。家造りには、想像力も必要不可欠だ。


2階の9畳の洋間は、二つに仕切ることもできるが今は二人の娘が一つにして共有して使っている。景色を生かして横長の窓を設けた。その上には吊り収納もある


2階の廊下にある手すりの下部には収納が設けられている。吹き抜けに張り出すようにして大き目に設けられており「たっぷり入って重宝」と夫人


ここがポイント
断面で収納を設け 建築規模を抑える
施主のKさんは建築系の仕事をしており「工事のことをよく知っており、合理性を重視した計画を希望していた」と設計したロフト建築設計事務所の一級建築士・前里敬さんは話す。

その希望から提案したのが吹き抜け。「娘さんたちは皆成人しているので、子ども部屋というより、夫婦で長く使える空間を造る方が良いと考え、2階が身近になるよう吹き抜けを設けた」。採光・通風の効率も良くなり、「将来、お孫さんが泊まりに来た時も、顔が見えて楽しいだろう」。

また、敷地西側にある既存塀は生かしつつ、その影響を少なくするために敷地の地盤面を約1メートル弱上げた。「そうすることで敷地全体が明るくなり、通風にも優れる。駐車もしやすくなる」と説明する。

ほかにも、コストを抑えるには建物規模が最も重要。そこで、単純に面積を増やすなど平面で収納を確保するのではなく、必要な空間を再考し、断面などを活用して設けようと考えた。

2階の手すりは収納機能を持たせ、廊下をウオークスルークローゼットとして活用する提案をした。吹き抜けに張り出すよう大きめに設けられた収納は施主からも好評だ。

天井は、各所に必要な高さを検討して勾配屋根にし、高い部分に居室や吊り棚を設けてスペースの合理化を図った。

2階をコンパクトにした分、1階の屋根を屋上テラスとしても活用。テラス周囲の外壁の高さを工夫し、「周りの視線が気にならないプライベートバルコニーを創出し、くつろげる空間を設けた」と話した。


傾斜地に建つKさん宅。写真左の塀は建て替え前からあるものを生かした。2階テラスの外壁は立地を考慮して斜めに設けられている。下からだけでなく上からの視線も防ぎつつ、景色は遮らない



階段下には広々とした収納がある。そこの採光や通風のために階段の蹴上げは隙間が空いている。だが、ごみは落ちないよう透明なプラスチック板でガードしている

[DATA]
家族構成:夫婦、母親、子ども2人
敷地面積:2117.58平方メートル(約65.64坪)
1階床面積:80.46平方メートル(約24.34坪)
2階床面積:40.21平方メートル(約12.16坪)
建ぺい率:42%(許容60%)
容 積 率:55.46%(許容200%)
用途地域:市街化調整区域
躯体構造:鉄筋コンクリート壁式構造
設  計:(有)ロフト建築設計事務所 前里敬、宮里夏季、下地一瞳



[問い合わせ先]
沖縄家作人(やーつくやー)ネット
本部 098-869-3313 http://www.8298net.jp

(有)ロフト建築設計事務所
098-858-1134  https://www.u-loft.net


撮影/比嘉秀明 編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1762号・2019年10月11日紙面から掲載

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この記事のキュレーター

スタッフ
東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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