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2021年5月21日更新

[沖縄・お住まい拝見]半屋内の中庭で開放感|ロカルウ

[気兼ねなく家族で過ごす家]
壁や屋根のある半屋内の中庭と吹き抜けで、明るく開放的なSさん宅。中庭は、光・風・天気といった外の様子も伝えてくれる。外から見える窓は少なく、気兼ねなく家族の時間が過ごせる。

ロカルウ,リビングダイニングは写真右の中庭と上部への吹き抜けで開放感たっぷり。「最近ソファを買ったら、よりピンポイントで家族が集まる場になった」と夫人。窓や扉などの建具に木をふんだんに使って柔らかい雰囲気を演出している
リビングダイニングは写真右の中庭と上部への吹き抜けで開放感たっぷり。「最近ソファを買ったら、よりピンポイントで家族が集まる場になった」と夫人。窓や扉などの建具に木をふんだんに使って柔らかい雰囲気を演出している


家族の気配に安らぐ

Sさん宅
 RC造/自由設計/家族4人 

「中庭があるプランにピンときた」とSさん。窓の少ない外壁で囲っていても、希望した明るく開放的な住まいを実現しているのは、南に設けた土間の中庭だ。光と風、天気が室内に伝わってくる。「外からは見られにくいので、夏場はプールを出してフル活用した」とうれしそう。カーテンを閉め切らずに過ごせ、伸び伸びとおうち時間を楽しんでいるようだ。

リビングダイニング(LD)とキッチンは中庭が見えるようにL字に配置。窓には木製の建具を使い、壁の白さと相まって柔らかくナチュラルな雰囲気を醸す。

LDは中庭と吹き抜けの効果で横にも縦にも広がりを感じる。座ると自然と2階に目が向くダイニングテーブルは、「家族がどこにいても気配が感じられる」と、夫婦の安らぎの場だ。子どもたちが個室のある2階に上がるのは寝る時だけ。「音が響くから、部屋にいても寝てるか起きてるか分かっちゃうんだけどね」という夫人は穏やかな笑みを見せる。

家づくりのため建築士事務所を訪ね歩いたのは、5年以上前。「小物や本、流れている曲などが格好良い。細かな所までセンスが感じられた」との事務所に依頼した。当初は別の土地で家づくりを進めていたが、通学路の暗さなど不安要素があって白紙に。夫人の実家近くで土地を購入し、再度依頼した。
 

ロカルウ,6.7帖の土間の中庭。屋根の一部を抜き、窓を設けたことで、視線は遮りつつ光・風・天気を感じることができる。雨が当たりにくいため、木製の建具でもメンテナンスしやすい。お手製のブランコは「長女にせがまれてつくったけど、今は僕が仕事の息抜きに使っている」と笑う
6.7帖の土間の中庭。屋根の一部を抜き、窓を設けたことで、視線は遮りつつ光・風・天気を感じることができる。雨が当たりにくいため、木製の建具でもメンテナンスしやすい。中央のブランコはSさんお手製。「長女にせがまれてつくったけど、今は僕が仕事の息抜きに使っている」と笑う
 

ロカルウ,階段や手すりの間から視界が抜けるようにして広がりを出した

階段や手すりの間から視界が抜けるようにして広がりを出した


モノ少なくても物置重宝

階段下と言えば物置だが、そこにあるのはSさんのDJブース。「初めは階段の踊り場においてステージのようにしていたんだけど…。最近は触っていないし、階段下にして良かった。今は仕事スペースにしている」と笑う。

一方、物置は2階に。建築士からの提案を取り入れ、「いらないかなと思ったけど、季節ものや書類、大きなモノもポイポイ入れられて重宝している」とSさん。片づけのしやすさを考え、モノを増やさないようにしているという家族。造作収納棚に全て収め、スッキリと暮らしている。

「最近買ったソファがみんなのお気に入り」と夫人。2階吹き抜けから、ソファに座る子どもたちを見下ろす。目を細めて笑うその表情には、安らぎと喜びが感じられた。
 

ロカルウ,洗面脱衣室は室内物干し場も兼ねる。写真背後に収納棚があり、ガス乾燥機で乾かした衣類を収める

洗面脱衣室は室内物干し場も兼ねる。写真背後に収納棚があり、ガス乾燥機で乾かした衣類を収める
 

ロカルウ,浴槽のない浴室は、広さ約1.5帖。坪庭があるため、掃き出し窓を設置でき、浴室床の湿気対策に

浴槽のない浴室は、広さ約1.5帖。坪庭があるため、掃き出し窓を設置でき、浴室床の湿気対策に


ロカルウ,広さ約4.6帖の子ども室。窓はすりガラスを使う。中学生の長男の部屋は、まるで新社会人が引っ越してきたばかりのようなスッキリ感で取材陣・建築士も驚いた
広さ約4.6帖の子ども室。窓はすりガラスを使う。中学生の長男の部屋は、まるで新社会人が引っ越してきたばかりのようなスッキリ感で取材陣・建築士も驚いた


ここがポイント
開口で程良く隠す・見せる

Sさん宅を設計した島袋巧さんは、「家で過ごす時間を大切にしている家族なので、外から生活を守ることが優先でした」と話す。隣家からプライバシーを守るため、外壁の窓は最小限。隣家の開口部を計測し、位置や大きさで窓がかぶらないようにもしている。

特に玄関は道路から直視されないよう設計。壁を彫り込み、アプローチからの動線を斜めにすることでドアを程良く隠した。玄関とLDは壁で仕切り、居室も見えないようにしている。

対して、室内は広がりのある空間に。横の広がりを強調する中庭は、屋根と壁を設けて「『外の一部? 内の延長?』という曖昧なポジションにしました」。それでも屋内に近い環境のため、「木製の建具でもメンテナンスの手間を抑えられます」。屋根・壁の一部を開けることで開放感も生み出し、室内に居ながら「日差し、雨、風といった天気や自然を感じられるようにしました」。

防犯性を考えて浴室・洗面脱衣室は2階に。「浴槽は必要ない、ガス乾燥機で衣類を乾かす」など、明確なスタイルに合わせてコンパクトに抑えた。浴室の坪庭は除湿効果に期待。「床面まで風を通す掃き出し窓が取れるので、ぬれた床もすぐ乾いちゃいます」

内装は木やコンクリートの質感を生かす。「プラスチック系の材とは違い、素材の良さがピークになるのは数十年先。経年で味わい深くなります」と話した。
 

ロカルウ隣家などからの視線を遮るため、窓は最小限。左の窓はメンテナンスのしやすさを考え、手の届きにくい上部ははめ殺し、下部を引き違い窓にしている
隣家などからの視線を遮るため、窓は最小限。左の窓はメンテナンスのしやすさを考え、手の届きにくい上部ははめ殺し、下部を引き違い窓にしている

ロカルウ,玄関ホールとLDは壁で仕切ってプライバシーを確保。白い壁が圧迫感を抑える
玄関ホールとLDは壁で仕切ってプライバシーを確保。白い壁が圧迫感を抑える

[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:172.45平方メートル(約52.2坪)
1階床面積:58.98平方メートル(約17.8坪)
2階床面積:49.71平方メートル(約15坪)
建ぺい率:43.32%(許容50%)
容積率:67.52%(許容100%)
用途地域:第一種低層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリートラーメン構造
設計:ロカルウ 島袋巧
構造:徳和設計室 稲福徳和
施工:(有)平良建設 渡久地政次
電気:(有)喜友名電気 喜友名盛久
水道:(有)ライフ工業 我喜屋奨
流し台・スチール造作:LITTAI metal works 仲地研二
植栽・窓まわり:HADANA 葉棚達也・葉棚由真

問い合わせ
 ロカルウ
 電話098・911・0521
 https://localoutkm.com/


撮影/矢嶋健吾 取材/川本莉菜子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1846号・2021年5月21日紙面から掲載

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