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2019年4月19日更新

絵とワインと集いと|(株)一級建築士事務所 斎

[お住まい拝見|都心の住宅街 階層で公私分け]都心の住宅街に立つMさん宅は「大勢がくつろげるように」と階層で公私を分けた3階建て。絵画やシャンデリアが映える広いLDKで、ワインパーティーを楽しむ。

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デッキから見た2階LDK。約32帖の大空間は、白を基調に絵やスワロフスキーの照明・置物でまとめられている。正面に見える収納の鏡面扉が、さらに部屋を広く見せる

 

こだわりを詰め込んで

Mさん宅
RC造/自由設計/家族4人


2階階段側から見たLDK。アイランドキッチンは幅4メートル余。写真左手の南側にデッキスペースを隣接させ、さらに広がりある空間に

来客を出迎えるのは白く明るい玄関。そこから階段を上った先に広がるLDKが、一家の生活の中心であり、Mさんが友人らをもてなす場だ。

アイランドキッチンは人工大理石のカウンターと一体になったオリジナル。「広く見えるように」と鏡面扉で統一した背面収納や、スワロフスキーの照明類、それらインテリアとの相性を考えて選んだ床の大判タイルまで、「まさにイメージ通り! お友だちからも『住宅じゃないみたい』と驚かれる」と喜ぶ。「ワインが好きなので、ママ友や模合仲間、主人のお友だちとワインパーティーを楽しむこともしょっちゅう。マンション住まいだった頃に比べると、大勢でもゆったり過ごせます」。

家族が過ごすのも2階が中心。「ここが一番見晴らしがいい」と笑うアイランドキッチンがMさんの定位置。キッチン裏手には水回りがまとまる。「浴室の天井に直接シャワーを取り付けたことで、子どもたちも自分で頭を洗えるようになりました」。新居は子どもの自立にも一役買っているようだ。

何でも言えるを重視

白を基調にした2階とは一変、3階のプライベート空間は、木やダークブラウンを取り入れ、落ち着いた雰囲気でまとめられている。

夫婦のベッドルームと子ども室を仕切る壁の両サイドに引き戸を設け、ほどよくつながりを持たせたのもMさんのアイデアだ。ホテルをイメージした水回り、バッグ類を立てて収納できるウオークインクローゼットまで、「雑誌の切り抜きを持ち込んだり写真を建築士に送ったり、何度もやり取りしながらイメージを形にしていった」。それができたのは「年も近く、話が合う建築士だったから」こそ。「実は依頼先探しは彼で4人目。この人なら何でも話せると思ったのが決め手」と、建築士選びはデザイン性と人柄も重視した。

引っ越して一カ月余。「画商と相談しながら選んだ」という念願の絵画が、空間に彩りを添える。玄関、階段、壁、テーブルまで、すべてがギャラリー。「何をどこに飾ろうか考えるだけで楽しい」とMさんは笑顔を見せた。


3階ベッドルームは、ダークブラウンと木、間接照明で温かみがあり落ち着ける空間に。ホテルのスイートルームをイメージし、傍らにはカウンターも設置した


ここがポイント
天空率で公私にゆとり

敷地は北に前面道路、東西には建物が立つ都市の住宅街の一角。南側だけ隣地より3メートルほど高く開けていたことから、「水回りを北に配置しプライバシーを確保。光と風は南から取り込むプランとした」と建築士の玉那覇昇一さん。

ポイントになったのは、Mさんが希望する「公私ともにゆとりのあるスペース」をいかに確保するか。まず、構造は大空間が取りやすいラーメン構造とし、集いの場となる2階のLDKは約32帖を実現。階高を上げて天井高は最大2メートル80センチを確保したほか、床に敷き詰めたタイルも600ミリ角の大判を採用した。「平面と高さのバランスはもちろん、空間のボリュームに合わせてタイル、照明、造り付け家具などインテリアも調整することで、体感的にも視覚的にも、広さを感じつつ落ち着ける空間となった」。タイルは大判ゆえの反りをなくすため、「施工時は目地にクリップを差し込み、くさびを打ってならすクリップ工法を用いた」。

2階階高を上げた分、そのままだと3階は道路斜線制限との兼ね合いで北面の一部を削らざるを得ない=立面赤部。そこで玉那覇さんは「空の見える割合から周辺建物の通風採光を確保する天空率を利用し制限を緩和」。ゆとりあるプライベート空間を実現した。



3階ウオークインクローゼット。ベッドルーム・子ども室まで回遊でき便利


2階のパウダールーム。間仕切り上部はガラスにし、明るさと広がりを確保


1階玄関。その先の階段までMさんが好きな花や絵画が飾られ、ちょっとしたギャラリーのような雰囲気


外観。道路斜線制限にかかる3階北側上部も、天空率を利用することで、削ったりセットバックさせずに済んだ





[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:194.38平方メートル(約58.8坪)
1階床面積:115.02平方メートル(約34.8坪)
2階床面積:109.34平方メートル(約33坪)
3階床面積:109.34平方メートル(約33坪)
建ぺい率:59.79%(許容60%)
容積率:137.34%(許容200%)
用途地域:第一種住居地域
躯体構造:鉄筋コンクリート造ラーメン構造
設  計:(株)一級建築士事務所 斎 玉那覇昇一
施  工:(有)匠建
電  気:喜友名電気
水  道:(有)ライフ工業
キッチン:(有)モブ



[問い合わせ先]
(株)一級建築士事務所 斎
098・996・3512
http://www.atelier-sai.net/


撮影/比嘉秀明 編集/徳正美
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1737号・2019年4月19日紙面から掲載

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