お住まい拝見
2016年4月1日更新
自立支える全面改装|(有)ラムハウジング
築42年、鉄筋コンクリート造2階建ての自宅を2世帯住宅にリフォームしたUさん一家。1階は、歩行器で移動するUさん(79)の自立と、介護を念頭に改装した。
築42年、スムーズな移動が肝
Uさん宅 RC造/築42年/家族2人段差なくつながり、ひと続きで使えるLDKと和室。リフォーム前=下写真=は壁に沿ってL字型になっていたキッチンを対面式に変え、和室や奥にある水回りとの段差も解消した。
リフォーム前
動線短く、行動も活発に
玄関を入ると木の香りが漂うUさん宅は、築42年の鉄筋コンクリート造2階建て。長男一家が一緒に暮らすことになり、2年ほど前に2世帯住宅へリフォームした。内階段をなくし、2階には新たに設けた外階段から出入りする完全分離型。1階にUさんと三女(54)、2階には長男一家4人が暮らす。
10年ほど前から病のため足に痛みを抱えるUさんは、日常的につえや歩行器を使って歩く。1階はUさんができるだけ自分の力で日常生活が送れること、将来の介護のしやすさを重視してリフォームした。
玄関から幅の広い廊下を抜け、LDK、トイレまで一直線。Uさんの部屋とトイレ、浴室も横並びにあるため、短い距離でスムーズに移動できる。「夫の介護経験から、段差の解消は絶対条件でした」とUさん。LDKと和室、水回りの段差をなくした上で、孫たちも集いやすいようキッチンを壁付けから対面式に変えた。三女は「和室まで一体的に使え、段差もないので掃除が楽になりました」とニッコリ。
2間続きだった和室は、玄関に近い側を洋室に変え、三女の部屋に。間仕切りに使っているのは既製のテレビボード。三女のアイデアだ。「ボードを寄せれば和室が広く使えます。欄間がないからか、畳数は前と変わらないのに広く感じます」。テレビの隣の棚にはミシンが納められていて、Uさんが裁縫を楽しむ。
体に優しい健康素材
リフォームでは、「体に優しい建材を使いたい」と、健康素材を用いた家づくり、ケアリフォーム=(※)を手掛ける旧知の会社に依頼。工事は、Uさんが足の手術で入院する時期に合わせて行った。手すりは、以前から使っていた物を再利用。Uさんのリハビリを担当する理学療法士も一緒になって、取り付ける場所や角度、高さを決めた。
リフォーム後、孫たちもよく遊びに来て、「母の行動も活発に。日常生活で動くことが一番のリハビリになると思う」と三女。つえ代わりにモップを握って掃除をしたり、食事の支度も。Uさんは、「できるだけ長く自分の足で歩きたい。孫との会話に慰められてます」と笑顔を見せた。
(※)ケアリフォームとは、高齢者や障がいのある人が、住み慣れた家でできるだけ自立した生活ができるよう配慮し、家族の介護負担も軽減できるように室内環境を整備すること
キッチン側から和室を見る。和室とは段差がなく、一体的に使える。中央奥のテレビボードが和室とその奥にある洋室の間仕切りになっている
リフォーム前 和室は2間続きの和室、左手はLDK(改装前の写真はラムハウジング提供)
出入り口は幅約90センチで、歩行器での移動もスムーズ。手前がUさんの部屋、奥は浴室
キッチン。壁際の収納との間は90センチあるため歩行器でも無理なく通れ、2人以上でもスムーズに動ける。元々あった高窓=右手=を生かし、明るさも確保
玄関のあがりかまちまでの高さは約30センチ。湿気の問題から床高を下げることができなかったため、1段ステップを設けて上り下りしやすくした
ここがポイント
水回りは居室近くに
以前も便器前にスペースがあったため、介助はできたが、出入り口には段差があった=左写真。リフォーム後は板張りの乾式に。歩行器や車イスでの移乗も楽にできるよう便器の前、横にスペースを設けた。Uさんは現在、手すりを握って便器まで移動している
リフォーム前
以前の浴室は、タイル張りで脱衣場も一緒だった=下写真。寒さによるヒートショックを防ぐため、タイルより暖かなユニットバスに変えた
リフォーム前
外観。外壁塗装を施し、見た目も耐久性もアップ。元々はブロック塀で囲まれていたが、緊急時には玄関前に車が横付けできるようにと土間にした。2階へ上る外階段=右手=は、上り口を1階の和室の前に設けた。室内から人の出入りが見えるようにして、家族のコミュニケーションと防犯につなげている
コンクリート強度も要
Uさん宅40年以上が経過したUさん宅のリフォームでは、躯体のコンクリート強度が十分にあるかが第一のカギになった。リフォームを手掛けたラムハウジングの川上優さんは、専門会社に強度判定を依頼。柱や梁、スラブなどを確認したところ20年~30年は問題ないとの結果が出た。「ひび割れなどが見られる部分は補修。外壁を塗り直し、1階スラブと屋上には防水塗装を施しました」と説明する。室内はバリアフリー仕様。出入り口はすべて引き戸にし、歩行器や車イスでも動きやすいよう、廊下や出入り口の幅、キッチンの奥行きは90㌢ほど確保した。
「介護に関わるリフォームで最も大切なのは、介護される人の部屋と水回りが近いこと=上写真。介護する側、される側、どちらにも使い勝手がいい」と川上さん。Uさん宅は元々、Uさんの部屋とトイレ、浴室が横並びになっていたため間取りを大きく変える必要はなかったが、部屋の隣にあった押入れと廊下をなくすことで、トイレと浴室を拡張できた。
[DATA]
家族構成:母、娘(1階)
夫婦、子ども2人(2階)
施工面積:1階 77.18㎡(約23.3坪)
2階 126.61㎡(約22.5坪)
躯体構造:鉄筋コンクリート造壁式構造
築年数:42年
工 期:約3カ月
設計・施工:(有)ラムハウジング
川上優、川上晃奈
[設計・問い合わせ先]
(有)ラムハウジング
098・936・8808
http://www.lamb‐h.com
写真/比嘉秀明撮影
編集/比嘉千賀子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1578号・2016年4月1日紙面から掲載
この記事のキュレーター
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編集者
住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。