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お住まい拝見

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2019年1月11日更新

19坪でアレンジ自在|株式会社琉球住樂

[お住まい拝見 退職後に建てた終(つい)のすみか]夫婦それぞれの趣味を楽しむため、退職後に木造住宅を建てたHさん(67)。仕切り戸を開ければ部屋がすべてつながる19坪の平屋は、暮らしに合わせて変化も自在だ。


1階のLDK。間仕切りの障子は開け放って、洋室を一体的に使う。無垢(むく)の木と漆喰(しっくい)の壁を生かした空間は、天井板を張っていないため風も気配も家中に届く


趣味満喫しシンプルに

Hさん宅
木造/自由設計/家族2人
なだらかな傾斜の芝庭の奥に建つ木造の平屋。庭先では、夫人手作りのシーサーがお出迎え。アマハジに設けたポーチではHさんがDIYや読書を楽しみ、室内では夫人(66)が機織りにいそしむ。「以前はマンション住まいで、機織りもDIYも音が響くからできなくて。気兼ねなく好きなことができる家がほしいと思うようになりました」と夫人。

軒の深いポーチは、HさんがDIYを楽しむスペース。道具棚や水栓も用意されている。キャスター付きのデスクやイスはHさんの手作り



鉢植えが並ぶ庭先には、夫人が手作りしたシーサーが鎮座する
 

室内は段差がなく、庭に面した南側にLDKを設け、その奥の廊下を挟んだ西側に水回り、東側に洋室とウオークインクローゼットがまとまる。「夫婦2人で暮らすにはちょうどいい広さ。お掃除も楽」

2室ある洋室の間にはウオークインクローゼットがあり、両側の引き戸を開けるとLDKまでひと続きになる。Hさんは「普段、戸は開けっ放しで、風通しよく過ごしています。建材が天然素材で、家の中に湿気もたまらないから、ホコリアレルギーの私も気持ちよく暮らせる」と喜ぶ。


北側の洋室からリビングダイニングを見る。ウオークインクローゼットの引き戸を開け放つと、すべての部屋がつながる


介護見据えた水回り

沖縄市の静かな住宅地に土地を購入したのは7年前。「近くに姉が暮らしていて、よく行き来しています」と夫人。

設計は、退職後に通い始めた機織り工房の近くで見かけて気に入った、木造住宅を手がけた建築士事務所に依頼した。「家主さんに家を見せてもらってコンクリート造より快適だと聞き、すぐに建築士事務所へ相談に行きました」

水回りにはHさんの入院経験を反映。寝室とトイレやシャワーが近いだけでなく、洗面室は4畳半と広々。「介護が必要になった時はベッドを置いて、部屋として使うことができる。病院の個室のイメージです」とHさん。最期まで安心して過ごせる住まいで、愛着ある物に囲まれたシンプルな暮らしを満喫している。


4畳半と広くスペースを取った洗面室。普段は物干し、アイロンスペースとしても活用する。写真右手がシャワー室とトイレ。床はコルクタイルだ


北側の洋室。水回りに近く、寝室として使っている



ここがポイント
障子で仕切り多用途に

60代の夫婦の暮らしやすさを考え、設計者の伊良皆盛栄さんが気を配ったのは、①バリアフリー②広い水回り③変化に対応しやすい造りだ。

敷地は南側に前面道路があり、プライバシーを確保しつつLDKから庭と向かいにある公園の緑が楽しめるよう、建物を道路より高い位置に据えた。庭の一角にスロープを設けることで、車イスでも出入りしやすい環境に。室内は玄関まで床と段差なくフラットにした。

​玄関(写真右手)は床と段差がなく、室内と一体化。Hさん愛用の自転車を置いても圧迫感はない



外観。ガルバリウム鋼板ぶきの屋根、焼き杉板の外壁でシックなたたずまい。芝庭は前面道路からなだからな傾斜になっている

②で印象的なのは、4畳半ある洗面室。普段は洗濯物を干し、介護時にはベッドを入れて個室として活用する。トイレ・浴室には、冷たさがなく、足当たりの柔らかいコルクタイルを採用した。

③では、洋室やウオークインクローゼットの間仕切りを障子と引き戸にすることで、開け放てばLDKまでがひと続きに使える。「家族構成やライフサイクルに合わせて自在に仕切り方を変えられる。将来の資産価値を高めた住宅です」と伊良皆さん。

室内は健康的な温湿度で安定しやすいよう配慮。外張断熱工法で屋根と壁、そして基礎にも断熱材を入れ、すべての開口部を樹脂サッシとLow-Eペアガラスにすることで、外気の影響を受けにくいようにした。

また床下は自然換気口を設けず、室内の空気を床下に取り込んで換気扇から排気するように計画。「床下まで部屋と同じ温湿度が保て、シロアリの侵入も防げます」

アマハジ(軒)が深いため、暗くなりがちな建物中央部にはスカイライトチューブを設置。効率よく自然光を取り込めるようにした。


仕上げ兼用の野地板で開放的。中央の電気のように見えるのが太陽光照明システム「スカイライトチューブ」で、室内に光を取り込む
 

壁や引き戸の漆喰(しっくい)には、職人がコテで模様をあしらった


[DATA]
家 族 構 成:夫婦
敷 地 面 積:199.43平方メートル(約60.33坪)
1階床面積:64.66平方メートル(約19.56坪)
建 ぺ い 率:38.32%(許容60%)
容 積 率:32.43%(許容200%)
用 途 地 域:第一種高層住宅専用地域
躯 体 構 造:木造
設         計:琉球住樂一級建築士事務所 伊良皆盛栄
施   工:(株)琉球住樂
大   工:内部/真内装
      外部/金城工業
電   気:テルヤ電業
水   道:(有)海西工業
左   官:仲松左官
木 製 建 具:照屋木工所
外 部 建 具:(株)エクセルシャノン


[問い合わせ先]
株式会社琉球住樂
098‐852‐6936
http://10raku.co.jp
 


撮影/矢嶋健吾 取材/比嘉千賀子(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1723号・2019年1月11日紙面から掲載

この記事のキュレーター

キュレーター
比嘉千賀子

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編集者
住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。

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