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2018年4月6日更新

役割違う箱の集合体|(株)建築工房 亥

[お住まい拝見・最大15メートルの距離が一直線]読谷村のSさん(40)宅は、LDKや玄関など役割の異なる箱を連ねたような鉄筋コンクリート造平屋建て。奥行きが最大15メートルにもなる大空間で家族3人が伸び伸び暮らす。

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ロフトから竹林の影

Sさん宅
RC造/自由設計/家族3人

箱を組み合わせたような外観。それぞれ塗装の色や仕上げ方が異なる。左下にあるのは、着色材などを混ぜたセメントを突き固めていく、版築(はんちく)工法で作った門壁。デザインはこの土地の地層をイメージしている

いくつもの箱を組み合わせたようなデザインが印象的なSさん宅。箱はそれぞれ、玄関や寝室、和室など役割の異なる部屋になっている。

中央のひときわ大きな箱はLDK。内部は、奥行き9メートル、幅4メートル、天井高4メートルの大空間が広がり、長女(1)が得意のハイハイで動き回る。寝室や子ども室につながる納戸を開ければ、15メートル以上の距離が一直線につながるので、「娘もうれしそう。私も一緒によく歩くようになりました」とSさんはほほ笑む。

上を向けば、たっぷりと光を取り込む高窓。その対面には、天井近くの空間を半分ほども占める広いロフトが生活空間を見下ろす。夫人(43)は「夜にロフトのライトだけをつけると、天井や壁に鉄柵の影が浮かんで竹林のよう。それを眺めながら過ごすティータイムが至福のひととき」と幻想的な雰囲気を楽しむ。


LDK。北側を見ると、幅いっぱいに広がるロフトが目を引く。Sさんは「空間にゆとりがあることで気持ちにも余裕が出るので、できるだけ物は置かないようにしている。将来的に娘が秘密基地などにして遊んでくれるかな」


LDK前の広いデッキテラスで日なたぼっこをするSさん家族
 

あちこちに飾り棚

約2年前、実家の土地の一部を借り受けた夫妻は家づくりに際し、まず要望をノートにまとめた。「老後を見据えて平屋」「仕切らず広々した空間(いずれ仕切れたらグッド)」「収納多め」「プライベート空間の確保」など、その数は20項目以上にも及ぶ。

依頼先選びでは、沖縄の建築士や手掛けた住宅が紹介された本を活用。それぞれ好みの建築士ベスト3を選んだところ、「2人とも同じ人が1番だったので、すぐに決まりました」と夫婦。建築士からの提案には、要望がみんな取り入れられており、「そのまま設計をお願いしました」。

完成した住まいのあちらこちらには、家族写真や人形などを置いた飾り棚が目に付く。もちろん、これもノートに書かれた要望の一つだ。

「娘が初めて書いた絵などもたくさん飾っていきたい」と夫人。今はまだ隙間の多い棚だが、娘や家族の成長に合わせて、さまざまな彩りがこれからどんどん増えていくのだろう。


ここがポイント
箱の仕上げに変化 平屋に多様な表情

Sさん宅は、南に実家、東に姉家族の住宅があったため、配置計画からスタート。各建物の間に共有の庭を設けながら、Sさん宅の大きさを検討していった。建築士の伊佐強さんは「十分な面積が確保できそうだったので、要望どおりの平屋でプランを考えた」と振り返る。

もう一人の担当建築士である宮城美智雄さんは「用途が異なる箱を、大きさや塗装の色、仕上げ方などにより変化を持たせ組み合わせることで、単調になりがちな平屋でも多様な表情を与えられた」。アプローチは杉の型枠を使った木目、外壁は箱によってポコポコした玉のような模様が出る吹き付けタイルの複層仕上げにしたり、型枠の線を際立たせたりしているという。


ほの暗いアプローチ。中央の水色は何層も積み重ねたガラスの色

内装も、LDKや和室がある西側のパブリック空間は白、納戸や寝室といった東側のプライベート空間はグレーを基調とし、東西で分けた公私の空間の印象にも変化をつけた。公私が接する部分にはキッチンを設け、夫人が作業しながら両側の様子を確認できる。


納戸。左はオープンなクローゼット、奥は書斎スペースにもなっている。床に張られたシートはビニールを織り込んだ造りで畳のような感触


畳間は戸を閉め切ることができ、県外から訪れた夫人の両親などが泊まる際に客間としても使える。小上がり部分は、引き出し式の収納になっている

スペースを有効活用するため、部屋同士を隣接させて廊下をなくしただけでなく、「室内側に出る梁(はり)や柱の凹凸が目立たないように、飾り棚のスペースとして活用した」と伊佐さん。その結果、室内は凹凸の少ないスッキリした印象になっている。

LDKの南側にある大開口をはじめ、窓を多く設けて光と風を取り込めるようにしたほか、水回りをまとめるなど家事動線にも配慮した。


LDKの南側は、2カ所ある4枚戸の大開口で開放的。窓の外に見える実家との間には、共有の庭を設ける予定


玄関。正面の坪庭まで視線が抜け、実際の面積よりも広く感じる


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども1人
敷地面積:373平方メートル(約112坪)
1階床面積:120.2平方メートル(約36.36坪)
建ぺい率 :37.85%(許容60%)
容 積 率:32.23%(許容200%)
用途地域 :未指定区域
躯体構造 :鉄筋コンクリート造ラーメン構造
設  計 :(株)建築工房 亥 伊佐強、宮城美智雄
構  造 :同上
施  工 :(有)仲真組 仲真憲和、宮城正和、上原豊久
電  気 :屋宜電気工事 屋宜宗春
水  道 :(有)ライフ工業 高山佳晃
キッチン・カーテン:(有)ファイン 比嘉美奈子


[問い合わせ先]
(株)建築工房 亥
098-898-0390
https://www.gai-okinawa.com/


撮影/高野生優(フォトアートたかの) 編集/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1682号・2018年4月6日紙面から掲載

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出嶋佳祐

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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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