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2018年2月23日更新

借景と空眺めのびやか|コバヤシ401.Design room

[お住まい拝見・都心の密集地 3方に住宅近接]3方を建物に囲まれ、開けているのは道路のある北側だけ。開放感とは無縁に思える都心の一角で、風に揺れるヤシや青空を眺めるのびやかな住まいが実現した。カギは「隙間の活用」だ。

東西・階層で公私分け

Gさん宅
RC造/自由設計/家族6人

四角い筒状の箱が浮いているような外観が目を引くGさん宅。家造りの始まりは、とあるコンペで「意外なプラン」を提案されたこと。「玄関が1階の真ん中にあったんですよね。なんで? と思ったけど、上の住居との兼ね合いを考えるとコレしかないと。ありがちな提案じゃない点も気に入って依頼した」とGさん。

完成したのは鉄筋コンクリート造の3階建て。1階は家族が多いGさんたっての希望もあり「10台は止められる」という駐車場がメイン。その真ん中に、たっぷりの収納を併設した玄関がある。そこから階段を上った先が住居だ。2・3階を貫く吹き抜けのリビングを軸に、西側はテラスや開口のあるオープンな空間とし集合住宅のある東側はクローズ。2階はLDKと寝室、3階に個室と水回りをまとめるなど、東西、階で公私を分けた。

印象的なのは、天井高最大6.7メートルの吹き抜けのリビング。「天井が高く、明るくて気持ちいい!」と夫妻。それを可能にしたのが、南側の住宅2軒の間に空いている「隙間」だ。リビングはその隙間の延長線上にあるため視界が抜け、窓外には空が広がり、都心の密集地であることを忘れてしまうほど。テラス越しに見えるのは風で揺れる隣家のヤシ。「うちの緑みたいでしょ」と満足げだ。


2・3階を貫く吹き抜けのリビング。天井高は最大6.7メートル。大窓からは隣家のヤシや青空が見え、都心の住宅密集地とは思えないほど開放的

キッチン側から見たリビング。階段横につるしたハンモックは四男の指定席だ。帰宅した子どもたちが階段を上がって自室に行く様子も分かる
 

洗濯はすべて3階で

家事動線を考えると通常、LDKと水回りは近くにまとめることが多いが、「防犯上、2階に主寝室を配置」したことから水回りは3階になった。「不便かなとも思ったけど、洗濯し干して取り込み収納するまで同じ階で済むので、かえって便利」と夫人。「生活感の出やすい洗濯物類がリビングから見えないのもいい」とくつろいだ表情を見せる。

普段は「全てが見渡せる」キッチンが夫人の居場所。「朝はお弁当を作りながら下から子どもたちに声をかけられるし、配膳するテーブルも目の前。収納もたっぷりあるから、雑多なものも片付けやすい」と喜ぶ。

近くのアパートに住んでいた以前は物であふれかえっていたが「今はすっきり!」。親せきを招いてバーベキューしたり、Gさんが野球仲間と飲んだり。伸び伸びと暮らしを楽しんでいる。


3階の水回り。右手は洗面室と浴室、正面はアイロンがけなどに便利なカウンター、左手奥は物干しテラスになっている。梅雨時は室内干しもできる


ここがポイント
都心の隙間から風と抜け

Gさん宅を建てるにあたり、建築士の小林進一さんが着目したのは、南側住宅2軒の間を抜ける「隙間」だ。「その隙間を軸線にリビングなどパブリック空間を配置することで、住宅内部にも抜けができ、視界が広がるだけでなく光や風の通り道も確保。隣家の緑も取り込んだ」と説明する。リビングの南北に設けた二つのテラスもポイント。「大窓はテラスに向けて設けることで、都市部で気になる視線や直射日光を遮ることが可能。加えて北側のテラスは、細長い住宅内に光や風を取り込みやすくし、和室との緩衝空間としての役割も果たす」と説明する。

こうして1階に設けたピロティも含め、Gさん宅に生まれた南北の「抜け」はそのまま、住宅がひしめく街並みの「抜け」に。「高密度で圧迫感を感じやすい都市に光や風を通し、ゆとりを生み出す」ことにもつながった。

居室は、LDKを広く取った分、3階の子ども室は必要最小限としたが、廊下側の間仕切り上をガラスにして視線を抜くことで狭さを払しょく。子どもの成長や家族のライフスタイルの変化にも対応できるよう、引き戸の開閉で1部屋にも3部屋にもできる造りとなっている。さらに階段は1階から2階と、2階から3階へはあえて分離。LDKにいる夫婦から子どもたちの行き来が分かるようにすると同時に、2階から3階への階段は、花を飾ったり腰かけたり、空間のアクセントにもなるなど、多用途に使える階段となった。



北側の通りから見た外観。1階は天井を逆梁(ぎゃくばり)にしスッキリと仕上げられている。


2階の寝室からリビングを見る。リビングからも寝室からも互いの様子が気になり過ぎないようテラスが程良い緩衝空間に。Gさんの野球仲間が訪ねてきた際は、階段側の引き戸を閉じれば独立した客間代わりになる。


子ども室。現在、手前2部屋はつなげ、最奥は引き戸を閉じて個室として使用中。



南に隣接する住宅2軒の「隙間」=黄部=を生かし、都市の住宅密集地ながら視線を抜いて開放感を演出=赤線。風も取り込んでいる=青線。


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども4人
敷地面積:200.46平方メートル(約60坪)
1階床面積:13.54平方メートル(約4坪)
2階床面積:72.76平方メートル(約22坪)
3階床面積:50.68平方メートル(約15坪)
建ぺい率 :47%(許容60%)
容 積 率:95.5%(許容200%)
用途地域 :第二種中高層住居専用地域
躯体構造 :鉄筋コンクリート造ラーメン構造
設  計 :コバヤシ401.Design room  小林進一
構  造 :パス建築研究室
施  工 :米元建設工業㈱
電  気 :(株)八起電設
水  道 :(株)ライフ工業



[問い合わせ先]
コバヤシ401.Design room
03-5499-5279
http://kobayashi401.com/


撮影/泉公(ララフィルム) 編集/徳正美
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1677号・2018年2月23日紙面から掲載

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