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2022年3月25日更新

[沖縄・お住まい拝見]RC造でもZEH仕様に|(株)宮里住宅社

[必要最低限の夏特化型]建築・型枠工事などを手掛ける会社に勤める宮里新太さん(38)は2017年に鉄筋コンクリート造の自邸を建築。断熱は屋根側だけに絞るなど、必要最低限の対応でZEH(ゼッチ)基準をクリアした。夏に涼しい住まいで家族5人が快適に過ごす。

フクギに囲まれた宮里さん宅の外観。手前の車庫だけでなく、奥の住宅の屋上も全面に太陽光パネルが載っている
フクギに囲まれた宮里さん宅の外観。手前の車庫だけでなく、奥の住宅の屋上も全面に太陽光パネルが載っている


売電収益でローン返済

宮里さん宅
RC造|自由設計|家族5人

フクギに囲まれた宮里さん宅は、屋根全体を覆うように太陽光パネルが載っている。「なるべく多く売電の収益を出そうとしたもので、住宅ローンもそれでまかなっている」と宮里さん。6年ほど前、実家の隣の土地を購入し、自邸のプランを考え始めた時から、家造りにかかる初期費用より住んでからのランニングコストを重視していたという。その上で使える補助金がないか調べていたところ、ZEH(ゼッチ)にたどり着いた。

しかし、当時はZEH自体が普及し始めたばかり。独学で勉強する中で鉄筋コンクリート(RC)造はZEHに不向きだと分かったが、自身が(株)宮里住宅社で型枠工事をしていたこともありRC造にこだわった。

「沖縄では、熱の逃げにくさを示すUA値の基準はなく、夏の日射熱の入りにくさを示すη(イータ)AC値の基準をクリアすればよかった。涼しい家にしたかったので目的にも合っていた」。ZEH基準を満たすための断熱は屋根側だけに絞るなど試行錯誤しながら自邸プランのベースを考え、図面の作成や構造計算などは建築士に依頼した。

そうしてできた住まいは、「夏場でもリビングのクーラー1台で家全体が涼しい」と宮里さん。「UA値やηAC値の計算はとても大変だったけれど、やってよかった」と話す。


ZEHとは
Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略。断熱性、省エネ性を高めつつ、太陽光発電などによる創エネで、年間の一次消費エネルギー収支が正味ゼロ以下になる住宅のこと。認定条件の一つである「UA値」「ηAC値」はいずれも断熱性能を表す数字で、低いほど断熱性が高いとされ、省エネ住宅を表す指標になっている。
 

屋根に載った太陽光パネル。産業用で30キロワットの出力がある。発電した電力を自宅で使い、余剰分を売電している
屋根に載った太陽光パネル。産業用で30キロワットの出力がある。発電した電力を自宅で使い、余剰分を売電している

 

間取りも効率良く

室内は、約24帖の広々としたLDKがあり、隣接する和室とは一体化できる造りになっている。夫人(38)は「家族5人が同じ空間にいても窮屈に感じない。だからみんなで何かをする時はもちろん、次男(0)が眠っている隣で長女(11)が読書したり、長男(5)がゲームするのも、それぞれの部屋ではなくLDKです」。空間を共有しながら好きなことを自由に楽しめる広さを気に入っている。

そんなLDKの一角には家事スペースがある。他の部分よりも45センチほど高くなっているため「在宅での仕事に集中できる。LDKを見渡せるので家族の様子も分かる」と夫人。

LDKの奥はプライベート空間。子ども室と水回りに挟まれた寝室には出入り口が2カ所ある。宮里さんは「子ども室からトイレ、キッチンからウオークインクローゼットなど、どこに行くにも動線が短くて済む」。

エネルギーだけでなく、空間の使い方や動線計画という面でも、効率のいい住まいだ。

広々としたLDK。将来を見据えてバリアフリーを意識しており、床は家全体がフラット。子どもたちが走り回ってもつまずきにくいという
広々としたLDK。将来を見据えてバリアフリーを意識しており、床は家全体がフラット。子どもたちが走り回ってもつまずきにくいという

和室。戸を開け放てば、LDKと一体化させて使える
和室。戸を開け放てば、LDKと一体化させて使える


ここがポイント
梁断熱し性能アップ

一般的に木造より断熱性能に劣るRC造でZEH基準を満たすには費用がかかってしまう。そこで宮里新太さんは「最も熱の影響を受ける屋根側を集中して断熱。天井だけでなく梁(はり)にも断熱材を施すことで屋根側全体の断熱性能を高めた」。窓回りもサッシは一般的なアルミだが、熱反射ガラスや空気層のある断熱ブラインドを使うなど、基準を満たす必要最低限の造りに。給湯設備にはエコキュートを採用し、省エネに配慮しながらランニングコストを抑えることにもつなげた。

「屋上の太陽光パネルの日陰で上からの熱の影響はほとんどない」のに加え、深い軒や周囲のフクギは直射日光を軽減する。宮里さんは「夏特化型の住宅。その分、冬は寒い。計算上、壁や床、基礎部分を断熱しなくてもZEHの基準を満たしていたので省いたが、床と基礎は断熱しておけばよかった」と話す。

間取りは、将来置く予定の仏壇の場所を南向けに設けるところから考え始めた。仏壇の前には畳間を設け、そこと一体化できるLDK、その奥に寝室などのプライベート空間を配置。公私の空間を明確に分けた。

将来を見据えた工夫も。例えば子ども室は、現在2部屋に分けているが、子どもが巣立った後に1部屋として使えるよう、間仕切りは可動式に。引き戸は床にレールがないつり下げ式にして全面フラットにしたほか、車いすが通れるように通路や戸の幅も75センチ以上を確保した。
 

家事スペース。夫人が在宅で仕事をするときなどに使う。他の部分より高く、囲まれているため「集中できる」と夫人

家事スペース。夫人が在宅で仕事をするときなどに使う。他の部分より高く、囲まれているため「集中できる」と夫人

 

ダイニングとキッチン。食べ物の上にほこりが落ちないように、照明はつり下げ式ではなくダウンライトを採用している。右手の棚の後ろに家事スペースがある

ダイニングとキッチン。食べ物の上にほこりが落ちないように、照明はつり下げ式ではなくダウンライトを採用している。右手の棚の後ろに家事スペースがある
 

キッチン。「IHコンロはフラットなので、コンロ部分まで含めて作業台として広く使えるのがいい」と夫人

キッチン。「IHコンロはフラットなので、コンロ部分まで含めて作業台として広く使えるのがいい」と夫人
 

水回り。右手のトイレの扉に折れ戸を採用したことで、戸を開け放していても、左手の脱衣室に出入りできる

水回り。右手のトイレの扉に折れ戸を採用したことで、戸を開け放していても、左手の脱衣室に出入りできる
 

子ども室。写真左手は取り外し可能な間仕切り壁ともなっており、仕切りを外せば隣の部屋とつなげて使える

子ども室。写真左手は取り外し可能な間仕切り壁ともなっており、仕切りを外せば隣の部屋とつなげて使える
 

住宅部分の外観。深い軒が夏場の直射日光を遮る

住宅部分の外観。深い軒が夏場の直射日光を遮る
 

水回り側の出入り口から見た寝室。左手の戸を開けると廊下があり、水回りから通り抜けられる。宮里さんは「回遊性のある造りが気に入っている」

水回り側の出入り口から見た寝室。左手の戸を開けると廊下があり、水回りから通り抜けられる。宮里さんは「回遊性のある造りが気に入っている」

 


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども3人
敷地面積:727.38平方メートル(約219坪)
1階床面積:125.25平方メートル(約37.8坪)
建ぺい率:26.94%(許容60%)
容積率:17.21%(許容100%)
用途地域:都市計画区域内(区域区分非設定)
躯体構造:鉄筋コンクリート造
設計:(株)宮里住宅社 宮里新太
   比嘉設計 比嘉良昭
構造:比嘉設計 比嘉良昭
施工:(株)宮里住宅社
電気・水道:(有)丸良電建工業
完成:2017年1月
UA値:1.7
ηAC値:2.7
建築物省エネルギー性能表示BELS:★★★★★

問い合わせ
 (株)宮里住宅社
 電話0980・48・3646
 https://www.okinawakenchiku-miyazato.com/


撮影/比嘉秀明 取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1890号・2022年3月25日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
出嶋佳祐

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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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