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2018年2月2日更新

路地が巡る家|ファイブディメンジョン一級建築士事務所

[お住まい拝見・ガラスや吹き抜けで家中をつなぐ]那覇市のMさん(47)宅は、2階の居住空間までの動線がまるで路地を巡るように計画されている。ガラスや吹き抜けで、家中が空間的にも視覚的にもつながり、1階で焼くパンの香りも広がる。

パン焼く香り 隅々まで

Mさん宅
RC造/自由設計/家族2人

くねくねと入り組んだ昔ながらの路地が残る、那覇市内の住宅街。その一角に建つMさん宅の玄関を開けると、扉の奥にも路地の続きが真っすぐ延びる。右は和室、左は車庫に面し、視線を上げれば、ガラスが張られた天井から2階リビングの明かりがこぼれ落ちてくる。「中とも外ともつかない空間。腰掛けて話せる和室は、ちょっとした来客時などにちょうどいい」とMさん。
路地の先で靴を脱ぎ、階段から2階リビングへ上ると、3方を囲む大きな窓から光が差し込む。「床や壁にいろいろな形の影が伸び、家の表情が豊か」。
天井部分は、ロフトや階段、1階洗面室とも吹き抜けでつながる。縦横に空間が広がり開放的なだけでなく、家全体が一体化しているよう。
そのため、1階のパン教室を予定しているスペースで毎朝、夫人(46)が趣味のパン作りをしていると、家中がパンを焼く香りに包まれる。夫人は「ここ何年かは市販のパンを購入しておらず、朝食はもっぱら手作りパン」と焼きたてのものを食卓に並べる。


玄関ドアを開けたところにある中路地。天井は2階リビングの床と共有するガラスで、視線が上に抜けるため開放的。左の木製ルーバーの間もガラスで、車庫にある愛車を眺められる


大きな窓から明るい光が差し込む2階リビング。白と黒の壁の塗装や、場所によって高さや仕上げが異なる天井などで、メリハリある空間になっている


2階ダイニング。上部はロフト、右側は階段の吹き抜けになっている

 

住み替えて移住

夫婦そろって県外出身だが、Mさんは20年ほど前からダイビングなどで沖縄を訪れていた。次第に「住みたい」と思いはじめ、10年ほど前に県内でマンションを購入。県内外を行き来する生活をしていた。
「家を建てるなら沖縄」と決めていたMさんは、注目していた地域で土地を見つけたことをきっかけに、家づくりと、仕事の拠点を沖縄に移すことを決意。インターネットで探した建築士の手掛けた住宅を見て「いい意味で同じようなものがない。施主の要望をくみ取り形にしているのだろう」と、依頼することに。
設備や照明は県外のショールームなどを回りながら一つ一つ夫婦で探し、床材、壁の色なども建築士と相談しながら選んだ。
住み始めて間もなく4年。完成した家はもちろん、旗頭が家の前で演舞する生活などに、夫婦は「大満足」と口をそろえた。


1階のパン教室を開く予定のスペースでは、夫人が毎日パン作りを楽しむ。右の引き戸の奥は和室で、パンの材料を広げたり、ゲストルームなどとして活用


2階キッチン。設備は夫人自ら選んだお気に入りで、「前は外食が多かったが、きちんとご飯を作るようになった」


いろいろな大きさの四角形が重なったような外観。左下の茶色い部分はビルトインガレージになっている


ここがポイント
動線はあえて長く
多彩な景色楽しむ


小さな路地を奥へ奥へと進んでいくような造りのMさん宅。設計した大嶺亮さんは「限られたスペースでも空間的な広がりを感じられるよう、玄関から寝室までの動線はあえて長くしている。その中で路地を曲がるたびに違う景色と出合えるような表情の豊かさを意識した」と話す。
Mさん夫婦が「建物内に組み込まれたビルトインタイプの車庫」「パン教室」を要望したことや、住宅密集地にあることから、居住スペースは2階に配置。各階が分離しないよう階段を吹き抜けにしたほか、1階路地の真上にあたる2階リビングの床は部分的に強化合わせガラスを採用した。「各階が視覚的につながるとともに、使用頻度の少ない1階の防犯にも役立つ」。吹き抜けや床のガラスは、上下に空間の広がりを持たせたり、見える角度を増やして家の表情を豊かにする工夫の一つでもある。
2階リビングは南・西・北の3面の大部分が窓ガラスだが、「西側の一部にサッシでなく鉄骨を使い、屋根の重さを支えられるようにした」。天井は朝日や西日など強烈な日差しの入り方を調整するため、中央から東西に低くなるよう勾配がついている。
1階のパン教室を計画中のスペースではパンの販売もできるよう、専用の出入り口や、工房と客スペースの間に仕切りを設けたりして、保健所の認可が取れる造りになっている。



ロフトで仕事をするMさん。天井の木製リブが音を程よく吸収し、良い音響効果をもたらしたため「音楽をよく聞くようになった」


1階洗面室。奥に脱衣室、浴室、物干し場と続く。右奥の物干し場のドアを開ければ、一気に通気でき湿気対策になる


[DATA]
家族構成:夫婦
敷地面積:148.63平方メートル(約44.9坪)
1階床面積:71.95平方メートル(約21.76坪)
2階床面積:73.95平方メートル(約22.37坪)
建ぺい率 :49.75%(許容50%)
容 積 率:87.06%(許容100%)
用途地域 :第一種低層住居専用地域
躯体構造 :壁式鉄筋コンクリート造
設  計 :ファイブディメンジョン一級建築士事務所 大嶺亮
構  造 :黒岩構造設計事ム所
施  工 :IMIコーポレーション
電  気 :剛電設
水  道 :ライフ工業



[問い合わせ先]
ファイブディメンジョン一級建築士事務所
098-874-3220
http://www.fivedim.com
 


撮影/比嘉秀明 編集/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1674号・2018年2月2日紙面から掲載

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出嶋佳祐

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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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