お住まい拝見
2017年10月27日更新
七つの庭と完全分離型二世帯住宅がちょうどよい距離感「セブンガーデン」|アーキデザインワークス一級建築士事務所
[お住まい拝見・ガラス多用 顔見える2世帯]Cさん宅は1・2階に分かれた完全分離型の2世帯住宅。上下階を貫く吹き抜けの中庭があるのが特徴。ガラス張りの空間が、ライフスタイルの違う家族を心地よくつなぐ。
1階、Cさん世帯(親世帯)のLDK。キッチンの右側にある中庭からは、2階の息子世帯の様子がうかがえる
上下階 中庭でつなぐ
Cさん宅
RC造/自由設計/2世帯
「セブンガーデン」。建築士はCさん宅をそう名づけた。「庭を楽しみたい」という要望から、七つの庭を設けたことに由来する。
Cさんは「それぞれ顔が違う庭」をテーマに、「庭師さんと相談し、建物とのマッチングや夜のライトアップも考えて造った」という。
1階、Cさん世帯の主寝室から見える「西庭」は琉球石灰岩やソテツを配したウチナー風。母親の寝室に面した「北庭」は、落ち着いた日本庭園風。キッチン・ダイニング脇の「東庭」は洋風だ。存分に緑を堪能できるよう、大きな窓ガラスを多用。「室内は驚くほど明るいし、気持ちがいい。住宅街にいることを忘れちゃう」と夫人は笑う。
特に笑顔の源になっているのは、寝室とLDKの間にある「南庭」。2階の息子世帯を通り、空へ抜ける。「ダイニングで食事をしていると、孫がガラスにへばりついて手を振っているのが見えるの」とニコニコ。2階の息子世帯も、「直接姿が見えなくても、下から明かりが漏れるだけでホッとする」。
完全分離型の2世帯住宅ながら、顔が見え、安心感がある。生活リズムの違う4世代にとってちょうどよい距離感が、「南庭」によって形になった。
[1階・Cさん世帯]LDK。リビングの天井や床材、テレビ後方の石材、キッチン・ダイニングの床タイルなどは、Cさん夫妻が厳選。全体的にシックな印象で統一しているが、リビングとダイニングは天井高や色の違いでメリハリを付けている
[2階・息子世帯のLDK]写真奥のウッドデッキテラスや右側の「南庭」の吹き抜け空間により、プライバシーを確保しながら光と風を通す、明るく広々とした空間
1階と2階を貫く「南庭」。ガラス張りで、二世帯のコミュニケーションツールになっている
室内はシックに
新築に踏み切ったのは、共働きの息子夫婦に子どもが生まれたこと。一人暮らしをしていたCさんの母親も同居することで、「皆で助け合い、互いの顔を見て元気になれる。そんなウィンウィンの家を造りたかった」と語る。その後、イベントで出会った建築士と意気投合し、「すぐお願いした」。
家造りの主体となったのはCさん夫妻。床材やテレビ台後ろの石材など、夫妻が厳選したシックな建材が、庭の緑を際立たせている。夜は「照明を絞った室内とライトアップされた庭が調和して、これもまた最高なんです」。
家族をつなぎ、内外を調和させる。「セブンガーデン」は懐が深い。
ここがポイント
七つの庭点在
光と気配運ぶ
完全分離型の二世帯なので玄関も別々になっている。だが、玄関前の前庭は両世帯の目を楽しませる。雨にぬれずに地下階の駐車場まで行けるようアプローチは屋根付き
「庭を楽しみたい」というCさんの要望に、一つの大きな庭を設ける方法もあったが、アーキデザインワークス一級建築士事務所の佐久原好光さんは、七つの庭をちりばめる提案をした。「目で楽しむ庭」にとどめず、人と人・外と内をつなげる「五感で感じる庭にするため」だ。
Cさん宅は住宅密集地にあり、北・西側が道路に面している。家の周囲に点在させた庭が、外との緩衝帯になっている。特に1階・主寝室のある西側の敷地は前面道路よりも2メートル下がっているが、それを感じさせない(写真)。外壁との間に設けた庭が部屋に光と風をめぐらせ、圧迫感を癒やしに変える。
ガラスを多用した造りは採光とともに「家族のつながり」を考えてのこと。「おばあちゃん、Cさん夫妻と娘、息子夫婦、幼い孫たち。ライフスタイルの違う4世代が一緒に暮らすにあたり、音は聞こえずとも姿は見えるよう配慮した」と説明する。
また、余分なコストを省くために1・2階の間取りはほぼ同じにしているが、「各世帯の要望によって少し変化をつけた」。
Cさん世帯は「庭重視」。庭を家具や設備で遮らないよう配慮。息子世帯は「テラスでBBQやヨガをしたい」という要望からキッチンを少し小さくし、ウッドデッキテラスを造った。子どもが小さいため個室は最小限にして「リビングを広めにした。将来は仕切って個室にすることも可能」と話した。
Cさん世帯の主寝室。琉球風の西庭に面している。二つのベッドの間にはガラスの仕切りが入っている。「夫は暑がりで、私は寒がり。温度差対策で設置した」と語る
Cさん宅の外観。坂道の途中に建つ
平面図(1階)
[DATA]
家族構成 :夫婦、母、娘(1階)
:夫婦、子2人(2階)
敷地面積 :325.16平方メートル(約93.36坪)
地階床面積:36.10平方メートル(約10.92坪)
1階床面積:137.71平方メートル(約41.66坪)
2階床面積:115.61平方メートル(約34.97坪)
建ぺい率 :45.65%(許容50%)
容 積 率:77.91%(許容100%)
用途地域 :第一種低層住宅専用地域
躯体構造 :鉄筋コンクリート造壁式
設 計 :アーキデザインワークス一級建築士事務所
佐久原好光、中村夏美
構 造 :一級建築士事務所ASDplanning
施 工 :米元建設工業(株)
電 気 :(株)八起電設
水 道 :(有)ライフ工業
造 園 :末吉園 普天間直利
[問い合わせ先]
アーキデザインワークス一級建築士事務所
098-890-1288
http://archi-dw.com/
写真/比嘉秀明 編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1660号・2017年10月27日紙面から掲載
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 東江菜穂
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。