お住まい拝見
2016年5月20日更新
壁取り「ムワッ」を解消|サイアスホーム(株)
沖縄県本島中部、沖縄市にある実家2階をリフォームしたKさん。1階の親世帯とは玄関も分けた完全独立型の2世帯住宅。壁を取り、ワンルーム的な造りにしたことで四方から風が抜け、夏場の「ムワッ」が解消されたと喜ぶ。
リフォームで2世帯住宅に
Kさん宅 築35年/RC造/家族2人壁を最大限取り払い、リビングからすべての居室が見通せるワンルームのような造りに生まれ変わった。東西南北、さまざまな方向から風がめぐる
▼リフォーム前
リフォーム前は部屋が壁や本棚で分断されていたKさん宅
家具や布で緩く仕切る
リフォーム前は、独身時代のKさんや父親の部屋など洋室3間と予備室があった。居室がきっちり壁で分断され、狭い空間の中で熱がこもりやすかった。Kさんは「ドアを開けたときのムワッとする感じがイヤだった」という。リフォームでは、風通しの良さと開放感を要望した。
▼リフォーム前
以前は壁や天井高いっぱいの本棚で部屋同士が分断されていた
キッチン(奥)は対面式。キッチン周りの壁は構造上、強度に影響が出る可能性があり取り払えなかったが、大きく開け空間をつなげた
家の中心にあるリビングに立つと、実現度がよく分かる。キッチンや子ども室、和室などすべての部屋が見通せる。東側の掃き出し窓を中心に、北のキッチン側、南の和室側など、四方から風がめぐる。天井に設置したシーリングファンも相まって「室内の熱気を外へ逃がしてくれるから、クーラー要らず」と満足げだ。
開放感にこだわり、リビングと玄関、和室の仕切りも襖でなく布製のパネルスクリーンで目隠し程度にした。
キッチンと家事室を仕切るのは可動式の収納棚。キッチン側、家事室側と両面から物を置けるようにして、スペースを無駄なく利用した。棚の中央は板を入れず向こう側が見通せるようにしている。天井との間にある50センチの隙間も風を通し、家族の気配を伝える。
夫人は「キッチンからすべての部屋に目が届くので、子育てもしやすいはず」と臨月のおなかをなでる。
玄関に竹あじろ
リビングのテーブルや本棚など、アジアンテイストの家具は夫人の趣味。家を建てる前から持っていたものだが、新居にもピッタリ合っている。「前々から、空いていた主人の実家2階を改装し、2世帯住宅にしたいと考えていた。建築会社を探していて、漆喰壁や無垢材のフローリングが好みのテイストだった会社に決めた」。玄関を入ってすぐの壁面ににある、竹を編み込んだ「あじろ」も自慢。「本当は天井一面にしたかったけど、予算との兼ね合いで目立つところに絞った」。ほこりが付きにくいようにと、ガラスで挟み込んでもらったのもお気に入り。
主婦に優しい工夫が随所に施された新しい住まいは、新しい家族にも優しい。
リビングから和室、玄関側を見る。仕切りは布製のパネルスクリーンを使っている
キッチンの北側にある家事室。キッチンとの間は可動式の収納棚で仕切っている。窓は以前の住まいのまま
玄関を入ると、目の前の壁にあるのは夫人お気に入りの竹あじろ。あじろは、ほこりがたまりにくいようにガラスがはめ込まれている
▲リフォーム後
平面図の洋室B、Cは10年ほど前に増築した。そのため洋室Aの南側の壁面(上写真、図面赤囲み)には家を支える梁があり、取り払うことができなかった。そこで対面式のキッチンを配置。壁で手元を隠しつつ、互いの顔は見えるようにしている。
▼リフォーム前
ここがポイント
取れない壁を軸に配室
部屋同士を仕切らず一体的にすることで風や光を家中にめぐらせたKさん宅。リフォームを担当したサイアスホームのプランナー、儀保史郎さんは「Kさん宅はラーメン構造(図参照)だったので、壁を取り払いやすかった」と話す。ただ、キッチン前の壁は家の構造上、取り払うことができなかったため、居室の配置を工夫。壁の北側に水回りをまとめ、居室と分ける役目をもたせた。
風通しや開放感を考え、天井はふところを設けず、梁ギリギリまで上げた。もともと屋根に勾配があったため、天井も勾配を生かした形状になっている。高くなっている東側に高窓を設けることで傾斜に沿って熱気が抜け、光も取り込める。「断熱材には化学物質を使用しない炭化コルクを使用。シックハウス症候群に配慮しながら、暑さ対策を徹底した」。
自然素材で体に優しく
調湿効果のある漆喰壁も暑さ対策にひと役買っている。「漆喰はオリジナルの無添加のもの。体に優しい素材を使うことにもこだわった」と説明する。開口部は極力、既存のものを生かした。「予算を抑えるためサッシもそのままま使っているところもある」と説明する。
新しい開口はリビング東側の高窓など、ポイントを絞った。「ワンルーム的な家だから限られた開口でも風が行きわたる」と話す。明るさも「漆喰の壁が日の光や照明をやわらかく反射させ、家中に巡らせる」と説明する。
※ラーメン構造とは
ラーメンとはドイツ語で「枠」を意味する。左図のように、梁や柱で建物を支える構造。壁や開口部を設置したり取り払ったりしやすい。右図の壁式構造は耐力壁や床スラブなどの面で建物を支えるため、壁を取り払うときには注意が必要。
[DATA]
家族構成 :夫婦
敷地面積 :368.25平方メートル(約111坪)
2階床面積:88平方メートル(約26.63坪)
躯体構造 :鉄筋コンクリート造ラーメン構造
設 計 :サイアスホーム
施 工 :サイアスホーム
電 気 :糸洲電気工事社
水 道 :永山水道工事社
キッチン :タカラスタンダード
[設計・問い合わせ先]
サイアスホーム株式会社
電話:098-938-2458
http://www.saias-home.co.jp
写真/泉公・ララフィルム撮影
編集/東江菜穂
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。