お住まい拝見
2016年6月3日更新
「南国リゾート」な家|アーキ ペラゴ デザイン
沖縄県本島南部、南城市のNさん(52)宅は、海が望める高台に建つ。将来は賃貸にすることも考えた2世帯住宅。開放感や間接照明にもこだわった「南国リゾート」な家を取材した。
景色生かした2世帯住宅
Nさん宅 RC造/自由設計/家族4人開放感たっぷりの2階のLDK。南側の掃き出し窓や高窓から光と風がめぐる。掃き出し窓を全開にすると、テラスとひと続きになる。左奥は子ども室
外と中の境界緩やか
海で遊んだ後は、外から直接1階の浴室へ。リビングとひと続きになった2階のテラスで友人たちと乾杯。海が好きなNさんと、おもてなし上手の夫人(43)が希望したのは、内と外の境界が緩やかでリラックスできる「南国リゾート」な住まいだ。
特に色濃く反映されているのは、居住の中心となっている2階のLDK。網代が用いられた天井は最高約4メートルもある。掃き出し窓や引き戸を開け放てば、子ども室からテラスまでが大きなワンルームになり南側の大開口と相まった開放感は、まさに「リゾート」だ。
ダイニングで夫人お手製のお菓子をいただいていると、南側に隣接するサトウキビ畑を揺らした風が「サワサワ」と音をたてて吹き込んでくる。夫人は、キッチンでお茶の準備をしながら「目にも耳にも気持ちいい。カーテン無しで生活しているんですよ」と笑顔。
「リラックス感」にこだわり、間接照明を主とした。Nさんは「昼は景色に和み、夜はほんわりした間接照明に癒やされている」と目を細める。
ヤシの木が決め手
もともと沖縄県南城市内のアパートに住んでいた。「環境が気に入ったし、何より子どもたちが離れたがらなかった」ことから、同市内に家を建てることを決めた。土地購入の決め手となったのは、敷地の南西角に生えていたヤシの木。「この木や海を見ながら生活したい」との思いを、県内でホテルの設計なども手掛ける建築士に託した。
夫人は5年以上前から、新居への要望を書きためていた。「私は『パントリーがほしい』とか、娘たちは『家の外を、ぐるっと一周走り回りたい』とか」。細かく建築士に伝え、取捨選択しながら理想のわが家を完成させた。
Nさんは「そういえば遠出をしなくなったな。キャンプも水遊びも家でできるし」と笑う。家族でリゾートな暮らしを楽しんでいる。
テラスからLDKを見る。料理教室を開くことを想定し、キッチンは、人が入りやすく見通しのいいアイランド型にした。キッチンカウンターの収納は、ダイニング側からも出し入れができる
南側から見た外観。左端に見えるヤシの木が土地購入の決め手となった
2階の「ブリッジ」からリビングを見る。間の仕切りはガラス張りになっていて、室内の様子がうかがえる
1階の玄関を入ると、階段から2階の住居へ続くブリッジが目に入る。
2階のテラス。奥に見えるのは倉庫。あえてテラスより出っ張らせ、倉庫の向こう側にある道路からの視線を遮っている
2階のトイレへ続く廊下。造り付けの収納は、下に隙間を開けることで圧迫感を軽減。白い砂利石を敷いて、夫妻要望の「南国リゾート感」をここでも演出している
※将来は賃貸にすることも考えた2世帯住宅。現在、Nさん一家は2階を中心に生活する
ここがポイント
次の空間チラり ワクワク感演出
設計を手掛けたアーキペラゴデザインの一級建築士、藤井啓介さんは「Nさん夫妻の要望は具体的だったし、南側に大きく開ける立地条件だったので設計は進めやすかった」と話す。唯一、「ワクワク感がほしい」という抽象的な要望に頭を悩ませた。出した答えが「次に続く空間を少し見せ、期待感を持たせる」だった。
玄関を入ると、2階の天井まで続く吹き抜けの途中にある「ブリッジ」が目に飛び込んでくる。ブリッジに上がると、2階住居との間はガラス張りになっていて、リビングがチラリと見える。リビングに一歩入れば、テラス越しに海が望める。「見える範囲を限定することで、想像が膨らむ」。
Nさん宅は将来、賃貸にすることも考えた2世帯住宅のため上下階の動線は分断されている。だが、玄関の吹き抜けやブリッジなどのおかげで2階にいても家族の出入りが分かり、「娘たちに声かけができる」と夫人は重宝している。
「リゾート感」演出の要である2階のテラスにも、視線を操る工夫が凝らされている。外の景色を見るときに邪魔にならないよう、手すりは細くて丈夫なワイヤを使用した。
一方で、テラス脇にある倉庫はあえてテラスの幅より出っ張らせて西側道路からの視線を遮る役割を持たせている。
[DATA]
家族構成 :夫婦、子ども2人
敷地面積 :561.89平方メートル(約169.97坪)
1階床面積:99.83平方メートル(約30.19坪)
2階床面積:88.96平方メートル(約26.91坪)
建ぺい率 :20.75%(許容70%)
容 積 率:33.60%(許容200%)
用途地域 :無指定地域
躯体構造 :鉄筋コンクリート造 ラーメン構造
設 計 :アーキペラゴデザイン 一級建築士事務所・藤井啓介
構 造 :(有)建築設計 庵
施 工 :(株)D・C・R
電 気 :(株)大幸電設
水 道 :(資)第一設備
キッチン :(株)クチーナ
[設計・問い合わせ先]
アーキペラゴデザイン
098・996・2455
http://www.archipelagodesign.jp
撮影/高野生優・フォトアートたかの撮影
編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1587号・2016年6月3日紙面から掲載
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 東江菜穂
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。