巻頭特集・企画
2015年10月30日更新
冷暖房なしでも快適|(有)沖縄南國ハウス
父の助言で木造にした木下さん夫妻は、「冷暖房の費用が掛からない」と喜ぶ。各部屋が天井でつながる空間で、家族がのびのび暮らす。
初期費+維持費
木下聡士さん宅(南城市)
家族が集まるLDK。中央にあるイヌマキの大黒柱とともに、柱や梁が見えることで、木の力強さとあたたかみを感じる
南城市大里の木下聡士さん(38)宅は、広い赤瓦屋根が特徴的な、木造軸組み工法の2階建て。妻の志乃さん(38)、子ども3人と暮らす。
1階にLDKと和室、2階に子ども室とゲストルームがある。傾斜地をうまく利用し、1階が南側、2階が北側と、階段状になった造りだ。
玄関に入ると、建物にふんだんに使われたスギの香りが迎えてくれる。その隣のLDKでは、立派なイヌマキの大黒柱がどっしりと構える。丸みを帯びた太鼓梁が見える構造で、天井は2階まで続く吹き抜けになっている。各部屋の天井部分は仕切らずつながっており、志乃さんは「どこにいても家族の声が聞こえるのがうれしい」。
広々とした空間を生かし、「息子とキャッチボールをすることもあります」と木下さん。太い梁に掛けられたハンモックでは、子どもたちがゆらゆらと、のんびり過ごす。
南側にはアマハジがあり、その先には緑いっぱいの丘陵地が広がる。軒が深く「窓を開け放していても雨が入ってこない」と志乃さんは喜ぶ。
父の薦めで木造に
5年ほど前、志乃さんの実家近くに土地を求め、家づくりを開始。「家は鉄筋コンクリートで造るものだ」と思っていた夫妻だったが、志乃さんの父に「夏涼しく、冬暖かいから」と薦められて木造にした。父の知り合いで信頼を寄せていた建築会社に依頼した。
実際に住み始めて「夏でもクーラーはあまり使わないので、電気代が思ったよりも安い」と夫妻は口をそろえる。
壁はクロスではなく、あえて板壁を採用。張り替える必要がなく、長い目で見たときにランニングコストが抑えられる。木の色など風合いの変化を楽しむこともでき、もともと白かった壁面は5年であめ色になった。木下さんは「50年後どうなっているか楽しみ。子どもたちに住み継いでほしい」と期待を込めた。
南から見た外観。赤瓦の屋根が目を引く
長女が使う屋根裏部屋。「夏でも暑くないようで居心地がいいみたい」と志乃さん
南側の高窓から明るい日差しが差し込むゲストルーム。2階も梁が見える造りで天井が高く、開放感がある
コストを考える
◆光熱費の削減
「クーラーや暖房を使うことが少ないため、電気代が抑えられる」と木下さん。沖縄の伝統的な住宅にあった、深い軒のアマハジ空間(下写真)が、室内に直射日光が差し込むのを避け、涼しさに一役買う。さらに、木の調湿作用で湿気も少ない。
◆プレカットで工期短縮
工場であらかじめ加工されたプレカット材を活用。現場での手加工を少なくすることで、工期の短縮が図れ、コストの圧縮につながる。実際、建物には3カ月ほどの工期が掛かったが、沖縄南國ハウスの担当者は「手加工なら半年以上は掛かっただろう」と話す。また、増改築がしやすく、経年劣化で不具合が出た場合、その部分だけ取り換えれば済むというメリットもある。 [DATA]
家族構成:夫婦、子ども3人
敷地面積:373.14㎡(約113.07坪)
1階床面積:85.34㎡(約25.86坪) 2階床面積:46.62㎡(約14.13坪)
躯体構造:木造軸組み工法
設 計:カーサ設計工房
施 工:(有)沖縄南國ハウス
[問い合わせ先]
(有)沖縄南國ハウス
098-946-7091
編 集/週刊タイムス住宅新聞編集部
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1556号・2015年10月30日紙面から掲載