お住まい再拝見
2015年4月3日更新
築27年 緑で潤う|(有)アイ・エイチ・エー設計
建築士である伊波さん自ら設計し、自宅兼事務所を造ったのは1988年4月。建物の内外をコンクリート打ち放しで、シンプルに仕上げた。新築から27年。子どもの成長とともに、個室は使い方を変えてきた。中庭の緑が潤いを与え、週末には孫が訪れて食卓はにぎやかだ。
窓辺の景色豊か
伊波さん宅 (154号、1988年7月2日発行掲載)
現在の2階リビング。コンクリート打ち放しの壁や時計は、1988年の取材当時と変わらない
孫たちと食卓囲む
1階に事務所、2階にLDKや子ども室、3階に主寝室、浴室・トイレがある伊波さん宅。夫妻と次女の3人で暮らす。
27年前と変わったのは、窓辺の景色。リビングに面する中庭のシマトネリコが枝葉を伸ばし、心地いい木漏れ日をもたらす。伊波さんは「8年前に、建物の手前にある植栽から移植したのですが、背丈を伸ばしましてね。眺めていると癒やされます」と目を細める。
2階にある吹き抜けのリビング、ダイニングは以前のまま。リビングは、昼になるとトップライトの光が壁に筋を描く。ダイニングでは日曜の夕飯どきに、伊波さん家族に長男夫妻、孫2人の7人がテーブルを囲み、にぎやかになる。
「あと10年は住みたい」と伊波さん。ひざに痛みを抱える妻のために、1階で生活できる造りに改装しようか考えている。長男(27)は、「キッチンは広くて使いやすい。あらためて見ると、かっこいい家だと思います」と照れくさそうに話す。
子増え 部屋必要に
新築当初は夫妻に長女と長男の4人暮らしだったが、22年前に次女が生まれ、5人になった。
部屋の使い方が変わったのは17年前。10歳になった長男から、自分の部屋が欲しいとせがまれたのがきっかけだった。
そこで、1階の事務所はよそに移して主寝室にし、個室と子ども室、主寝室をそれぞれの部屋に充てた。「1階に事務所という多目的に使える部屋があったから、子ども3人分の部屋を確保できたのだと思う」と振り返る。
子どもたちが巣立った後も、部屋の使い方を変えてきた。「近い将来、二世帯住宅にする話を長男としています」と伊波さん。同宅に、家族の歴史の1ページがまた、刻まれる。
シマトネリコが背丈を伸ばす中庭。伊波さんが手入れするオオタニワタリなどのグリーンが潤いを添える。左側にあるのは、アマミヅタで覆われた花ブロックの壁。デッキは、夫人と長女の手作りだ
2階ダイニング。ダイニングが広く使えるよう、食器棚のレイアウトを変えた
緑が増えた、現在の外観。外壁は15年前に一度塗装した。「そろそろ塗り替えようと考えています」と伊波さん
中庭に面した1階事務所。読谷村周辺に住む施主との打ち合わせに使っているという
3階浴室。奥はバスコートで、換気や癒やしを目的に設けた。伊波さんも当時から施主に提案している造り
設計者・伊波米次さんが語る
深み増す住まいの秘けつ
こまめに掃除・改装新築以来、「こまめな手入れ」を心掛けてきました。室内外の掃除は当たり前。ベランダの防水塗装をはじめ、デッキや木塀の補修、玄関の改装と、5年ごとに「プチ改装」もしています。費用は1回20万円以内。月だと3300円余りなので、確保しやすいと思います。給湯設備の交換や、1階事務所への再改装の費用も一部工面できました。
花ブロックで「閉じつつ開く」
敷地南側の中庭には、花ブロックをはめ込んだ壁(幅5.4メートル×高さ6メートル)があります。中学校からの視線を目隠しするのが役目です。今はアマミヅタに覆われ、シンボルツリーのシマトネリコと相まって、潤いのある風景がリビングから眺められます。視線を遮ることは必要ですが、穴のない高い壁や塀だと、周囲に圧迫感を与え、室内にも光と風が取り込めません。「閉じつつ開く」ための設計の工夫はすべきだと思います。
住んでみて分かったこと
見た目の美しさから、外壁と内壁をコンクリート打ち放しにしました。コンクリートがため込んだ熱や冷気が、室内に伝わりやすくなってしまい、家族からは「夏は暑い、冬は寒い」と不評でした。自宅での経験があってから、施主には勧めていません。
[DATA]
家族構成:夫婦、子ども1人
敷地面積:301㎡(約92坪)
床面積:1階74㎡(約22坪) 2階56㎡(約17坪) 3階49㎡(約15坪)
躯体構造:鉄筋コンクリート造壁式構造
設 計:(有)アイ・エイチ・エー設計 伊波米次
施 工:松田建設
完成時期:1988年4月
[設計・問い合わせ先]
(有)アイ・エイチ・エー設計
098-890-1325
http://www.iha-design.jp
写 真/高野生優・フォトアートたかの撮影
編 集/週刊タイムス住宅新聞編集部
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1526号・2015年4月3日紙面から掲載