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2024年12月20日更新

[お住まい拝見]自作の庭を囲んで|(株)新垣工務店

[高断熱・高気密の木造 軒下空間も]Oさん宅は高断熱・高気密の木造住宅。「家を建てるなら庭を」と自ら芝生や琉球石灰岩などを敷き、植栽も手がけた。庭とLDKの間にある深い軒下空間のテラスが内外を緩やかにつなげつつ、日射を遮ることで、快適な空間を生み出している。

自作の庭を囲むよう、L字に配置されているOさん宅。将来を見据え、2世帯で暮らせる造りとなっている。玄関は分けて、世帯ごとのアプローチはレンガなどで造ったほか、芝生や花ブロックなども敷いた。Oさん宅の玄関の戸は写真右の深い軒下空間の先にあり、黄色に塗装している


天井高5メートル超のLDK

Oさん宅
 木造/自由設計/家族5人 

「木造で高断熱・高気密の家」「静かな住環境」、そして「庭」。理想の住まい像が明確だったOさん夫妻は「何より居心地が抜群にいい」と満足げにほほ笑む。職場近くの土地を購入し、家づくりはスタートした。

特に家づくりで欠かせなかった庭はOさんの自作。3人の子どもが遊べるよう、自ら芝生や花ブロックなどを敷いたほか、木の植栽まで行った。そんな庭づくりも道半ば。「色とりどりの花を植える花壇、トマトやらっきょうなどを育てる家庭菜園も造っていきたい」とOさん。

LDKは構造体の梁(はり)などの木組みがあらわになり、天井は高い所で5メートル超。掃き出し窓を開けると、深い軒下空間のテラスと緩やかにつながり、縦横に広がりを感じる開放的な空間だ。夫人は「緑を身近に感じられて、伸びやか。友人や子どもの友達と大人数が遊びに来ても、空間を広く使えるのがいい」と話す。

また表と裏をきっちり分けた造りも特徴的。LDKの北側にまとめた水回りからファミリークローゼットを備えた家事室、子ども室まで裏動線でつなげたことで、「身支度がスムーズ」と夫妻。脱衣室には洗濯物を畳める作業台などを設置したため、「洗濯も時短できて、楽々」。裏動線のおかげで、オープンなLDKでも気兼ねなく過ごせる。


玄関ホールから見るLDKは構造体の梁などがあらわとなり、これぞ木造住宅というたたずまい。天井高に加えて、南側の庭に視線が抜けて、一段と開放的な空間。写真左ののれんをくぐれば、水回りから家事室、各居室までつながる廊下(裏動線)がある


軒下空間のテラスは駐車場から玄関まで続く。軒を出したことで外壁の杉材を日光や雨水から守っている
 

家事室から続く動線。玄関のアーチ型の出入り口からも行き来することができ、回遊性のある造りとなっている
 

玄関。木をアーチ状に加工したり格子状に仕上げたりと、遊び心のあるデザインとなっている


2世帯住宅としても

建築士とは共通の趣味で知り合った。Oさんは「要望を気軽に伝えられ、余すことなく形にできた。室内の雰囲気に合うよう、木でキッチンや引き戸などを造り付けてもらったり、設計変更にも柔軟に対応してくれたり、本当に助かった」と話す。将来を見据えて、一室はOさんの母親が暮らせるように。玄関は分け、庭を介して世帯間がつながるようになっている。

緑豊かな庭を中心に、開放感と機能性が両立していた住まいでOさん一家の暮らしはこれからも続く。



ファミリークローゼットを設置した家事室(上)から脱衣室までは一直線につながる。脱衣室には洗濯物が干せるラックを設けたほか、衣類を畳める作業台も完備。収納棚も多く設け、家事を省力化している。床材は水回りだけタイル仕上げとし、使い分けることで空間にメリハリをつけている

 

ここがポイント
測定と散水試験で
二重に気密性 確認


LDK。Oさんは「不快な湿気を感じることなく、大空間でもエアコン1台で夏は涼しい。月々支払う電気代も安くなりました」と高断熱・高気密の効果を実感している


Oさん宅の設計でポイントになったのは「高断熱・高気密と開放感を両立させること」。設計・施工を手がけた新垣工務店の建築士兼大工・新垣太志さんは「住宅を高断熱化しても、建材の接合部に隙間があると、性能が著しく落ちる。断熱性と気密性は必ずセット」と説明する。

そのため、住宅を断熱材で切れ目なく覆える「外張り断熱工法」を採用。建築中には散水試験で屋根や壁などに水や空気が浸入する小さな隙間がないか確認し、完成後には気密測定まで行っている。「数値と目視で気密性をしっかり確かめているため、大空間でも天候に左右されず、室内の温湿度を一定に保てる」。ほかにも、室内の壁に調湿・消臭効果がある塗り壁材を塗るなど、居心地のいい空間となるように仕上げた。

また断熱性を高めるため、全ての窓に複層ガラスを取り付けている。さらに、庭とLDKの間に深い軒下空間を配置したことで、「日射熱の影響を最小限にできるだけではなく、外壁にも紫外線や雨水が直接当たらず、外壁材の劣化防止にもなっています」。掃き出し窓を開け放てば、LDK→軒下空間→庭と内外が緩やかにつながり、開放感を演出している。

住宅の性能と開放感以外にも、技が光る。木家具・木建具は全て同社職人が造り付けた=お住まい拝見+参照。「キッチンや食器棚の高さなどは現場でも調整し、製作しました」と新垣さん。Oさん夫妻は「料理の受け渡しもスムーズ。色やデザイン、メンテナンス性も相談しながら決めて、細かい部分まで自分たちの好みを反映できた」と話した。
 

軒下空間のテラス。掃き出し窓には腰かけられるようになっており、約1.8メートルの延びる軒と相まって縁側のよう

子ども室。梁に間仕切り壁を設置できるため、大部屋を区切って三つの個室としても使える


Oさん夫妻と相談しながら、建築士が造り付けた製作カウンター付きのキッチンと食器棚。キッチンにはパントリーが隣接しているほか、前面に収納スペースを設け、すっきりとしたLDKとなっている


[DATA]

家族構成:夫婦+子ども3人
敷地面積:393.25平方メートル(約119坪)
1階床面積:134.61平方メートル(約40.79坪)
建ぺい率:39.16%(許容60%)
容積率:33.19%(許容200%)
用途地域:未指定
躯体構造:木造・在来軸組工法
設計:(株)新垣工務店 新垣太志
構造:(株)SANSYU
施工:(株)新垣工務店
電気:吉電設
水道:(株)みやぎ水道

問い合わせ
(株)新垣工務店
電話=098・945・5747
https://www.arakaki-kOumuten.cOm


撮影/桑村ヒロシ 文/市森知
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2033号・2024年12月20日紙面から掲載

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週刊タイムス住宅新聞編集部

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