空眺め、伸び伸びと|建築空間アボット[お住まい拝見]|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

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2024年4月26日更新

空眺め、伸び伸びと|建築空間アボット[お住まい拝見]

[どこにいても家族の気配感じられ]
大きな吹き抜け上部の大開口に広がる空が印象的なIさん(43)宅。伸び伸び過ごせるLDKが家の中心で、どこにいても家族の声や気配が感じられる。

天井高5.5メートルの開放的なLDK。大きな高窓から光が降り注ぎ空が見える。LDKが生活の中心で、子どもたちもカウンターで勉強したり、リビングで走り回ったりして遊ぶそう。夫人はキッチンでケーキ教室を開いて、家族以外の人との交流が広がる場にもなっている
 

LDKが家の中心

Iさん宅
 RC造/自由設計/家族6人 

玄関を入ってひときわ目を引くのは、リビングに設けた高窓いっぱいに広がる空。コンクリート打ちっ放しの室内は吹き抜けになっていて、天井高約5・5メートルと開放的だ。「高窓から降り注ぐ朝日が心地よく、朝食を食べながらよく空を眺めている」とIさん。

Iさん宅は2階建てで、夫婦と子ども4人が暮らす。1階は和室とLDK、水回り、夫婦の寝室で構成。建築士に要望したのは「仕切りが少ない間取りでどこにいても家族の声や気配が感じられるような家」だ。その要望通り、コートに面する掃き出し窓や和室の引き戸を開け放てば、LDKと和室、コートまでが一体になる広々とした空間に。

キッチンは対面になっていて、家事をしながらリビングで遊ぶ子どもの様子を眺められる。「以前住んでいたところは手狭だったが、今は外に連れていかなくても子どもたちを家で伸び伸びと遊ばせられる」とほほ笑む夫人(39)。2階の子ども部屋とは吹き抜けでつながっていて、部屋の引き戸を開け放てば、1階にいても子どもたちの気配が感じられる造りになっている。和室の引き戸はつり戸になっていて敷居がなく、子どもがつまずく心配がないという。



広さ約25.8畳のLDK。フローリングや木目調の建具がコンクリート打ちっ放しの室内に温かみを添える。鉄骨で軽やかに仕上げた階段も広々とした空間の演出に一役
 

2階子ども部屋。室内はベランダや吹き抜けの高窓からの採光で明るい。つり戸で仕切れば2室になり、フレキシブルに活用できる


温かみある打ちっ放し

建築士に出会ったのは、新聞広告で施工例を見て気に入ったのがきっかけ。「杉板で模様づけした打ちっ放しのモダンな外観と広々とした平屋の造りにひかれた。打ちっ放しというと無機質で冷たいイメージだったが、天井や壁、扉に木目調の建材を取り入れていてスタイリッシュで温かみを感じた」とIさん。

2階のベランダはウッドデッキになっており、シンクも設けられいる。「夏はベランダにビニールプールを置いて子どもたちが水遊びを楽しんだ。今後はバーベキューをしたり、テーブルを置いたりして半戸外のリビングとして活用したい」とIさんは話す。
 

リビングの東と南側の吹き抜け上部には大きな高窓を設けていて明るい。造り付けのテレビ台の下部には間接照明を設置。壁の照明は暖色系の光で温かみがあり、夜はムーディーな雰囲気を演出している。左奥のコートの掃き出し窓や和室のつり戸を開け放てば、リビングと一体となってより広々とした空間に
 


マスブロックを設けた1階コート。一部ひさしを設置し、日陰で涼むこともできる。
 

2階ベランダ。家族が楽しく過ごせる第2のリビングの仕掛けとして、壁をスクリーンにホームムービーなどの上映ができるよう、プロジェクター用の電源を設置(施主提供)


建物外観。杉板で模様づけした打ちっ放しのモダンなデザイン
 

1階和室。つり戸で敷居がなくすっきり。すりガラスの地窓が室内にやわらかな光を取り込む




ここがポイント
コートと高窓で開放感

西側は道路に面し、南北に建物が立つIさん宅。設計時、北側には5階建てのアパートが建築中だった。建築士の當山茂さんが重視したのは、プライバシーに配慮しつつ伸び伸び過ごせる空間。そのカギとなったのが1階コートとLDKの吹き抜けに設けた高窓、2階ベランダだ。

1階コートはマスブロックを設けて、光と風を取り込みながら外からの視線をゆるやかに遮断。高い建物がない東と南側に向け、LDKの吹き抜け上部には大きな高窓を設けた。「そうすることで、LDK、和室、コートまでひと続きに広々と使える。空へと視界が広がる高窓との相乗効果で開放感のある空間を演出した」と當山さん。

2階のベランダはアパート上階からの視線を遮るためにひさしを設置。壁も道路からも見えないようちょうどよい高さに調整した。「はだしのまま行き来できるベランダは、天気や人目を気にせず過ごせる家族の第2のリビングになる。今の子どもたちは家にこもりがちなので、外遊びを促すきっかけになれば」

施主からの要望で水回りの動線も工夫。キッチンの背後に水回りと収納をまとめ、寝室からウオークインクローゼットを経由して、リビングを介さずトイレ、洗面所、風呂場、洗濯機置き場に移動できるように設計した。


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども4人
敷地面積:234.48平方メートル(約71.05坪)
1階床面積:126.98平方メートル(約38.48坪)
2階床面積:27.34平方メートル(約8.29坪)
建ぺい率:52.63%(許容60%)
容積率:52.63%(許容200%)
用途地域:第一種中高層
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設計:建築空間アボット 當山茂
構造:(有)建築設計 庵 長間大輔
施工:(株)孝建設 西野義孝、西野哲博
電気:(有)中原電設 仲村直也、隆健二
水道:(有)山商 山下富一、翁長文高
キッチン:(株)クチーナ 福田美直
建具:野崎木工(株) 野崎達夫

問い合わせ
建築空間アボット
電話=098-937-7334
https://soft-beppu-1924.perma.jp/


撮影/矢嶋健吾 文/池原拓
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1999号・2024年4月26日紙面から掲載

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週刊タイムス住宅新聞編集部

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