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お住まい拝見

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2023年8月18日更新

風抜けるひと続きの家|(有)門[お住まい拝見]

[軒庇で熱負担を抑える]
仕切りが少ない続き間のUさん宅。幅8.9メートルの大窓から南風が家中に抜け、深い軒が直射日光を遮断。西日を遮る駐車場の庇(ひさし)も相まって、「室内に熱はこもらない。扇風機だけでも涼しく過ごせて、快適」とUさんは話す。

玄関側から室内を見る。大窓から周囲の山々が見え、開放感抜群。吹き抜けのリビング・ダイニングを覆うのは木屋根。四方にある高窓の効果も相まって曇天でも明るい
玄関側から室内を見る。大窓から周囲の山々が見え、開放感抜群。吹き抜けのリビング・ダイニングを覆うのは木屋根。四方にある高窓の効果も相まって曇天でも明るい


湿気感じずノーストレス

Uさん宅
 混構造/自由設計/家族4人 

「この家に住み始めてから、湿気が原因の湿疹が発症することなく、毎日がストレスフリーです」と笑うUさん。以前住んでいたマンションでは一日中、除湿器を使うこともあったが、「今は使う頻度は激減した。その代わりにLDKの窓を開けて、常に風が家中を抜けるようにしている。じめっとした感じはなく、窓は結露したことが一度もない」と実感を込める。西日の暑さにも悩まされていたが、「夕方、帰ってきても室内に熱がこもってないので、扇風機だけでも涼しい」と話す。

そんなUさん宅はLDKの木梁(はり)が印象的だ。天井高は3.3メートルと高く、四方の高窓から自然光が降り注ぐ。妻は「天気が悪い日でも室内は暗くなることが少ないので、びっくりした」と話す。

「大きなワンルームで開放感のある室内」も譲れなかった点だ。LDKから和室、子ども室などはひと続きにつながる。「子どもの様子がどこにいても分かる。視線が山にまで抜けるので、室内がより広く感じる」と夫婦は話す。

南の庭から見た外観。コンクリートの躯体上部に、木造の越屋根が載っているのが分かる。向かって左手、駐車場を覆う深さ約5メートルの軒は、室内に西日の熱が伝わるのを防ぐ役割も
南の庭から見た外観。コンクリートの躯体上部に、木造の越屋根が載っているのが分かる。向かって左手、駐車場を覆う深さ約5メートルの軒は、室内に西日の熱が伝わるのを防ぐ役割も
 

玄関。左に見える駐車場側の窓には目隠ししつつ光を取り込めるガラスブロックを採用。アクセントカラーはUさん家族が選んだ。玄関は二手に分かれており、シューズクローゼットから水回りへも抜けられる

玄関。左に見える駐車場側の窓には目隠ししつつ光を取り込めるガラスブロックを採用。アクセントカラーはUさん家族が選んだ。玄関は二手に分かれており、シューズクローゼットから水回りへも抜けられる

ウッドデッキから室内を見る。子ども室やキッチンは仕切りを設けず一体的に。青色の円は開閉可能な排熱窓で、室内の温まった空気を逃がしてくれる
ウッドデッキから室内を見る。子ども室やキッチンは仕切りを設けず一体的に。青色の円は開閉可能な排熱窓で、室内の温まった空気を逃がしてくれる

和室側から見た室内。雨戸を閉めても吹き抜け四方の高窓から差し込む光で明るさは十分。雨戸のカギを占めておけば、天気や時間、人目を気にせず窓を開けて通風できる和室側から見た室内。雨戸を閉めても吹き抜け四方の高窓から差し込む光で明るさは十分。雨戸のカギを占めておけば、天気や時間、人目を気にせず窓を開けて通風できる


面積倍も光熱費4割減

家づくりは4年前に土地を購入したことがきっかけ。以前から雑誌などでチェックしていた建築家に依頼した。夫婦は「デザインはもちろん、風や光を十分に生かしたプランが決め手になった」と話す。

住み始めて約2年。驚いたのは光熱費の安さ。「引っ越して床面積は2倍になったのに、光熱費は4割ぐらいに抑えられている」とUさん。

エコな生活を送るUさん一家。「ゆくゆくは家庭菜園の畑づくりや子どもが走り回れる庭づくりもしたい」と話す夫婦の言葉通り、体と環境に優しい暮らしのビジョンが膨らんでいた。

子ども室から南の庭を見る。室内に効率良く風を取り込む仕掛けの一つがウッドデッキ左手に見える袖壁。南西からふく風は壁にあたってリビングへ、南東からの風は和室の地窓へ入る
子ども室から南の庭を見る。室内に効率良く風を取り込む仕掛けの一つがウッドデッキ左手に見える袖壁。南西からふく風は壁にあたってリビングへ、南東からの風は和室の地窓へ入る
 

ブルーのアクセントカラーが爽やかなキッチン。シンクからガス台までコンパクトなL字型にまとめて使い勝手良く。背後の勝手口の先は物干し場になっている

ブルーのアクセントカラーが爽やかなキッチン。シンクからガス台までコンパクトなL字型にまとめて使い勝手良く。背後の勝手口の先は物干し場になっている
 

北西にある物干し場。周囲を透かし張りした木で囲い、上部は衝撃に強く透明なプラスチック板で覆うことで、通風・採光しつつ防犯にも配慮している

北西にある物干し場。周囲を透かし張りした木で囲い、上部は衝撃に強く透明なプラスチック板で覆うことで、通風・採光しつつ防犯にも配慮している

 

ここがポイント
熱 湿気を抑え体感温度を低く

Uさん宅の設計を手掛けた金城優さんは「風速1メートル毎秒の風が吹けば、体感温度が1度下がる。湿気を抑えたのも体感温度を下げることにつながる。施主の要望もあり、極力空調に頼らず過ごせるように、室内の熱と湿度を抑えつつ、家中に風が常に抜けるよう計画した=下断面図参照」と話す。



まず、風が南東から北西に抜けるよう、対角線上に開口を設置。風が入る南東側の窓には雨戸、風が抜ける窓外には木のルーバーを設けた。「これにより外出時でも常に風が取り込めるし、熱と湿気は外にはき出す」。

次に、直射日光をカット。LDKの南面は深い軒をかけ、雨端空間に。北西にまとめた水回りなどの緩衝空間と組み合わせることで、居室に熱を伝えにくくした。中でも特徴的なのは西日対策。「西日で温められた躯体に熱が蓄えられると、室内に放射され熱がこもる原因となる。5.2メートルの駐車場の庇(ひさし)が蓄熱を抑える役割を果たす」

ほかにも、湿気対策として、漆喰(しっくい)で壁を仕上げたり、床は無垢材を使ったりと調湿効果のある材を多用。躯体は蓄熱を抑えつつ台風に耐えられるよう、鉄筋コンクリート造の壁に、屋根の一部を木造の混構造にした。

これらの工夫でUさん宅は電気やガスなどの一次エネルギー消費量を同規模の住宅と比較して年間約45%抑えられ、国から環境への負担が少ない気候風土適応住宅の認定を受けた。金城さんは「空調など機器だけに頼らずとも、沖縄の気候風土を生かして快適に過ごせるすべはある。直射日光を遮る軒庇や風の取り入れ方、緩衝空間といった伝統的な建築手法を基にした計画が重要」と話す。


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:472.10平方メートル(約143坪)
1階床面積:117.30平方メートル(約35坪)
建ぺい率:34.13%(許容60%)
容積率:24.85%(許容200%)
用途地域:無指定地域
躯体構造:混構造(鉄筋コンクリート造、一部木造)
設計:(有)門 金城優、金城祐美子
構造:建築設計 庵
施工:(有)古波蔵組 
電気:(有)大伸電設工業
水道:(有)上宏工業


問い合わせ
(有)門
電話=098・870・0303
https://www.jo-disegno-studio.com


撮影/比嘉秀明 文・市森知
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1963号・2023年8月18日紙面から掲載

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週刊タイムス住宅新聞編集部

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