[沖縄・お住まい拝見]内外に多くの居場所|(株)新垣工務店|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

お住まい拝見

お住まい拝見

2022年8月26日更新

[沖縄・お住まい拝見]内外に多くの居場所|(株)新垣工務店

[小屋の屋根から海眺める]境さん(42)宅は、上下階が大きな吹き抜けでつながる木造2階建て。開放的なリビングやデッキ、隣接する小屋の屋根など、いろいろな場所で海を眺めながら居心地良く過ごせる。

庭から見た外観。地面を盛り土したことにより、2階ベランダや小屋の屋上だけでなく、1階からも海が見える。広いデッキはLDKとつなげて使うことができ、「中と外の一体感が気持ちいい」と境さん。友人らが集まったときには、遠くに見える海を眺めながら、バーベキューなどを楽しむ(比嘉秀明撮影)

家族で朝ヨガ

境さん宅
木造/自由設計/家族4人

石垣に挟まれた細い路地が行き交う古い集落。その一角に建つ自宅について、境さんは「たくさんの居場所があるのがいいんですよ」と話す。

1階はLDKや子ども室、2階には寝室とワークスペースがあり、上下階は大きな吹き抜けでつながる。木をふんだんに使った内装に加え、ガラリ付きの建具や独特な形のブロックが、家族の好きなインドネシア・バリ島の雰囲気を演出している。

ワークスペースの端には、玄関ホールの吹き抜けを利用して張られたネットがある。長女(8)や長男(4)がアスレチックのように遊んだり、夫人が寝る前の読書スペースとして使う。

2階バルコニーからは小屋の屋上に出られる。遠くには海も見え、「この家一番のビュースポット」と境さん。夕暮れ時には、海に沈む夕日を眺めながらのんびり過ごすという。

しかし、夫婦が「一番のお気に入り」と声をそろえるのが約7坪のデッキ。LDKの窓を開ければ一続きの空間として使うことができ、日曜日の朝には夫人(43)がそこでヨガやストレッチ。境さんや子どもたちも一緒だ。最近はラジオ体操もしているという。夫人は「みんなで寝転がって空を見上げると自然と一つになっている感じ。そのままデッキで朝食をとることもありますよ」と屋外も暮らしの空間として楽しんでいる。


大きな吹き抜けと大開口で開放的な1階LDK。ふんだんに使われた木や、壁のしっくいによって、ぬくもりを感じる。手前側にある子ども室は、子どもが幼いうちは仕切らずに、リビングの一部として広く使っている

玄関ホール。正面はサーフボードやウエットスーツを置くスペース、右手は玄関ドア、左手には土間テラスへと通じるドアがある

同じ趣味で話スムーズ

サーフィンが趣味の境さん。住宅取得を考えていた時、サーフショップの主人に、同じ店に通う工務店の代表を紹介してもらった。境さんは「趣味が同じなので、友達のように話を進められたし、必要なものを分かってくれていた」と話す。

例えば玄関ホールには、サーフィン道具の収納スペースがあるほか、土間テラスに通じるドアが設けられている。「サーフボードを洗ったり、庭仕事をしたりと、作業をするのはほとんど庭側。駐車場からも家の中からも、庭への行き来がラクで、かなり使い勝手がいい」

そう話す境さんは現在、庭でたき火スペースを製作中。「涼しくなったらキャンプをしたい」と笑顔を見せる。居心地のいい場所がまた一つ増えそうだ。

 


ここがポイント
全て造作の建具類
現場合わせで便利


境夫婦が求めたのは「海が見えるアジアンチックな木造」。そこでまず新垣工務店の新垣太志さんは「盛り土で地面を60センチ上げて、1階LDKからでも海が見えるようにした」と話す。

躯体はもちろん木造で、外壁は板張り、内装も木質系壁材やしっくいだけを使った。そこに夫婦が購入したアジア風の建材を取り入れつつ、ガラリのついた引き戸などを造り付けることで、よりアジアの雰囲気を出した。

その他の家具や建具も全て、大工でもある新垣さんらが造り付けた。しかも現場で調整したという。「扉の開き方や、棚板の数などの使いやすさは図面だけではイメージしにくい。そのため、夫婦に現場に来てもらって決めていった」

室内でより快適に過ごせるようにと、樹脂サッシと複層ガラスを採用した窓や、外張り断熱などによって、外からの熱の影響を受けにくくした。さらに、建物に隙間がないよう施工し、高い気密性も確保。実際、境さんも「2階のクーラーをつけるだけで家全体が冷えます」と話す。

間取りはシンプルながら、家族の変化にも対応。例えば、2室に仕切れる子ども室は、将来不要になることを見据え、ベッドや机を撤去しやすいように設置した。

メンテナンスのしやすさにも配慮。手に入れやすい建材で仕上げたほか、床下点検口を多めに設けたりもしている。外壁は水にぬれやすい地面から1メートルまでを上部と切り離して施工することで、劣化しても張り替えやすいようになっている。


キッチン。本来は壁付け用だが、新垣さんらがアイランド型に加工した。独特な形のブロックも取り入れ、アジアンチックな印象


キッチンの収納。家具や建具は全て、扉の開き方などを現場で調整しながら造作した


2階寝室。ここだけ壁に囲まれて独立しているため、夜遅くまでの来客でも静かに眠れる。
左の窓からはリビングが見える

 


2階ワークスペース。本棚は壁内の空間を利用したもので「本棚の中の縦に通る太い木材は家を支える柱です」と新垣さん



ワークスペースの端に張られたネットで遊ぶ長男。夜には子どもたちが寝転がりながら、プロジェクターで壁に映した映画を楽しむ


1階子ども室。子どもたちが大きくなれば2室に仕切れる

[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:530.06平方メートル(約160坪)
1階床面積:69平方メートル(約20坪)
2階床面積:35.37平方メートル(約11坪)
建ぺい率:14.21%(許容60%)
容積率:19.69%(許容200%)
用途地域:未指定
躯体構造:木造軸組構法
設計:(株)新垣工務店 新垣太志
   (株)kapok
   LGO設計事務所
構造:あとりえ鯨
施工:(株)新垣工務店
電気:吉電設
水道:(有)正設備興業

問い合わせ
(株)新垣工務店
電話098-945-5747
https://www.arakaki-koumuten.com/company/


撮影/比嘉秀明 取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1912号・2022年8月26日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
出嶋佳祐

これまでに書いた記事:224

編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

TOPへ戻る