お住まい拝見
2022年6月10日更新
[沖縄・お住まい拝見]30坪にBARと住宅|間+impression
[小さな空間を機能的に使う]約24坪の住まいに約6坪のBAR(バー)を併設。施主のYさんは週末だけバーテンダーに変身する。家とバーをつなぐのは床下収納の「倉」。コンパクトな空間を機能的に使う。
店と家つなぐ床下の「倉」
Yさん宅
RC造/自由設計/家族5人
新居は、長年の夢と家族の生活を両立するための拠点だ。約24坪の住まいに11席(約6坪)のバーを併設。それぞれ広さは最小限だが「隅まで手や目が届く」とYさん。
住宅部は、16畳のLDKと4・5畳の寝室、水回りなどがあり、半階上がったところに3畳×3室の子ども室(今は一部屋にして使っている)がある。子ども室の下は約12畳の床下収納“倉”だ。「ウチは物が多いので、倉はどうしても造りたかった。多数の実績のある建築士さんにお願いしました」と夫人は話す。
蔵の天井高は1・4メートル。階段下から身をかがめて入れば、秘密基地のような空間が広がる。バーと住居はこの倉を通してつながる。「ここはバーの倉庫であり、通路でもある。なくてはならない空間」
「収納部屋」を随所に
長男は中学1年生、次男は小学校5年生、そして長女は6歳。年頃の子がいる5人家族の家としてはコンパクトだが、居場所は多い。ダイニングで宿題にいそしみ、子ども室や階段、リビングの出窓でゲームに熱中。一人になりたいときは蔵にこもる。「皆、好きな場所で好きなことをしています。だから広くはないけど、窮屈でもない」と夫人。
窮屈さを払拭しているのは、「収納部屋」の力も大きい。キッチンの脇には2・8畳のパントリーを、脱衣所のそばには2・3畳のファミリークローゼットを設けた。大容量の倉も活用し、すっきり暮らす。
バーは、打ち放しの内装やコンクリートブロック製のカウンターなどが男前な雰囲気。厨房(ちゅうぼう)は客席より45センチ下がっているため、調理をするYさんと、座っている客との目線が合う。レストランなどで磨いた腕を振るいながら会話を楽しむ。「今は週末の夜のみの営業。慣れてきたら少しずつ営業時間を増やしたい」。インテリアなど細部までこだわったわが城を眺め、満足げに語った。
住居部分のLDKから子ども室を見る。写真奥に向かって高くなる勾配天井で、一番高いところは4メートルある。そこに半階上げた子ども室、下に12畳の蔵を設けた。階段下に出入り口がある
半階上がった場所にある子ども室。3人分のベッドと収納があり、将来は三つに仕切れるようになっているが、今は一部屋にしている
リビング。テラスに面した出窓がチェア代わり
子ども室下の倉には、たくさんの物を収納している。バーへもつながっていて、バーのパントリーや通路としても活用
ここがポイント
床面積不算入の出窓や倉を活用
約50坪、建ぺい率が60%の敷地のため、最大約30坪の建築面積の中で、住居とバーをつくる計画となった。「バー部分に関しては、Yさんが希望する席数(10席程度)を確保しながら必要最小限を目指し、住宅部をなるべく大きく取るように調整した」と設計を手掛けた間+impressionの儀間徹さんは話す。
「バーは、厨房(ちゅうぼう)機器や席の間隔、廊下の幅まで図面に落とし込んで、徹底的に無駄なスペースを省いた」と説明する。広さは最小限ながらも、高い天井が圧迫感を軽減。最も天井高があるのは北側にあるバーなどで4メートル、住居部のLDKは最高3・5メートルある。
住宅部は「寝室は4・5畳、子ども室は3畳×3室と小さく抑え、LDKや収納部に面積を割いた」。限られた空間に広がりを持たせるため「リビングとテラスの間の窓は、あえて床から40センチ上げて出窓にした。出窓は、条件を満たせば床面積に算入されず、ベンチ代わりになる。同じく“倉”も天井高が1・4メートル以下など条件を満たせば不算入となる。それらを活用しながら、Yさんの希望をかなえた」と説明した。
バーは全11席。厨房部は45センチほど下がっていて、座っている客と調理するYさんの視線がちょうど合うようになっている
写真奥の扉は、住居部の倉へとつながる。「倉はバーのパントリーでもあり通路でもある。とても助かっている」とYさん
バーのトイレもコンパクトだがおしゃれ
昼の外観。西原町の緑を背負い、かわいらしい形が映える
住居部の扉は玄関でなく門扉。もう一つ内側に玄関扉がある
写真右側の出窓や階段下の蔵がポイント
[DATA]
家族構成:夫婦、子ども3人
敷地面積:165.18平方メートル(約49.96坪)
1階床面積:99.04平方メートル(約29.96坪)
BAR/29.95平方メートル(約6.33坪)
住宅/78.09平方メートル(約23.62坪)
建ぺい率:59.96坪(許容60%)
容積率:59.96坪(許容200%)
用途地域:第一種中高層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート壁式構造
設計:間+impression 儀間徹
施工:(有)仲真組 仲真敏幸、宮城正和
構造:建築設計庵 長間大輔
電気:喜友名電気 喜友名盛久
水道:(有)ライフ工業 我喜屋奨
◆問い合わせ
間+impression
電話098・892・3635
http://ma-impression.com/
撮影/比嘉秀明 取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1901号・2022年6月10日紙面から掲載
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 東江菜穂
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。