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2022年6月3日更新

[沖縄・お住まい拝見]海と風、光を感じて|(有)門一級建築士事務所

[琉球石灰岩が魅力の平屋]アウトドア好きの金城さん(41)が求めたのは、「海と水、自然を感じられる家」。随所に中庭と吹き抜けを設け、琉球石灰岩をフル活用した平屋は、心地よい風と光に満ちている。

琉球石灰岩の外壁と水盤が印象的な中庭に面した1階のLDK。リビングは吹き抜けで、開放感たっぷり。石のすき間からも入る風が水盤の気化熱で冷やされ、室内に心地よく届く


アウトドア感覚で楽しむ

金城さん宅
RC造/自由設計/家族6人

 

籠の中にランダムに積み重なった琉球石灰岩と、スギ板模様のコンクリート打ち放しの壁がコントラストを織りなす金城さん宅。室内の壁には、磨かれた琉球石灰岩を用い、洗練された風合いを楽しむ。

吹き抜けになったリビングは、南北二つの中庭の間にあり、掃き出し窓を開けると屋内外一体に。「アウトドアが好きで、外と内の境界を感じない家にしたかった。石積みのすき間から入る、光の変化を見るのも楽しい。毎日、毎時間違うから飽きないです」と金城さん。夏場は水盤で子どもたちが水遊び。中庭では、テントを張ってバーベキューやキャンプを楽しむ。

中庭を挟んだ北側には寝室があり、こちらも掃き出し窓から直接、中庭へアクセスできる。「ベッドからきれいに空が見えて、気持ちがいい」

木の質感を重視して選んだキッチンは、夫人のこだわり。「大きく、使い勝手良く。家電類はすべて収納内に隠して、スッキリです」
 

リビングから北側の中庭、寝室を見る。掃き出し窓を開け放つと、中庭から寝室までひと続きに。飼っている鳥のさえずりがアウトドア感を高める
 

木の質感にこだわって選んだキッチン。背面には美しい琉球石灰岩の壁



国際色も豊か
豊見城市の新興住宅地に土地を購入。雑誌を見てイメージを膨らませ、いくつかの建築会社に足を運んだ。納得のいくプランに出合えず、4年が経過。通りがかりで見かけたおしゃれな建物の建築士事務所に、「ここだ!」と夫人の直感が働いた。「相談したら、とても話しやすくて。提案された図面を見て、すぐに決めました」

金城さんが石材販売を手掛けているため、トイレの手洗いはブラジル産、洗面台はインド産の御影石で造作。「新居に置きたくて建築前に購入したダイニングテーブルは、アフリカ産の一枚板。気に入ったものを選んでいたら、いつの間に世界各地のものが集まっていた」と笑う。自然と世界を感じる住まいで、変化する毎日を楽しんでいる。


琉球石灰岩の壁と水盤がアクセントになった南側の中庭。リビング(写真左側)からも、ダイニング(正面)からも出入りできる。岩のすき間を抜けて入る光と風も心地いい


中庭。あえて薄くしたひさしが額縁のように空を切り取り、絵画のような風景に


ここがポイント
中庭・吹き抜けで開放

敷地は、遠浅の海を埋め立て造成した住宅地。周りには5、6階建ての集合住宅も並ぶ。新興住宅地の中、上層階から見下ろされる立地で平屋を建てるにあたり、建築士の金城豊さんは「昔ながらの沖縄の風景や文化、海の要素を感じられる家づくり」を提案。着目した建材は、施主が販売を手がける琉球石灰岩だった。

外壁は、スギ板で模様付けしたコンクリート打ち放し。その内側にもう1枚、琉球石灰岩で壁を設けた。「気軽な造りにしたい」と、鉄筋で編んだ枠の中に、形も大きさも違う小石を入れて仕上げた。「程よく隙間ができ、光や風の通り道に。植物が根付けば、将来は緑に包まれた空間になります」と金城さん。


南側の外観。コンクリート打ち放し、琉球石灰岩、そして玄関ポーチの木。異なる建材の風合いが折り重なった、個性的なたたずまい

室内は、壁や天井に挟まれている感覚をなくし、外とのつながりを高めるため、水平と垂直、両方向への抜けを重視。まずは、LDKを挟み込むように大きな中庭を2カ所配置。光や風が通り抜けるよう計画した。一方、プライベート空間は東側に子ども部屋、西側に水回りと、東西に振り分けた。トイレや浴室など、水回りは3カ所に坪庭を設けて採光と換気を促し、居住性を高めた。
 

坪庭を設けた浴室と玄関ホール。浴室はデッキとして活用。玄関は水盤で癒やしを演出する


また、リビングと寝室、東西の廊下の4カ所を吹き抜けに。廊下は天井高を高くすることで圧迫感をなくし、外側には、琉球石灰岩の壁を眺めることができるよう窓を設けた。「朝、夕は、石の間から入る陽の光が、窓越しに壁や天井に反射して、さまざまな表情を見せる。1日、そして1年を通して変化が楽しめます」

生活感を感じるものは、全て収納やバックヤードに収めた。寝室裏手にウォークインクローゼットを配置。水回りに直接行き来できるようにして、洗濯もスムーズ。キッチンは、家電を全て脇の収納に収めた。パブリック空間に入った瞬間、目に留まるキッチン背後の壁は収納を腰高に収め、琉球石灰岩を美しく見せる。
 

吹き抜けになった西側の廊下。太陽が傾くと、外壁の琉球石灰岩のすき間から光が入り、壁に反射。時間とともに変化する光の形、角度を見ているだけで癒やされる
 

寝室。天井が高く、ベッド正面の掃き出し窓の外は中庭になっていて、自然を感じられる



[DATA]
家族構成:夫婦、子ども4人
敷地面積:361.99平方メートル(109坪)
1階床面積:196.11平方メートル(59.32坪)
建ぺい率:109.50%(許容50%)
容積率:46.58%(許容100%)
用途地域:第一種住居地域
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設計:(有)門一級建築士事務所
構造:建築設計・明
施工:(株)総合土木
電気:E・マックス
水道:(株)中央設備

問い合わせ
(有)門一級建築士事務所
電話098・888・2401
https://www.jo1q.com/


撮影/比嘉秀明 取材/比嘉千賀子(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1900号・2022年6月3日紙面から掲載

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週刊タイムス住宅新聞編集部

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