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2022年5月13日更新

[沖縄・お住まい拝見]道路に閉じ実家に開く|サイアスホーム(株)

[塀を設けず住居広くとる]車通りの多い路地に挟まれたAさん宅。だが塀がない。住居を敷地いっぱいに建て、外壁を塀代わりにする。そのため窓は最小限。唯一、隣の実家側に開く。

Aさん宅は塀がなく、外壁が塀代わり。そのため道路側の窓は、小さくし目線より高い位置に設けている。写真右側には実家が建つことから、既存の塀の上部を取り払い、行き来しやすくした
Aさん宅は塀がなく、外壁が塀代わり。そのため道路側の窓は、小さくし目線より高い位置に設けている。写真右側には実家が建つことから、既存の塀の上部を取り払い、行き来しやすくした


オープンで広々LDK


RC造/自由設計/家族5人

敷地いっぱいに住居を建て、外壁を塀代わりにしているAさん宅。窓は少ないが、室内にはしっかり自然光が差し込む。小さな高窓や天窓が役割を果たしていると同時に、「実家の隣の土地を購入できたので、実家側だけは大きな窓を造ってもらった」ため。リビングに面した掃き出し窓が、集いの場に開放感をもたらす。

実家との間には既存の塀があったが、行き来しやすいよう上部を取り払って約40センチ高さにした。「視界も広がり、実家の庭をわが庭のようにめでています」と笑う。

以前は築50年ほどの借家に住んでいた。「部屋が細切れになっていて閉塞(へいそく)感があった」ことから、新居のLDKは和室まで含めて約27帖と広めに取った。オープンな造りも、広がりを感じさせる。

夫人は「物が多いので収納もたっぷり欲しかった」と話す。LDKの面積を確保しつつパントリーやファミリークローゼットなども設けると、敷地いっぱいに住居を建てるプランが適していた。「道路との近さが心配だったけど、LDKや寝室は道路から離れた場所に設けてもらっているので、普段はあまり気にならない」と話す。


家族に目が届くオープンなLDK。大きな窓が少ないA邸だが、隣接する実家側だけ掃き出し窓を設けた
家族に目が届くオープンなLDK。大きな窓が少ないA邸だが、隣接する実家側だけ掃き出し窓を設けた

 

琉球畳を使った和室。段差が無くLDKとひと続きになっている

琉球畳を使った和室。段差が無くLDKとひと続きになっている



調湿・消臭効果を実感
建築会社選びでは、あちこちの完成見学会に足を運んだ。決め手は「自然素材を使った家造りと、シンプルなデザイン」と話す。

炭化コルクや漆喰(しっくい)、無垢(むく)材を使った新居は「湿度が高い日でもジメジメしない。ダイニングで焼き肉をした翌日、まったく臭いが残っていないことにも驚いた」と機能性を実感している。

夫人は「デザインはシンプルだけど、出入り口をアーチ型にしたり玄関前に花ブロックを取り入れたり、さりげなくかわいい見た目も気に入っている」と笑顔。Aさんは「結構、わがままを言った。でもそのおかげで、全体的に後悔なく家造りができた」と満足感をにじませた。

 

基本的にシンプルなデザインのA邸だが、出入り口やニッチ(小物を飾るくぼみ)のアーチが優しい雰囲気を演出

基本的にシンプルなデザインのA邸だが、出入り口やニッチ(小物を飾るくぼみ)のアーチが優しい雰囲気を演出

 

キッチンのそばには夫人の要望でパントリーを設けた(写真右側)

キッチンのそばには夫人の要望でパントリーを設けた(写真右側)

 

キッチンの近くに洗面洗濯室や、物干し場(奥の勝手口から出入り)がまとまる。物干し場の扉からも風や光が通る

キッチンの近くに洗面洗濯室や、物干し場(奥の勝手口から出入り)がまとまる。物干し場の扉からも風や光が通る



ここがポイント
敷地を最大限に活用

必要な居室と駐車スペースを確保するため、「敷地を最大限に活用した。塀を設けず目いっぱいに居住スペースを設定し、窓の少ない外壁でプライバシーも守っている」と話すのはサイアスホーム(株)のプランナー・儀保史郎さん。「道路側の窓は小さめにして、外から室内が見えないよう高めの位置に設けている」

「ただし隣はご実家のため、そこだけは大きく開いて天窓付きのテラスを設けた。光を存分に取り入れつつ、隣の庭とテラスが一体化するようにつながりを持たせている」。さらに、家の中央にあるキッチンには天窓を設けるなどして、暗くならないよう工夫を凝らしている。「結果的に外構工事費がほとんど掛からず、コスト削減になった」

掃き出し窓の外にはタイル張りのテラスがある。その奥は実家
掃き出し窓の外にはタイル張りのテラスがある。その奥は実家

テラスの上部は天窓付きの屋根があり、光を通しつつ雨を防ぐ
テラスの上部は天窓付きの屋根があり、光を通しつつ雨を防ぐ
 

実家との間には既存の塀があったが、上部をカットして約40センチ高さにした

実家との間には既存の塀があったが、上部をカットして約40センチ高さにした


住居と道路の距離が近い分、騒音対策も必要だ。同社では防音性・吸音性のある炭化コルクを断熱材として壁や天井に使っているほか、「道路側には駐車場や水回りなどを緩衝帯として配置。家族が集うLDKや寝室は静かに過ごせるよう配慮している」。

デザイン面では、漆喰(しっくい)壁がポイント。「クロス張りと比べて、曲線を造りやすい。Aさん宅は出入り口やニッチをアーチ型にした。漆喰の質感と相まって、優しい雰囲気を演出できた」と儀保さんは話した。
 

道路に面した側には、小さな高窓があるのみ
道路に面した側には、小さな高窓があるのみ
 

寝室。勾配屋根のA邸で、一番天井高があるのが寝室。高さは3.3メートル。そのおかげで、約6帖と小さめの寝室でも伸びやかだ

寝室。勾配屋根のA邸で、一番天井高があるのが寝室。高さは3.3メートル。そのおかげで、約6帖と小さめの寝室でも伸びやかだ
 

ファミリークローゼットから、室内物干し場がある洗面洗濯所、脱衣所、浴室が一直線につながり、「洗濯がラク」と夫人。道路との間の緩衝帯にもなっている

ファミリークローゼットから、室内物干し場がある洗面洗濯所、脱衣所、浴室が一直線につながり、「洗濯がラク」と夫人。道路との間の緩衝帯にもなっている

 



[DATA]
家族構成:夫婦+子ども3人
敷地面積:201.97平方メートル(約61坪)
1階床面積:128.27平方メートル(約38.8坪)
建ぺい率:60%(許容70%)
容積率:200%(許容200%)
用途地域:第一種住居地域
躯体構造:鉄筋コンクリート壁式構造
設計:サイアスホーム(株) 儀保史郎
施工:サイアスホーム(株)
電気:友心電設
水道:金秀工業

問い合わせ
 サイアスホーム(株)
 電話098・938・2458
 https://www.saias-home.co.jp/


撮影/矢嶋健吾 取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1897号・2022年5月13日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
東江菜穂

これまでに書いた記事:351

編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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