お住まい拝見
2022年4月8日更新
[沖縄・お住まい拝見]中庭囲むドーナツ形|LSDdesign
[外周は閉じ喧騒(けんそう)シャットアウト]Gさん(36)宅は、住居の中心に中庭があり、ぐるりと一周できる“ドーナツ形”。交通量の多い住宅地に建つが道路側の窓は最小限にしているため、驚くほど静かだ。
遊べて機能的な回遊型
Gさん宅
RC造|自由設計|家族4人
外から見ると窓はほとんどないが、室内に入れば大きな窓から光が注ぐ。Gさん宅は住居の中央に中庭がある、ドーナツ形のコートハウスだ。4歳と2歳の息子たちは「ぐるぐる駆け回って遊んでいます」と夫人(36)は話す。
中庭を設けた分、床面積は狭くなるが「静かな寝室」「開放的なリビング」「家族に目が届く造り」を求めたGさん家族にはぴったりの選択だった。
実家や学校に近い「希望通りの土地を購入したが、三方を道路に囲まれていて、交通量も多い。唯一、騒音だけが心配だった」とGさん。だが、「コートハウスにしたおかげでまったく気にならない。特に寝室は、道路から一番離れた場所にあるので、理想通りの静けさ」と満足顔だ。
LDKは中庭からたっぷり光が差し込み、明るく広々としている。Gさんがコレクションした椅子がおしゃれ。インテリアが好きなGさんは照明などもこだわって選んだ ※写真は一部加工しています
コレクション楽しむ
回遊型のG邸。LDKから和室、子ども室までの半円が「表動線」。寝室と水回りをつなぐ半円は「裏動線」だ。
寝室から、ウオークスルークローゼット(WSC)、洗面室へぐるりと移動しながら身支度して表へ出る。無駄のない生活動線だ。さらに「洗濯・乾燥機のある洗面室とWSCが隣接しているので、洗濯も時短になっている」と夫人は喜ぶ。
機能性だけでなく、趣味も存分に楽しんでいる。自他共に認めるコレクター気質の夫妻で、随所の飾り棚には夫人の好きなアニメのキャラクターが並ぶ。押し入れには小窓を設け、夫人お気に入りの布団カバーの顔が見えるようにしてもらった。
夫は椅子を収集。落ち着いた空間にスタイリッシュな椅子がマッチしている。
機能的な家だが、「建築士選びの決め手はデザイン性だった」とGさんは話す。意匠面こそ妥協せず、理想の住まいをかなえた。
床の間の壁はデニム製。押し入れは、夫人お気に入りのアニメキャラの顔が見えるよう、窓も造ってもらった
子ども室は6枚の引き戸で仕切ることができる。両端はすりガラス製 ※写真は一部加工しています
洗濯・乾燥機のある洗面室(手前)から左奥のウオークスルークローゼットが一直線に並ぶ。写真中央の出入り口はキッチン背面につながる。水回りもぐるりと回遊できて「家事がすごくしやすい」と夫人
夫人の要望で、玄関のそばに手洗い場を設けた。「コロナ禍だから、ではなく普段から外出後は手洗いが習慣なんです」
ここがポイント
多角形の敷地の形状
そのまま住居の形に
住居は多角形の敷地ラインをそのまま平行移動させた形。その理由を「Gさんが要望する居室の面積と建ぺい率が拮抗(きっこう)していた。面積の最大化を目標として、敷地形状に相似の形となった」と、同邸を手掛けたLSDデザインの建築士・比嘉幹さんは説明する。
そして、周囲の喧騒(けんそう)を遮りつつ自然を取り込むために「道路に面する外壁は極力閉じて、居室の中心に中庭を据え、ドーナツ状の間取りとした」。デッドスペースを極力なくすため、中庭も敷地ラインと同様の形となっている。
“ドーナツ形”のG邸は家全体が通路とも言えるが、「単なる通路が一つもない」と同社の建築士・山岸広幸さん。例えば、寝室側から洗面室へ続く通路はウオークスルークローゼットに、中庭の東側の廊下は日当たりが良いことから室内物干し場として活用。子ども室前の通路は、引き戸を開け放って居室の延長として利用する。
造作家具が多いのも特徴。「コレクター気質のGさん夫妻は、飾りたいアイテムが多く、それに合わせてサイズや位置を決めた」。ぴったり合った造作家具のおかげで空間がすっきりし、Gさんが吟味したインテリアも映える。
建築士は、Gさん宅を「ヒドケイノイエ」と呼ぶ。「自然の移ろいを感じながら、家族の生活を刻む住宅であってほしい」と話した。
駐車場側から見た外観。交通量の多い道路沿いには窓がほとんどない。「そのおかげで室内はとても静か」(写真提供/LSDdesign)
空撮写真で見ると、外周は閉じて中央に開いているのがよく分かる(写真提供/LSDdesign)
カウンターに付随する収納も造作。左側は夫人のコレクションである、ミニチュアピアノを飾るために造ってもらった
書斎も中庭から光が注ぐ。窓に取りつけたアイアンの飾り棚がおしゃれ。夫妻のコレクションなどを飾って楽しんでいる
[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:216.67平方メートル(約65.54坪)
一階床面積:116.59平方メートル(約35.27坪)
建ぺい率:57.27%(許容60%)
用途地域:第一種中高層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート造壁式構造
設計:LSDdesign
比嘉幹、山岸広幸
施工・構造:LSDdesign
電気:川満電気
水道:HYS企画
◆問い合わせ
LSDdesign
電話098・894・4282
https://www.lsd-design.co.jp/
撮影/フォトアートたかの 高野大 取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1892号・2022年4月8日紙面から掲載
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 東江菜穂
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。