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2022年4月1日更新

[沖縄・お住まい拝見]20坪で無駄なく快適|アトリエPAD一級建築士事務所

[三角地に職住一体の木造]コンセプトは「小さな土地に建つ、小さな木造の家」。18坪の三角地に、2階建てで床面積20坪の店舗兼住宅を建てた野村さん(42)。無駄のない空間使いが快適さのカギだ。

2階のリビング・ダイニング。ブルーグレーの壁色をアクセントに、シャビーな雰囲気のアメリカン家具を組み合わせたシックな空間。壁はペンキ仕上げで、夫妻が友人らとペイントした
2階のリビング・ダイニング。ブルーグレーの壁色をアクセントに、シャビーな雰囲気のアメリカン家具を組み合わせたシックな空間。壁はペンキ仕上げで、夫妻が友人らとペイントした


手をかけ愛着

野村さん宅
木造|自由設計|家族3人

落ち着いたブルーの外壁が目をひく、野村さん宅。「樹脂系のサイディングボードは雨風、紫外線に強いと教えてもらい、外壁材に採用。ひと昔前のアメリカの住宅のような外観に合わせて、内装の色使いと仕上げ方を決めました」と野村さん。

建物は木造2階建て。1階が夫妻の仕事場で、2階が自宅だ。以前はアパート住まいで、「仕事のスペースが生活空間を圧迫し、暮らしづらさを感じるように。新築して仕事場を分けたことで、妻と娘のストレスが減りました」

2階の自宅は11坪弱。LDKに水回り、寝室と、部屋は必要最低限に絞った。お気に入りのアメリカン家具を置いたリビングダイニングは天井が高く、広々とした印象。

寝室として活用するのは、キッチン上部にあるロフト。「家族一緒に、リビングで過ごすのが習慣。ロフトに居てもリビングの気配を感じられるから、娘(11)も安心して一人で寝てくれるようになりました。改めて、狭くてよかった」と夫人(36)。

間接照明で落ち着いた雰囲気に仕上げたキッチンと、水回りの動線の良さも、夫人のお気に入り。「浴室に向かう途中に洗濯機置き場があるから、すごく便利なんです」
 

家族3人が眠る寝室として活用するロフトもスッキリ、シンプル。ベッドの足元側には収納家具を配置して、スペースを有効活用する
家族3人が眠る寝室として活用するロフトもスッキリ、シンプル。ベッドの足元側には収納家具を配置して、スペースを有効活用する
 

リビングからキッチンとロフトを見る。キッチンの天井高を抑えて、上部にロフトを設けた。ロフトへは、はしご状になった階段を使って上り下り。オープンな空間だから、ファンを回せばリビングのエアコン1台で家中快適な室温に

リビングからキッチンとロフトを見る。キッチンの天井高を抑えて、上部にロフトを設けた。ロフトへは、はしご状になった階段を使って上り下り。オープンな空間だから、ファンを回せばリビングのエアコン1台で家中快適な室温に

変化を楽しむ

「選択肢は、木造1本でした」と夫妻。住んでいたうるま市石川で、予算と希望を満たす土地を購入、友人の紹介で出会った建築士に、設計を依頼した。「限られた面積の中で私たちのこだわりをくみ取るだけでなく、生活動線までしっかり考えて提案してくださって。建築士さんに感謝」

窓の配置や使う建材にもこだわり、壁は、夫妻と友人たちで塗装。「自分たちで手を掛けた分だけ、愛着がわきます」。暮らし始めてから、キッチンやカウンターなどをDIYでカスタマイズして楽しんでいる。

物が増えないよう、半年ごとに断捨離も。「娘の成長に合わせて、空間の使い方も変わってくる。限られたスペースをどう生かして、どう変化していけるか。チャレンジでもあり、楽しみでもありますね」と話した。


ここがポイント
屋根裏まで有効活用

敷地は、車通りの多い道路に面した、約18坪の三角地。上下階で職住の空間を分けたいという要望を受け、建築士の饒平名知善さんは、敷地を無駄なく活用できるよう、建物の形と配置を三角形に近づけるプランを提案した。
1階北側に、野村さんの店舗を配置。「店舗と2階の住居部分へは、広い玄関ホールからアプローチとする計画にして、省スペース化を図りました」と饒平名さん。4・3畳ある玄関ホールは、夫人の仕事スペースも兼ねる。

2階の住居は、LDK上部を勾配屋根に。南西から北東に空間が高く広がっていく造りにし、屋根裏までの高さを有効活用した。北側にあるキッチンは天井高を2・1メートルに抑え、その上部に、屋根裏スペースを利用したロフトを配置。寝室として活用できるようにした。暮らしやすさにも配慮。「キッチンと行き来しやすい西側に水回りをまとめることで、コンパクトな家事動線になりました」

野村家の大きな特徴の一つが、窓の設け方だ。紫外線の透過を極力減らしたいという希望から、窓数を最小限に。その分、間接照明を多用して明るさを補い、落ち着きのある空間になっている。窓数を減らすと、コスト削減や省エネ効果、壁面活用度のアップといったメリットもある。「まず、サッシにかかる費用が減ります。日差しによる室温上昇も少なくなるため、熱環境も安定します。壁が多くなる分、収納を設けたり絵を掛けることもできますし、エアコン設置場所の選択肢も増えます」と説明した。
 

西側の外観。ブルーの壁、屋根が目をひく建物は、敷地に合わせて三角形に近い形になっている。1階には、雨にぬれずに家に出入りできるよう、ガレージを併設した

西側の外観。ブルーの壁、屋根が目をひく建物は、敷地に合わせて三角形に近い形になっている。1階には、雨にぬれずに家に出入りできるよう、ガレージを併設した

 

1階の玄関ホール。土間になっていて、一角は夫人がネイルサロンとして活用。空間のアクセントにしているブルーグレーの引き戸が、2階への出入り口

1階の玄関ホール。土間になっていて、一角は夫人がネイルサロンとして活用。空間のアクセントにしているブルーグレーの引き戸が、2階への出入り口
 

1階の店舗。カイロプラティックの施術を行う個室ということもあり、壁の1面だけアクセントカラーを用い、間接照明を生かして落ち着いた雰囲気に仕上げた

1階の店舗。カイロプラティックの施術を行う個室ということもあり、壁の1面だけアクセントカラーを用い、間接照明を生かして落ち着いた雰囲気に仕上げた
 

間接照明で落ち着いた雰囲気のキッチン。天井高2・1メートル、家電やウオーターサーバーまで収まるよう、きっちりサイズを図って仕上げた

間接照明で落ち着いた雰囲気のキッチン。天井高2・1メートル、家電やウオーターサーバーまで収まるよう、きっちりサイズを図って仕上げた
 

2階の洗面所は、洗濯機置き場を兼ねる。右端のドアの奥にトイレと脱衣室、シャワールームをまとめ、コンパクトで機能的な水回りに

2階の洗面所は、洗濯機置き場を兼ねる。右端のドアの奥にトイレと脱衣室、シャワールームをまとめ、コンパクトで機能的な水回りに

 


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども1人
敷地面積:60.95平方メートル(18.4坪)
1階床面積:32.29平方メートル(9.76坪)
2階床面積:36.02平方メートル(10.89坪)
建ぺい率:59.09%(許容60%)
容積率:112.07%(許容200%)
用途地域:未指定
躯体構造:木造軸組み工法
設計・構造:アトリエPAD一級建築士事務所 饒平名知善
施工:WOODY WORKS Co.
電気:大浦電機
水道:(株)ふくエンジニアリングG

問い合わせ
 アトリエPAD一級建築士事務所
 電話098・943・3235
 http://pad.sakura.ne.jp/top/


撮影/比嘉秀明 取材/比嘉千賀子(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1891号・2022年4月1日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

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