こだわリノベ
2022年2月25日更新
[沖縄]独特な造りに夫婦らしさを|購入して改修・内部改修・築35年・テラスハウス・RC造
[こだわリノベ]那覇市の宮國直也さん(38)と南海さん(37)は、築30年超のテラスハウスを購入し、リノベーション。スキップフロアの造りをはじめ、建具や壁などの独特なデザインを生かしながら、好みの色や使い勝手など、夫婦らしさも散りばめられている。
3階から見た2階ダイニング・キッチン(写真上)とリビング(同下)。リビングのソファは夫婦のお気に入りで、「ソファに寝転んで高い吹き抜けを見上げると、開放的で気持ちいい」と口をそろえる
▲
リノベーション前(ダイニングキッチン)
改修前のお悩み
「壁の凹凸模様など独特な造りはそのままで、汚れや傷みを取り除きたい」
2階リビング。エメラルドグリーンの広い壁が目を引く。よく見ると壁や天井には凹凸の模様がある(下写真)
リノベーション前
▼
2階ダイニング・キッチン。以前はシーリングライトだったが、手元をより明るく照らせるつり下げ式の照明にした。左奥には直也さんのレコードプレーヤーなどがある
リビングの東側。瑛海ちゃんの着替えやおむつ替えなどに使っている
5層の真ん中に海外の色
宮國直也さん・南海さん宅は、隣家と壁を共有するテラスハウス。室内は五つの空間が互い違いに重なるスキップフロアとなっており、「個性的な造りで楽しそう」と中古で購入した。築30年を超え、内装が汚れたり水回りが古くなっていたため、夫婦好みに改装した。
家族が普段過ごすのは、5層の真ん中に位置するリビング。階段を上がった先にあるダイニング・キッチンと、高い天井や壁でつながる開放的な空間だ。
凹凸模様のあるその壁はもともと白だったが、鮮やかなエメラルドグリーンに塗装。南海さんは「ベトナム旅行で見た家に影響を受けた色。暑い国をイメージした空間にしたかったので、ソファも東南アジアっぽいラタン製を選びました」。
キッチンは、料理好きな直也さんの身長に合わせて取り換えた。1980年代のロックをレコードで聞きながら料理する直也さんの後ろでは、長女の瑛海ちゃん(9カ月)がダイニングで音を感じて笑っている。直也さんは「音楽や料理に少しでも興味を持ってくれたら」と一緒に楽しめる日を心待ちにしている。
中古リノベが希望
「外人住宅や古い家に興味があった」という南海さん。住宅取得を考え始めた当初から、新築ではなく、古い家をリノベーションして暮らすことを望んでいた。
設計は、リノベを専門に手掛ける事務所に依頼。直也さんは「この事務所が手掛けたホテルを知っていたし、担当者が同世代で要望も伝えやすかった」と話す。
南海さんは「壁の凹凸模様や木の手すりなど独特な造りがそのまま生かされ、他にはない自分たちならではの家という感じがして楽しい。今後は子どもの成長に合わせて、DIYをしたり、間取りを変えたりしていきたい」と話した。
宮國夫妻がリノベを選んだ理由
古い家の味わい深い雰囲気が好きで、昔から古い家をリノベして暮らしたいという思いがあった。購入した時点で築30年を超えていたが、バブル期に建てられたものということもあり、造りも凝っていたし、良い物をふんだんに使っている印象もあった。磨けば光る気がしてリノベすることにした。
リノベーション前
▼
1階ワークスペース。和室を洋間に変えるため、畳はチーク材に替え、天井や障子の枠は白く塗装。写真正面にあった押し入れは、仕事で使いやすい奥行きの浅い収納にした
3階寝室。壁はLDKと同じ色で塗装し、居住空間の統一感を出した
宮國さん宅 リノベのカギ
素材の質感を生かし、収納の足し引きで暮らしやすさにも配慮した。
研磨で戻る素材の魅力
一戸建てのように見えるが、集合住宅の一部である宮國さん宅。そのため外部はそのままで、専有部分の室内のみに手を加えた。
設計・施工を手掛けたアートアンドクラフトのコンサルタント・森岡瑞穂さんは「夫婦は間取りや造り、凝った建具を気に入っていたので、間取りは変更せずに用途だけ変えるなど、できるだけ生かす形で提案していった」と話す。
例えば、壁や天井の化粧合板には凹凸の模様がついていたが、クロスではなく塗装にすることでその模様が出るようにした。ウレタン塗装でコーティングされていた床や手すりなどの木部は、塗装をはがして研磨。床のチークなど木の質感を感じられるよう、オイル塗装で仕上げて風合いをよみがえらせた。また、和室から洋間に変えたワークスペースなど、新たに設けた木部も同じ仕上げで統一させて新旧の建材をなじませた。
「収納の足し引きで暮らしやすさにも配慮した」と森岡さん。和室をワークスペースに改装したことで押し入れは奥行きの浅い収納となったが、代わりに寝室の一部を壁で仕切り、ウオークインクローゼットを設けた。さらに1階にあったトイレは便器を撤去し納戸に。「減らした分以上に増やし、収容量をアップさせた」。
そのほか、夫婦がこだわったLDKの壁の色は、数種類の色見本を現場で光に当てて確認しながら決めた。寝室やダイニングの照明は位置を変更できるダクトレールを採用し、模様替えに対応しやすくした。
リノベーション前
▼
寝室をベッド側から見た様子。壁を設け、その奥を大容量のウオークインクローゼットにした
リノベーション前
▼
2階ダイニング・キッチンから見た様子。床はウレタン塗装をはがして研磨し、オイル塗装で仕上げたため、木本来の質感を感じられる
[DATA]
家族構成:夫婦、子ども1人
躯体構造:鉄筋コンクリート造
築年数:35年
1階床面積:39.6㎡(約12坪)
2階床面積:50.04㎡(約15坪)
3階床面積:15.93㎡(約5坪)
工期:約3カ月
設計・施工:㈱アートアンドクラフト
設計担当:塩谷昌洋
コンサルタント:森岡瑞穂
[問い合わせ先]
㈱アートアンドクラフト
098・975・8090
https://www.a-crafts.co.jp/
撮影/矢嶋健吾 取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1886号・2022年2月25日紙面から掲載
この連載の記事
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 出嶋佳祐
これまでに書いた記事:224
編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。