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2021年3月12日更新

小上がりリビングが便利|LSDdesign(株)

[40センチの段差 ベンチに収納に|お住まい拝見]
階段2段分の小上がりリビングが印象的なHさん宅。40センチの高低差をベンチや床下収納として活用。「無駄のない家」という要望も段差でかなえ、センス良く暮らす。

キッチンからダイニング、リビング、和室を見る。リビングは40センチの小上がりになっている。その下部は、奥行き1メートルほどの収納になっていて、アウトドア用品などをしまっている。この段差をダイニングチェアとしても活用する
 

一角にはDJブース

Hさん宅
 RC造/自由設計/家族2人 

人間の顔と同じく、凹凸のある造りは印象的だ。壁で仕切らずともメリハリがつき、空間がスタイリッシュに見える。建築士は「完成見学会などで段差のあるお宅を見て、『ウチもやりたい』と希望されるお施主さんは少なくない」と話す。

Hさん夫妻もそうだ。H邸はリビングや和室などが40センチの小上がりになっている。ここはフローリングや畳敷きで直(じか)に座れる“集いの空間”。高低差がベンチになり、床下収納にもなっている。もう一つの希望だった「無駄を省いた造り」も段差でかなえた。

階段にして2段分下に配されているキッチンやトイレ、水回りなどは大判タイル張り。足触りは冷たいが「掃除しやすい」。寝室も同様にタイル張りにした。「ベッドなので、寒さはさほど気にならない」。寝室は玄関のそばにあることから、Hさんが通勤に使う自転車の車庫も兼ねる。


段差がベンチにもなる。奥はL字型で広々としたキッチン。壁付けにしたのは「料理に集中したい」という夫人の要望


キッチンとリビングの間の段差。1段目は箱のように自由に使え「かなり重宝している」と夫人。2段目も奥行き1メートルほどの収納になっている
 

寝室そばの廊下。リビングへ向け2段分の段差がある。1段目は取り外しができ、踏み面を開けて収納できる。2段目も蹴込み板を開けて収納として使える
 

リビングの一角にあるDJブース。レコードやスピーカーなど収納するものを決めて造り付けてもらった


寝室。タイル張りのため、自転車を置くなど土間のように自由に使う。夫人の希望で壁をガラスブロックにした
 

壁付け台所で集中!

LDKには夫妻それぞれのこだわりも反映。リビングの一角にあるDJブースはHさんの趣味だ。個室にする案もあったが「リビングを大きく取りたい」「広い空間で音を楽しみたい」と表に出した。テレビ台とは逆の壁付けスペースに約1千枚のレコードと2台のターンテーブル、6台のスピーカーなどを設置している。

夫人は、リビングに背を向ける壁付けキッチンを要望。「料理が得意ではないので、作ることに集中したくて」。キッチンを壁付けにしたことでダイニングが広く取れた。

実は、このダイニングが夫妻の定位置。二人並んでチェアに座り「テレビを見たり、しゃべったり、ぼーっとしたり」。低い位置にあるそこは囲まれる心地よさと、リビングの天井高による開放感がある。

小上がりリビングが主役と思いきや、真の主役は「段差」自体だった。

脱衣所は、2カ所出入り口を設けた。これにより、キッチンから脱衣所、物干し場、ウオークインクローゼットまでぐるりと回遊でき「家事動線がとってもいい」と夫人


玄関付近の軒がせり出したシャープな外観。雨天時に濡れずにサッと出入りできるようにとの配慮。「いかにも軒という感じでなく、デザインに見えるようにした」と建築士


リビングから和室(左側)やキッチン(右側)を見る。床高だけでなく、天井高もメリハリが付いていて、リビングの高さを際立たせる

 

浴槽は設けずシャワーのみ。坪庭があることから「開放的で気持ちいい。風が通り、水気がすぐ乾く」と夫人
 

トイレやシャワー室は西側(駐車場側)の外壁に合わせて杉板浮造りデザインを採用。一枚壁のように見せる


ここがポイント
脱衣所がパイプ的役割

「各部屋の役割をはっきりさせ、適した建材を選ぶことで無駄を省いた」と、H邸を手掛けたLSDデザイン(株)の鹿島祐司さんは話す。

人が集うリビングは直で座れるフローリングや畳敷き。床組みが必要になるが、その高さを「収納やベンチにすれば無駄がない。その分、表に出る家具が少なくなり広々として見える」。

水回りはタイル張りを採用。掃除しやすく、「床組みが不要なため床下空間を最小限にできる。これにより、建物の高さが抑えられ建築コストの削減にもつながっている」。床組みを設けたリビングの天井高は3・2メートル、キッチンや水回りは2・4メートル。このメリハリが、居室の個性を強調している。

間取りはHさん夫妻とともに「かなり試行錯誤した」。さまざまな要望を加味し、DJブースやキッチンを壁付けにすることに落ち着いた。「結果、LDKの中で自由に使えるスペースが広くなった」

「空間の無駄を省くため」廊下は最小限にした。居室間をつなぐパイプ役となっているのは脱衣所だ。「水回りの中心にある脱衣所に2カ所の出入り口を設けて、キッチンから脱衣所、ウオークインクローゼットとぐるぐる回れるようにした」。回遊性を持たせ、効率的な家事動線を作り出した。入浴時は2カ所の扉を閉めなければならないが、夫人は「家族間なのでそこまで厳重でなくてもいい。洗濯がとっても楽になったし、この造りにして正解だった」と話す。

唯一の廊下は、寝室の前にある。ここにも階段があり収納を兼ねる。さらに「窓の少ない寝室に明かりを運ぶ空間」。寝室と廊下の間は夫人の希望でガラスブロックを採用。廊下の天窓からの光が、穏やかに寝室を照らす。


 

[DATA]
家族構成:夫婦
敷地面積:204.45平方メートル(約61.84坪)
1階床面積:103.2平方メートル(約31.16坪)
建ぺい率:53.56%(許容60%)
容積率:50.47%(許容150%)
用途地域:第一種中高層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート壁式構造
設計:LSDdesign(株) 鹿島祐司
施工:LSDdesign(株)
電気:東洋電気工事(株)
水道:(株)設備技研

問い合わせ
 LSDdesign(株)
 電話098・894・4282
 http://www.lsd-design.co.jp/


撮影/比嘉秀明 取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1836号・2021年3月12日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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