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2020年4月3日更新

シンプルな職住近接|(株)クロトン

[お住まい拝見|2棟の木造で公私分ける]糸満市の埋め立て地に建つMさん(40)宅は、職住近接型の木造平屋。一般的な材料を使ったシンプルな間取りの2棟は、公私を分けつつ、家族の距離を近づけた。


東側から見た外観。2棟に分かれた造りで、手前はMさんのアトリエ、奥は住居と、制作とプライベートを区別できる。東側と南側は、軒を深くとって直射日光を遮り、窓に遮熱効果のあるLow-Eガラスを使用し、暑さ対策をしている
 

引き戸で柔軟な間取り

Mさん宅
木造/自由設計/家族5人

切り妻屋根の建物が2棟、短い廊下でつながるMさん宅。東側は映像制作の仕事をするMさんのアトリエ、西側は家族で暮らす住居となっている。

アトリエは全面土間のシンプルな造り。東面と南面にはずらりと窓が並び、外の緑地帯が見渡せる。Mさんは「朝日が差し込む朝の風景が特に気持ちいいんですよ」。

そこから「オン・オフを切り替えられる」という段差を上がり、3LDKの住居部分へ。夫婦で蜜ろうワックスを塗ったチーク材が床一面に広がる。

LDKと三つの居室は全て引き戸で仕切られているため、1室だけ閉じる、2室をつなげる、など柔軟な使い方ができる。現在は、「2月に生まれたばかりの双子の育児を手伝ってもらうため、姉夫婦が1室を利用しています」と来客時にも役立つ。

戸を開け放って全室を一体化することも可能。「天井も高いので、とても開放的になる。長男(2)も走り回れてストレスがなさそうです」

より広く感じられるよう、食器棚や洗面室のクローゼットなども扉のないオープンな造りにしてもらったという。
 

LDK。建物の構造が見える造りは、メンテナンスのしやすさと、広さの演出に一役買う。天井高も最大3.4メートルあり、開放的な空間



外の景色が見渡せて、開放的なアトリエ。耐震性を高めるため、開口部には鉄骨製ブレースが筋交いのように施されている(破線部分)。土間は、建て物の基礎部分をそのまま活用している
 

手前の住居と奥のアトリエをつなぐ廊下。住居から3段下りてアトリエに入るので、オンとオフを切り替えられる。廊下左の扉はトイレで、アトリエと住居のトイレを共有することにより、水回りのコストを抑えた
 

寝室。手前から奥、さらに右のLDKまで、全て引き戸で仕切っているため、状況に応じて柔軟な区切り方ができる


子育てに参加しやすく

子どもができたのを機に、職住近接型の家造りを考え始めたMさん。

約2年かけ、利便性と子育てしやすい静かな環境を備えた土地を見つけた。

設計は「一生に1度のことなので信頼できる人に」と、高校時代の同級生で、一緒にバンドも組んでいた建築士に依頼した。

夫婦が求めたのは、家事の負担を減らすこと。衣類乾燥機や食器洗い機を導入したほか、建築士は洗面脱衣室にクローゼットを配置した。夫人は「洗濯から乾燥、片付け、着替え、メークまで、ここで全部完結する」とお気に入りだ。

もちろんMさんも家事に参加。「以前は妻に任せきりだったけれど、今は掃除機をかけたり、手入れするのが楽しい。アトリエで仕事もできるので、子育てにも参加しやすくなった」。家族と時間を共有しやすい住まいでの、新たな家族を2人も迎えた暮らしは始まったばかりだ。
 


洗面脱衣室。写真右手に普段着を入れるかご、左手にはクローゼットがあり、洗濯から乾燥、片付け、着替え、メークまで、多くの家事や準備がここでできる
 

キッチン。LDKから一段下がり、土間になっている。汚れても掃除がしやすく、ラフに使える



ここがポイント
“普通”の積み重ね 工夫次第で耐震も

Mさん宅を設計するに当たり、「木造が有利だと考えた」と話すのは建築士の玉城盛太さん。「木造は自重が軽いので、埋め立て地でもくいなどが不要。家族の成長に合わせて改修もしやすいし、予算も抑えられる。セルフメンテナンスできるのも夫婦の性格に合っていた」と理由を話す。

建材は、Mさんの要望で特別なものを使わず、あえて一般的なものにこだわった。数十年後に不具合が出たとしても、部材の交換がしやすいようにするためだ。その考えに合わせて、玉城さんも建物の形や工法、仕様など、設計もシンプルにした。

一方、耐震性については、長期固定金利型の住宅ローンを利用するため、耐震等級3の技術基準に適合。「一般的な材でも、使い方を工夫したり、筋交いの数や配置のバランスなどを考えることで、コストを上げずに耐震化できる」

例えば、木造では珍しく、引き違いサッシを連窓で使った南東側の開口部。壁で支える耐力壁だと暗く閉鎖的になるところを、鉄骨製ブレース(補強材)を使うことで、耐震強度を確保しながらも、光の入る窓を設けることができた=上写真破線部分。

2棟にしたのは、制作とプライベートを分けるためだけではない。「2棟の間に設けたデッキ部分から、住居側に光を入れるためでもある」と玉城さん。東側の道路に面したアトリエが目隠しとなり、LDKの窓は常に開けたままでもいいようにもなっている。
 

南側のデッキ。左の住居に光や風をもたらす
 

[DATA]
家族構成:夫婦、子ども3人
敷地面積:228.18平方メートル(約69.14坪)
1階床面積:109.97平方メートル(約33.32坪)
建ぺい率:48.19%(許容50%)
容積率:47.71%(許容100%)
用途地域:第二種低層住居専用地域
躯体構造:木造
設計・構造:(株)クロトン 玉城盛太
施 工:(株)新垣工務店 新垣太志
電 気:タイラ電気 平広志
水 道:(有)明水工設 具志堅元一



[問い合わせ先]
(株)クロトン
098-877-9610
http://www.croton.jp


撮影/比嘉秀明 取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1787号・2020年4月3日紙面から掲載

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「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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