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庭・garden

2019年12月6日更新

【自分でつくる庭】種から木々育て 丁寧に作庭42年

vol.2このコーナーでは、施主自ら楽しみながら作った庭や、プロが手掛けた庭など、多彩な庭を紹介する。

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新川喜正さん宅(西原町)
「好き」が原動力 試行錯誤重ね
200本以上 手塩にかけ
約200坪の庭には、丸く刈り込まれた「玉散らし」づくりの高木がずらり。足元にはハクチョウゲの垣根。手入れの行き届いた庭に、施主はさぞ庭いじりが好きなのだろうと予想したが、思った以上だった。

なんと、庭で枝を伸ばすクロキやハリツルマサキ(マッコウ)、イヌマキ(チャーギ)などは、施主の新川喜正(71)さんが種から育てたのだそう。「木から実が落ちて、自然と生えてくる。それを繰り返すうちに、こんなに増えた」。家を新築した42年前からコツコツと庭造りを始め、今や高木が80本以上、クロトンなどの低木まで入れると200本以上がこの庭で生まれ、育っている。

木を育てるのには根気がいる。「クロキは、10年くらいかけて幹を太らせてから刈り込んでいく」と話す。幹を太らせながらワイヤで枝を矯正し、枝葉を刈り込むときには二等辺三角形にする。「下の枝葉の玉は大きく、上に行くほど小さくしていく。こうすることで下の枝葉まで日が当たり、葉が美しい濃緑になる」。最初のころは枝と枝の間が狭すぎて、下側の葉の色が抜けてしまうこともあった。「今でも思った通りの樹形や色にするのは難しい。試行錯誤の連続」。
 


新川さんの庭。クロキやハリツルマサキが主。高低差を付けた植栽やカーブを描く垣根が躍動感を演出している


屋上から見ると、隅々まで手入れが行き届いているのが分かる


曲線描く全長75メートルの垣根
植栽で躍動感を演出
意外にも高木の剪定(せんてい)は「そんなにマメにはしていない。新芽が出きった4~5月に、一気に刈り込めば大丈夫」と話す。

大変なのは、庭を区分するハクチョウゲの垣根の手入れだ。ところどころ高低差を付けて躍動感を演出している。全長75メートルある垣根は、夏場は月に1回、冬は2カ月に1回ほど、杉板で作った定規を当てて刈り込んでいく=下写真。

ハクチョウゲの垣根を刈り込む新川さん。高さ17センチの板を当てて丁寧に刈る。この手間が美観につながる

作業は「さすがに大変。年を取るごとにきつくなってきているけれど、刈り終えると清々(すがすが)しい気持ちになる。好きだから続けられる」と笑顔で話す。

また、刈り終えた葉が通路側に落ちないよう養生してから作業しているが、それでも落ちた葉は「掃除機で吸い取っている」。手間を惜しまず、徹底的に美観を追求する。

1本1本手塩に掛けて育てた木々。奥の方にある木まで目が届くよう、こだわって配置している。朝日に照らされて輝く木々や、雨にぬれて濃くなる緑など、さまざまな表情を居間から眺める時間が至福の時だ。

「こんなに広い庭なら野菜を植える方がいいんじゃない?」と言われることもある。だが新川さんは「庭園」にこだわる。「日本庭園には文化があり、安らぎがある。素人が独学で作った私の庭は、日本庭園とは言えないかもしれない。だけど居間から眺めていると癒やされる。心の栄養」と目を細めた。


門扉から玄関へ続くアプローチの両脇にも玉散らしづくりのクロキやハリツルマサキが並ぶ。足元の石は、新川さんの実家の基礎などに使われていた石を再利用した


木をアップで撮影しようとすると、新川さんに止められた。「木そのものも大事だけど、私は通路とのバランスを大事にしている。少し引いて、ここから見る景色が一番気に入っている」と話した

木々の間で黄色や赤のクロトンが彩りを添える。「昔はツツジやサツキを植えたこともあったけど、土壌が合わなかったようで枯れてしまった。試行錯誤するうち、うちの庭に合う植物がわかってきた」


編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1770号・2019年12月6日紙面から掲載

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東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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