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2016年10月14日更新

中古住宅の流通 金融一体的な仕組み開発へ 県内初の取り組み。そのポイントやメリットは?|気になるコト調べます!⑧

住まいの選択肢として中古住宅のニーズが高まる中、県不動産鑑定士協会とコザ信用金庫、OKINAWA型中古住宅流通研究会、県中部宅地建物取引業協会の4者は、県内で初めて中古住宅の流通に向けた金融一体的な仕組みの開発に取り組んでいる。売買時の住宅診断を基に長期修繕計画などを作成。購入後の修繕やリフォームなどのメンテナンスも加味し物件を適正に評価することで、良質な中古物件の普及、流通促進につなげる。OKINAWA型中古住宅流通研究会会長で建築士の下地鉄郎さんは、「適正な基準で評価された良質な中古住宅が増えることは、売る側、買う側双方に利点が大きい」と話す。

良質な住宅増え売買スムーズ


 メンテナンスが付加価値に 
「欧米ではメンテナンスしている中古住宅は評価され、取引も盛ん。修繕やリフォームなどのメンテナンスが建物の資産価値の維持、向上に果たす役割は大きい」と下地さん。しかし、現在の国内住宅市場では、適切な維持管理や良質なリフォームなどが行われていても適正に評価されにくい市場慣行となっていて、個々の中古住宅の良質性が価格に反映されにくい状況だという。
現状の建物評価は、建築から毎年価値を減少させる税務上の減価償却の耐用年数などが基準となっていて、一律に資産価値が減少していく。「修繕やリフォームなどが建物の評価に適切に反映されないため、本来の価値より低く評価されることが多く、持ち主のメンテナンス意識も薄くなりがちです」。また買い手には、物件購入時に修繕などの情報が不足するというマイナス面も。「物件の劣化具合や修繕歴が事前に分かっていると安心できる上、購入後に必要な修繕やリフォームの算段もつけやすくなります」。
そんな悪循環の改善を目指すのが、今回の4者の取り組み。鉄筋コンクリート造が多い沖縄の住宅特性を踏まえ、新たに中古住宅の金融一体的な仕組みのベースとなる「住宅ファイル」などを開発し、良質な中古住宅の普及と流通促進につなげる。8月に国土交通省の2016年度住宅ストック維持・向上促進事業に採択された。

 相談、診断、評価、融資まで一貫 
取り組みでは、適切な評価につなげるために建築士をはじめとする専門家によるインスペクション(建物診断)を活用。建物の基礎や床、屋根、壁、設備配管など、内外部の部位ごとに劣化などを調査する。耐震診断や現地調査も踏まえて住宅性能(質、維持管理の状態)を評価する。物件の価格や耐用年数は、不動産鑑定士が独自の評価システムを用いて算定を行う。コザ信金は、中古住宅の性能、良質性を考慮し、融資可能枠や返済期間を拡大した住宅ローンや、売買時に維持保全計画を立てることを条件に修繕用の定期積金などの商品開発を検討する。
同事業では、宅建業者会、建築士、不動産鑑定士、金融機関が連携。宅建業者会が窓口となり、売買の相談から評価、融資までのサービスを一貫して展開する。インスペクションや価格査定結果などは住宅履歴情報として残し、後の売買時に参照可能な仕組みも整える。年末には商品開発のためのパイロット版を試行予定だ。下地さんは、「金融商品と一体化するこのような取り組みは、売買後の物件情報もきちんと把握できるため物件の信頼度が高まり、中古住宅流通がよりスムーズに。ライフスタイルに合わせた住み替えなどもしやすくなるのでは」と話した。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1606号・2016年10月14日紙面から掲載

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比嘉千賀子

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住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。

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