家づくり
2025年12月5日更新
完成までの過程を追った住宅、出来栄えは? 27坪の室内・22坪のパティオに工夫が満載|Aさんの家づくり 完成までの道のり⑨
マイホームの建築は人生の一大事業。住まいづくりについて皆さんのヒントになるように、建築士の具志好規さんがAさん宅完成までの流れを紹介します。(文・写真/具志好規)

Aさんの家ってどんな住宅?
住みやすさも景観にも配慮して
Aさんの家は小さな住宅だが狭さを感じさせず、使い勝手がよく、整理しやすく住み良い空間になるように工夫をしている。室内面積は約90平方メートル(27坪)、約22平方メートル(6.5坪)の半戸外空間のパティオを持つ建物だ。
LDKとパティオを中心に両側に各部屋が並ぶ。パティオは屋内と外部をつなぎ、日差しや雨をさえぎり、室内に風を取り込める。多目的に使えるこの空間が快適な住環境を生む
ハの字型の平面プランに、切妻(きりづま)の勾配屋根が乗っていて、パティオへ繋(つな)がるLDKを中心に、その両側に寝室など各部屋が並ぶ。玄関ポーチからパティオまで外部と内部の天井が連続し、一体の空間となっている。中央のLDKやパティオは天井が高く開放的で、その両側の和室や便所・浴室・収納などは天井が低く、部屋の大きさや用途に応じて空間を変化させている。

深い屋根がかかったパティオは雨や日差しを遮る心地よい木陰の空間で、室内と比べるとコストもかからない。イスやテーブルを置きBBQや食事を楽しむなど、多目的に活用できる。また、パティオを南側に設けることで、大きな窓から夏場は心地よい風が建物内部を通り抜け、冬場は北風を防ぐ間取りになっている。住宅は部屋数や広さばかりを気にしがちだが、半戸外の空間は生活の楽しみ方を広げ、非日常なリゾート気分を味わえるぜいたくな空間である。Aさんもこうした使い方に魅力を感じてくれた。

内部と外部が連続し空間がつながる
建物内部をスッキリさせるため、5カ所の収納部屋を設けた。玄関に靴箱はなく、近くの収納部屋にしまい、寝室横には広いウオークインクローゼットと書斎、和室横に押し入れ、キッチン裏のユーティリティーは食材や日用品を収納できる。住宅は物があふれがちだが、個室は最低限にまとめ、収納面積を十分に確保する事で、掃除も楽で快適な住空間を実現できる。
周囲になじむ建物を
建物外部は4台分の駐車場を確保し、室内から緑を楽しむ坪庭や干し場は目隠し壁で囲んで建物のプライバシーを確保している。

敷地南側には牧草地が広がる
平屋で外から目に付く勾配屋根は少し濃いグレーの鋼板で、外壁の色と合わせて控えめで落ち着いた色調だ。玄関前には昔ながらの琉球石灰岩のヒンプンや照明柱、植栽帯を設けて建物正面の表情を作っている。

完成した建物。ヒンプンや照明柱・植栽などで表情をつくる
窓もない大きな壁が「ドン」とそそり立つような閉鎖的な建物ではなく、草花や緑、細かな造作物、色調や光などにも配慮し、景観の視点から周辺環境になじむ建物を考えるのも重要なことである。
Aさんの要望とわれわれ設計者の考え方をすり合わせ、住み易く快適で美しい住宅を施工者が造り上げていく。
執筆者プロフィル

ぐし・よしのり
1981年、那覇市生まれ。沖縄職業能力大学校住居環境科卒、(有)チーム・ドリーム勤務。住宅・商業施設・教会や公共施設など幅広く設計に関わっている。
https://www.dream-archi.com
設計は言葉を形にする仕事だが、形を言葉にする事がいかに難しいか実感しています。完成までもう少し、つたない文章ですが、しばらくお付き合いください。
毎週金曜発行・週刊タイムス住宅新聞
第2083号・2025年12月05日紙面から掲載













