家づくり
2025年9月12日更新
[資産価値が下がりにくい家とは]省エネ性能が価値に影響|お財布とヒトにやさしい住まいのヒント⑥
当連載では住居が家計や人間関係、幸福感にどのように影響するかを一級建築士の村山創さんが解説する。今回は、「資産価値が下がりにくい」という観点から住まいを考える。「近年では、立地や仕様だけでなく、省エネ性能が不動産の価値に大きく影響するようになっている」と説明する。

文・図表/一級建築士・村山創
当連載では住居が家計や人間関係、幸福感にどのように影響するかを一級建築士の村山創さんが解説する。今回は、「資産価値が下がりにくい」という観点から住まいを考える。「近年では、立地や仕様だけでなく、省エネ性能が不動産の価値に大きく影響するようになっている」と説明する。
資産価値が下がりにくい家とは
省エネ性能が価値に影響
ZEHやGXに注目近年、住宅の「省エネ性能」が不動産の価値に大きく関わるようになってきました。これまで住まい選びの基準は、立地や仕様、価格などが中心でしたが、これからは「省エネルギー性能」も見逃せない重要な要素となります。
住宅のエネルギー性能を高めた代表的な住宅として「ZEH(ゼッチ/ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」があります。ZEHとは、断熱性能の高い住宅に高効率な設備を導入し、太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用することで、年間の一次エネルギー消費量を実質ゼロ以下にすることを目指した住宅です。
2024年11月には、ZEHよりも高性能な「GX志向住宅」の基準が新たに登場しました。これは「グリーントランスフォーメーション」という概念に基づき、省エネ・再エネの活用をさらに強化し、脱炭素社会を目指す先進的な住宅です。
今後、こうした高性能住宅は、将来的な資産価値の安定や省エネによる光熱費削減、防災機能の向上といった観点からも評価が高まっていくと考えられます。
★の数で性能を表示
その流れを支える制度の一つが「省エネ性能ラベル表示制度」です。家電製品と同様に、建物にも★の数で省エネ性能を分かりやすく表示する制度が、2024年4月からスタートしています。このラベルによって、住まいの性能が視覚的に比較しやすくなり、購入や賃貸の際の判断材料としても活用されています。
また、今年4月には、建築基準法が改正され、すべての新築建物に対して省エネ性能の適合が義務化されました。つまり、どのような用途の建築物でも、最低限の省エネ性能を備えることが法的に求められる時代になった、ということです。この省エネ基準は、住宅ローン控除の要件にも関わっており、住宅を建てる・買う人すべてにとって重要な要素となっています。
さらに30年には省エネ基準の引き上げが予定されています。現行の★(一つ星)ではなく、★★★(三つ星)が最低ラインの基準となる可能性が高いとされています。これにより、基準を満たしていない建物は、資産価値の下落や流通面での不利を受けるリスクが高まることが予想されます。

省エネ性能は住宅と非住宅で基準が異なる
これからの家選びにおいては、単に見た目や価格だけではなく、「将来的にも選ばれる家か」という視点が不可欠です。
省エネ性能が高い住宅は、長期的に光熱費を抑えられるだけでなく、災害に強く、住みやすさや快適性の面でも優れています。そして何より、将来的に売却や賃貸を行う際にも、高い評価を得られる「資産」としての価値を備えています。家賃価格の上昇は物件価格の上昇を意味しています。
住宅は大きな買い物であり、大切な「資産」です。価値が下がりにくい家という点も重視しましょう。

むらやま・はじめ/
一級建築士、創環境Design代表。フラット35適合証明技術者。設計の仕事をしながら、住宅関係の講演会や一般消費者に向けて住宅づくりの情報をSNSで発信している
https://hajimemurayama.my.canva.site/
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2071号・2025年09月12日紙面から掲載