家づくり
2025年10月17日更新
介護講師がアドバイス 在宅でのおむつ交換、腰を守る姿勢と手順|介護を支える 住まいの工夫㊿
在宅介護で避けて通れないおむつ交換。毎日何度も行う作業だからこそ、正しい方法を知らないと腰痛の原因になってしまう。介護講師として活躍する中松光さんに、腰に負担をかけないおむつ替えのこつを聞いた。

腰を守る「おむつ替え」のこつ
姿勢と作業手順で負担減
前かがみに要注意
介護福祉士としての豊富な経験を生かし、介護従事者や一般向けの介護講座で指導している中松さんは、「腰痛予防で最も重要なのは姿勢」と強調する。特に前かがみの姿勢が腰に大きな負担をかける。おむつ交換では、ベッドをのぞき込むように背中を丸める姿勢になりがちだが、この不安定な状態で腰だけに負荷をかけるのが最も悪い。
介護現場の基本的動作とされる「足を広げて立つ、重心を低くする」といった「ボディーメカニクス」の考え方に沿った体の動かし方を普段から行い、体になじませるのが大切と話す。
ベッドに膝をつく
おむつ交換で腰への負担を減らす簡単な方法として、「ベッドに介助者の膝をつくこと」とアドバイスする。「実は介護の世界では昔、患者さんのベッドに体を乗せるのは不衛生としてダメだと教えられていました。でも今は変わっています」と中松さん。
膝をつくだけで支える面が増え、腰への負荷が、例えば100だったのが70や60に減る。負荷が分散するイメージだ。「しかし、この方法を知っている人は介護従事者でも意外と少ない」と指摘する。
また、作業の順番を工夫することもポイントだ。「おむつ交換の際は、介護を受ける人に反対側を向いて横になってもらい、介助者は手前側で作業の7~8割を済ませ、向こう側の作業を減らすこと」、さらに「ベッドの高さが調整できないなら、介助者が足を開いて立ち姿勢を低くすること」で、ベッドをのぞき込むような無理な姿勢を減らし、腰への負担が軽減できるという。
在宅介護では、スペースの関係でベッドを壁にくっつけることが多い。そうすると「壁側の柵を外してしまう人がいるが、これは避けてほしい」と注意する。柵はベッドからの落下防止だけでなく、おむつを替えたり体を拭いたりする際、体の向きを変えるときに支えるための大切な役割がある。施設のようにベッドの周囲にスペースがなくても、壁側の柵は必ずつけておこう。
「道具と知識と技術があれば、慢性的な腰痛を遠ざけることができます。自宅に道具がなくても、こうした知識や技術があれば腰痛予防に役立ちます。介護による腰痛で悩んでいれば、介護福祉士や作業療法士などに相談してほしい」と呼びかける。
腰痛を防ぐおむつ替えの姿勢
悪い例

良い例

おむつ交換では前かがみの姿勢が腰痛の大きな原因になる。悪い例のように背中を丸めてベッドをのぞき込む姿勢は避けたい。良い例のように、ベッドに膝や手をつくことで支える面が増え、腰への負荷が分散される。おむつ替えの作業中は、要介護者に反対側を向いてもらい、手前で7~8割の作業を済ませる。この簡単な工夫で腰への負担を大きく減らせる。壁側の柵も体の向きを変える際の支えとして重要な役割を果たすため、必ず設置しておこう。

なかまつ・ひかるさん
「となりのカイゴ屋さん ココカラハピネス」代表。フリーの介護講師として活躍。おきなわ仕事と介護両立サポート協同組合理事
取材/赤嶺初美(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2076号・2025年10月17日紙面から掲載