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2024年9月20日更新

リビングで“滝”漏水|インスペクションで解明 住まいのミステリー 第18話「築30年のRC造5階建てマンション」

文・小島仁美(インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)

住宅の劣化状態などを調査して報告する「インスペクション(建物診断)」。今回は「台風後、リビングの天井から滝のような水漏れがあった」という相談。インスペクション沖縄の小島仁美さんが原因を調査し、対策をアドバイスする。
 

 第18話「築30年のRC造5階建てマンション」

リビングで“滝”漏水

 依頼内容 
築30年のRC造5階建てマンション2階に住む所有者からの相談。台風が直撃した日、リビングの天井から「まるで滝のように」水が漏れ出し、部屋中水浸しになったそうだ。上の階も同じ間取りで、位置からして水回りの給排水管からでは無いと思われる。原因を調査してほしい。

 




 水 回りが原因ではない

依頼者が住んでいるのは5階建てマンションの2階部分。間取りは2LDKで、1階から4階は同じ間取りのようだ。

事前相談の段階で、間取り図と水が漏れた天井や部屋の写真を送ってもらった。給水管や排水管からの漏水であれば、水回りの真下に漏れるはずだが、そうした兆しも無いとのことから、雨水が原因だと予測。インターネットで建物の外観などをみると、不規則にバルコニーがある、やや変形型の建物だった。

現地に行くと、水漏れがあったリビングの天井面は1メートル四方ほど天井材が剥がれた状態のままだった。まずは天井内と天井スラブ面を目視で確認。天井スラブ面にわずかなクラック(ひび)があることは確認できた。ベランダ側に天井内通気口の穴があったが、その周囲は特に雨漏りなどは確認できなかった。

次にベランダを確認。掃き出し窓サッシの上部に天井内に通じる通気口、サッシ下に床下内に通じる通気口が設置されていた。他は雨水管と避難ハッチがあるくらいだ。

状況からみてサッシ上部の通気口から大量の雨水が浸入したとは考えにくい。だとすれば、上階のベランダ側サッシ下の通気口から室内に水が浸入したのではないかと推測した。
 

ベランダの床下通気口。ベランダ排水口がふさがれ、プール状態になったことでここから水が入り込み、下階の漏水を引き起こしたようだ


 上 階ベランダを確認

3階の所有者は台風前から長期不在なため、調査時点で連絡が取れなかった。

屋外階段から3階バルコニーを見てみると、植木などがたくさん置かれていた。

さらに雨水管周辺にビニールシートのようなものが巻き付いていた。おそらく、台風で飛んできたシートが3階の雨水管を閉じてしまい、ベランダ排水が機能せず、床下通気口から水が浸入し、クラックなどから2階の天井へ水が流れ出たと推測した。

このような事態を避けるためには屋上やベランダの排水口を定期的に清掃すること。特に台風前の清掃は習慣づけておきたい。

また、台風で飛びそうなビニール系のものは事前に室内に収納しておくことも大事である。


 解決策・アドバイス 
ベランダや屋上の排水口は定期的に清掃すること。応急措置としてベランダの壁に、オーバーフロー用の開口を作ることも有効である。

また、今回のケースは集合住宅で、資料は間取り図しかなかった。一般的に建物の図面(平面・立面・断面図や設備図)などは管理会社・組合などが保管しているが、築年数が古いと紛失していたり、賃貸住宅だと図面閲覧が難しかったりすることもある。インスペクションを依頼する際は各図面がある方がスムーズ。検討している場合は各図面の有無を確認しておこう。




こじま・ひとみ/既存住宅状況調査技術者、二級建築士。
電話=098・877・9610


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2020号・2024年09月20日紙面から掲載

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