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2025年9月19日更新

検索ツールの活用広がる 老人ホーム選びの心得[介護を支える 住まいの工夫㊾]

超高齢社会に入り、在宅介護から施設介護へと切り替える家庭も増えている。しかし「どの施設を選べばいいのか分からない」と戸惑う声は少なくない。そんな中、沖縄で生まれた検索ツールに期待が高まっている。

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老人ホーム選びの心得


沖縄は今後、全国でも突出した高齢者の増加=下グラフ=と、急激な介護需要の増加が見込まれる。その一方で介護現場の働き手の減少、施設不足の深刻化も予想されており、多くの課題を抱えている。

60人が入居する高齢者施設「美里の杜カシータ」(沖縄市)で入居相談などを担う生活相談員の古謝幸美さんは、家族が施設を探す際の難しさについて、「立地や交通の利便性、医療体制、訪問診療の可否、薬局の連携、余暇活動の内容などを必ず確認してほしい。将来を見据えてみとり体制までチェックすることが安心につながります」と助言する。

また、「上手に施設を選ぶご家族には共通点がある」とも。本人を見学に同行させ、複数の施設を比較しながら意見を重ねるなど、「ご本人とよく話し合い、納得感を持って決めているご家族ほど、入居後の満足度も高い」と語る。

一方、施設全般を統括する管理者の親泊朝仁さんは「老人ホームにすぐ入居できると思っているご家族が多いが、実際には空きがないことも多く時間がかかることがある」と現状を説明。切羽詰まってから探すのではなく、早めに見学や相談を重ねることが大切だと強調した。


高齢者人口は、全国では2030年をピークに落ち着くのに対し、沖縄では増加が見込まれている。
参考:沖縄県 令和6年度超高齢社会に対応する公共私の連携に関する万国津梁会議資料3-1沖縄県の高齢化の現状
出典:国立社会保険・人口問題研究所「日本の将来推定人口(令和5年推計)」「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」より作成
注釈:令和2年(2020年)国税調査の確定数を基準とした全国将来人口推計より出生中位(死亡中位)推計を参照


新鮮な情報から選択

こうした課題を背景に、施設探しを支援する新しい選択肢を活用する事例も出てきている。沖縄発の検索サイト「えらべる+」は、従来型の情報が古かったり、偏ったりしていた課題を解決。掲載する施設側での情報更新をしやすくし、提供する情報の精度と正確性を高めた。

「美里の杜カシータ」でも、病状悪化で在宅生活が難しくなった70代女性が、このサイトを活用して入居に至った。家族が空室情報から問い合わせ、自宅からの距離、職員の人員配置など、本人が穏やかに過ごせ、家族も安心できる環境と判断できたのが入居の決め手となった。

同施設では他にも、自宅でふさぎ込んでいた高齢者が入居後に食欲を取り戻し、表情が明るくなったという例も多いことから、古謝さんは「生活の場が整えば、心身に良い変化が表れる。ご家族にとっても介護の負担が軽減される」と話す。

施設選びで後悔のない選択をするには、早めの準備と情報収集が必須。ケアマネジャーなど専門家の助言を受けながら、複数の施設を比較検討し、本人の意向を尊重することが重要だ。変化の激しい介護環境だからこそ、正確な情報をもとに納得できる選択をしていきたい。


 施設選びのポイント 
□ 立地や交通利便性
□ 病院受診体制
□ 訪問診療や薬局の連携
□ 余暇活動
□ みとり体制
□ 余裕を持って複数の施設を見学する




こじゃ・ゆきみさん
「美里の杜カシータ」(沖縄市)の生活相談員。入居相談や利用者と家族の相談業務全般、行政との連携を行う。
取材/赤嶺初美(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2072号・2025年9月19日紙面から掲載

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